第825話 『ピアノ協奏曲ト短調』 ヴィオッティ(シュタイベルト編曲)

 ヴァイオリン協奏曲を29曲も残したヴィオッティ先生。(1755~1824)


 じゃあ、ピアノ協奏曲は?


 と思って、手元のCD棚をあさっていたら、20年くらい前に買った、あの、フェリシア・ブルメンタールさま(1908~1991。ポーランド出身の大ピアニスト。ショパンさまを得意としたのはもちろん、知られざるピアノ協奏曲の録音をたくさん行うなど、なかなか冒険的な活躍もした。ヨーロッパの反ユダヤ主義のため、ブラジルに移住し、戦後、ミラノ、ロンドンと移住した。1957年には、藤田嗣治さまのモデルをした。)のCDがあったのです。


 もちろん、まだピリオド楽器(古楽器)とかじゃなくて、現代楽器による演奏だと思いますが、これ、出だしを聞いていて、あら、と思いました。


 主題の旋律線が、すっごく、ヴァイオリン的です。


 さらに、旋律部分は、すごく活発に動くのに、他の声部が意外におとなしすぎる。


 これは、もしかして・・・・


 と思って、CDの解説を見ると、『この作品は、ドイツの作曲家でピアニスト、ダニエル・シュタイベルトさんによるヴィオッティさんの《ヴァイオリン協奏曲第19番》の編曲作品である。』ときました。(いつも落第点だったやましんの英語解説からの訳なので、信頼性極度に乏しい。)



 そこで、くだんの、ヴィオッティ先生のヴァイオリン協奏曲の全曲録音集から聞いて見れば、『第19番』でぴったし。

 

 で、この、シュタイベルト氏は何者か?


 といいますと、これが、なかなかの大物である。


 ダニエル・シュタイベルト先生(1765~1823)はドイツ生まれ、最後はサンクトペテルブルクで迎えた。


 欧州各地で、作曲家兼ピアニストとして、喝さいを浴びた。


 自身のピアノ協奏曲がどうやら8曲あるようで、第8番は、なんと、合唱付きだと。


 この当時には、ベートーヴェン先生の『合唱幻想曲』(事実上の合唱曲付きピアノ協奏曲)があったくらいだとか。


 あの『第9交響曲』は、まだ発表されていない。(合唱幻想曲は、第9交響曲との主題的共通性が指摘されます。)


 ただし、伝えられるところでは、シュタイベルト先生、ベートーベン先生に、ピアノ対決を挑み(この時代には、よくあった企画みたい。)惨敗して、撤退したと言われます。(1800年らしい。ベートーベン先生は、5つ年下にあたります。そりゃあ、くやしかったでしょう。ベー先生、相手の作品の楽譜をさかさまにして、それを主題にした即興曲を演奏した・・・・とか。ちょっと、奇策か。楽譜はさかさま読みが可能なんですね。なので、両側から二人の奏者が同じ楽譜を見ながらアンサンブルするなんて趣向もあったとか。)


 なので、なんとなく、敗者みたいに思えるけれど、そういう訳ではないようです。


 なかなか、りっぱな業績を挙げ、地位を築いています。


 やはり本人の作品を聴かなくっっちゃ。


 これは、またいずれ。


 で、ヴィオッティ先生の作品を、なぜ編曲したのかは、わかりませんが、これが、なかなか良い音楽なのです。


 堂々とした勇壮な出だし。


 特に、たいへん、センチメンタルで、じゅわじゅわな、第2楽章。


 独特な魅力がある主題の第3楽章。


 いやあ、良いではありませんか。


 オリジナルが良いか、ピアノ版が良いかの選択は、お聴きになったあなた様の判断が正しいです。



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