第360話 『歳末特集』 その3 『カルミナ・ブラーナ』後編 オルフ
さて、『第2部』の冒頭、『酒場にて』は、大変に哲学的なセリフであります。
『もともと、この体は、軽い元素で出来ているのだあ』
とか、言ったりしております。
人体は、酸素65%、炭素18%、水素10%、窒素3%、その他いろいろ、なんだそうでありますから、たしかに、まちがってないらしい。
『スイヘイリーベボクノフネ ・・・・』
とかいうものです。
ただし、この当時は、まだ周期表とかはなかったのではないかと思います。
ま、『第9交響曲』の歌詞のごろ合わせと同じようなもんだろう、と言えますね。
さらに、平家物語のようなことを言った後、なにやら、妖しい方向に動きます。
『道徳なんぞ思い出さないで、悪業に身を委ね・・・・』とか。
しかし、みなさん、忘年会とか、同じようなことを言ってませんか?
学生の方は、あいかわらず、妖しいお歌をひきつでいるのかしら?
しかし、そのつぎはその、もっとすごい。
『ローストされる白鳥の歌』ときます。
まさに、泣きながら、もと、美しい白鳥さんが歌うのです。
自分だって、いまは、くろ焦げだが、むかしは、ま白で、美しかったんだぞ! と、・・・
『なんとまあ、情けない事か!』と。
むむむ・・・・
これ、日本語で、そのまま歌えるかしら?
いやあ・・・どうかなあ。
そうとお、まずい、歌詞ですよね。
ちょっと調べた限りでは、白鳥を食用にしていたことはあるようですし、現在も国によっては、ないこともないらしいです。
そのつぎの、バリトンのソロと、そのつぎの男声合唱は、さらに危ない。
しかも、複雑怪奇な歌詞でありますぞ。
音楽は、たいへん、面白いのですが、歌うのはさらに、大変だ。
ちょっと、あまりにまずいので、省略。
まてまて、ほんとうにこんな歌詞、歌ってたの?
これを省略したら、その先は、一切、書けなくなる!
なにしろ、第3部は、『愛の誘い』であります。
歌詞は、つまり、たいへんあからさまなので、だから、省略。
重要なことばは、たぶん『Veni, Veni, Venias』でありましょう。
マーラー先生の、『交響曲第8番』の冒頭合唱の歌詞を思い出しましょう。
『Veni creator spiritus』
ここだけなら、あほのやましんも、想像がつく感じはあります。
『きたれ、創造主なる聖霊よ。』
というわけで、『Veni Veni』は、『おいで、おいで』と、いうことらしい。
ただ、またく、趣旨が異なるようであります。
そこんところを、具体的に、歌ってゆくわけです。
終盤に、ソプラノが、世にも美しい調べを聴かせます。
まりで、天女のような気高い調べです。
『あなたにすべてを投げ出しましょう!』
と、歌っているのですが。
合唱が、美の女神を賛美して、この危ない舞台作品は、ついに(どこがついに?)終結部となります。
最初の『運命の女神、全世界の支配者』を高らかに歌って、おしまいとなるのです。
ここは、映画『鎌田行進曲』の、ラスト・シーンのような感じであります。
『いやあ、きのう、カルミナ・ブラーナ、歌ってきたんだけどさあ・・・』
なんて、ちょっと、言いにくいんじゃないかと、思ったりもいたします。
気になる方は、是非、お聞きください。
くらしく音楽を、あまくみたら、いけませんぞ!
この項目、おしまい
**********歳 うつ 🗽 うつ 末********
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