第753話 『村の占い師』 J.J.ルソー

 ルソー先生(1712~1778)は、一般には現代社会学の元祖、文人、哲学者、教育学の元祖、あたりのイメージが強いのだろうと思います。


 やましんの高校生時代の教科書でも、『自然に帰れ』というキャッチフレーズが出ていましたが、いたい、これが、どこから出て来たのかなんて、教えてもらわなかったような。


 実際、どうやら、ずばり、この言葉は、ルソー様の著作の中には無いらしい。


 もっとも、うそというわけではなく、本来自然状態では善良な人間を悪徳に染めてしまうものを、教育の現場で排除するべきだ、というような意味合いを、どなたかが言いくるめたのでありましょうか。


 ルソー先生ご自身は、けっして、完璧な聖人様ではなく、多くの問題を抱え、苦しんだらしいし、それを、自分から打ち明けているわけです。


 その昔、教育学の授業で、教授様がおっしゃっていたなかで、特に興味深かったのは、ルソー先生、ご自分のお子様をきちんと育てたことはなく、5人とも、孤児院に預けていた、ということでした。


 実際、社会制度の不備からも(著作権とか)、経済的には苦しかったようです。


 もうひとつ、当時、やましんが、あまり教えてもらわなかったことがあって、つまり、ルソー先生は、音楽家でもあった、ということです。


 音楽家と言っても、いろいろとありますが、まずは作曲家であった、というわけです。


 その、もっとも、有名な作品がこれです。


 作品としては、歌曲が100曲ほどありまして、あと、『モノドラマ・ピグマリオン』(1770年。ベートーヴェン先生が生まれた年。歌詞はルソ-さまが書いたが、作曲の多くは、よそのアマチュアに委ねたらしい。)歌劇『ダフニスとクロエ』(未完成)。さらにモテットが5曲はある。クラリネット二重奏曲なんてのもリストに載っています。どんなものだろう?


 完成された作品では、やはり、この『村の占い師』が大作かと。(1752年)


 で、やましん、思いますに、この作品、旋律がなかなか、良い!


 そう、とっても、良い調べが続くのです。


 おもしろい。


 いくぶん、踏み外しがないハーモニーが続くので、色彩的にはちょっと単調ではありますが、それを補って余りあるくらい、調べが良いのです。


 お話は、たわいもないと言えばそうだし、深刻と言えば、そうだし。


 恋人同士が、それぞれ、最近相手が冷たいと思い、疑いまして、同じ占い師に相談して、最後はハッピーエンドになります。


 もちろん、注目が集まるのは、お終いの方に出てくる『パントミム』という器楽部分の前半です。


 この主題の旋律が、やがて他人様により、様々にアレンジされ、後に、世界中を回り回って、日本の唱歌『みわたせば』になり、外来の賛美歌としても歌われ、なんと、軍歌にもなり、やがて、お遊戯歌『むすんでひらいて』につながるということになります。


 かつて、この『みわたせば』『むすんでひらいて』などは、ルソー氏の作品と言えるのかどうかで、大論争になったことがあるということです。


 まあ、このあたりは、海老沢敏先生の著作『むすんでひらいて考~ルソーの夢』(1986年、岩波書店)を、お読みください。


 この『村の占い師』は、録音もそれなりにありまして、複数、CDになっておりますので、その気になれば、わりと簡単に聞くことは可能かと思います。


 もっとも、やましんなど、日本語でさえ、よくわからないくらいですから、言葉の問題が大きいです。


 むかしのLPで、日本語解説、対訳付きがあるのを見つけましたが、CDでは、まだ未発見ですが、あるのかしら?


 ネットは、苦手で、探しておりません。


 なお、海老沢先生のご本に伴う、LPやCDも、出ておりました。これが、すっごく面白い。特にCDは、曲数が多く、大傑作です。(『むすんでひらいての謎』キング・レコードから発売)



************ うつ  ✊ ✌🌀 ✋ うつ ************








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