第415話 『ピアノ・ソナタ第29番《ハンマークラヴィーア》 その5』 ベートーヴェン
さて、ベー先生のお話の前ですが、やましんは、あかちゃんを授からなかったので、梓みちよさまがお歌いになった《こんにちは赤ちゃん》(詩は永六輔さん、曲は中村八大さん)という曲には、痛烈なインパクトを受けます。
やましんが小学生時代(1963年、NHK)に大ヒットした曲で、なにやら、毎日のように聞いていた(聞かされていた?)ような気がいたします。
中村八大さまは、晩年『交響曲』の作曲に取り組んでいたとのこと、どんな音楽なのか、ちょっとでも聴きたいな。
この曲と、《東京音頭》、《東京五輪音頭》、《りんごのひとりごと》《涙くんさようなら》・・・とか、あたり、良く聞きました。
それに《カルメンの闘牛士の歌》《ペルシャの市場》《中国の寺院の庭にて》《チゴイネルワイゼン》《ショスタコーヴィチの第5交響曲の一部(第4楽章の頭)》《椿姫のプロヴァンスの海と陸と》・・・・・
そうそう、中村様と言えば《上を向いて歩こう》は、1961年に出たけれど、大ヒットしたのは、やはり1963年だったんだとか。
これも、ほんと、どこにいても、流れてましたね。
クラシックも歌謡曲も、とても賑やかな時代でした。
その中でも、このお歌は、傑作でしたね。音楽的にも歌詞も、奥が深く、感動的です。
そこに、なぐりこみかけてきたきたのが、ビートルズさんでしたねぇ。(1966年)
もちろん面識がある訳もないですが、なつかしい方々が、少なくなってゆきますな。ちょっとセンチメンタル。
ご冥福をお祈りいたします。
さて、ベ-先生ですが、この終楽章。
こいつは、もう、あきらかに異次元の勇士様みたいな音楽です。
ベー先生は、宇宙のかなたからなのか、近所のあたりからなのか、そこはよくわからないけれど、空間から主題を切り取り、それを使って、あたかも、四次元アートのように、立体的なフーガを繰り広げるのです。
やましんごときには、技術的なことは分かりませんが、大バッハ先生で頂点に達した対位法を駆使する音楽は、その後、和声音楽に主役の座を持って行かれます。
そこに、バロック時代とも違う、なにやら、宇宙的フーガ(ちょっとあやしい言い方か・・・・・)、みたいなものを、繰り広げて聴かせてくださるのですが、あまりに凄すぎて、こいつは、なかなか、しろとにすべてを知り抜くことは困難でありましょう。
すさまじい音楽です。
それは、あほのやましんにも伝わる。
こりゃあ、なみの音楽ではない。
そういう、いささか困惑ぎみみなやましんを置き去りに、ベー先生は、高みに高みにと、昇って行くのです。
しかし、ベー先生の高みは、大バッハ先生と違って、宗教的な意味の天国ではないようです。
それは、恐ろしい努力をすれば、人間が、理論的に到達可能な場所で、まあ、エヴェレストの頂上、あるいは、火星、みたいなもので、ありましょうか。
最後、満足しきったように、あっという間に、終結の和音をふたつ響かせ、やましんが、もう、あぜん、ぼうぜん、とするなか、終わっていって、しまうのです。
こんな曲、書いたら、あとが、もう、続かないだろ。
と、思ったら、ベー先生の場合は間違いで、ピアノ・ソナタの分野で、もうみっつ、最後の最後があるのです。
それは、また。
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