第358話 『うつうつ歳末特集』その3《カルミナ・ブラーナ》中編 オルフ

 オルフ先生(1895~1982)は、基本的に舞台作品の作曲家さんです。


 なので、この『カルミナブラーナ』も、『世俗的カンタータ』とご本人がおっしゃったというように、一種の『演劇』と考えたほうがよさそうです。


 すると、あ~~ら不思議。


 なんとな~~~く、ばらばらで、バランス悪いよな~~、と思っていたものが、ずっと、すっきりと整理されるではありませんか。


 冒頭部分は、幕開きの『口上』みたいなものです。


 そうして、一段落すると、合唱団が、オケの奏でる、不気味な『ぼぼぼぼぼぼ・・・・』という同じ音型の繰り返し(オスティナートとか申します)のうえに、これまた、いささか不穏で、どことなく、いや、かなり危ない、ややなげやりで、それなりに真実を突いている、たぶん、教養はあるが、世の中から脱落してしまっているような、逃走学生、あぶれ聖職者、普通の聖職者、普通の学者、異端学者、錬金術師、魔女(男も含む)といわれるような人、そうじゃないひとも・・・つまり、『ファウスト』伝説のモデルになったような方も含め、その他、普段は真面目だが、お酒を飲むと危ない人なんかも、織り交ぜながら、言いたいことを、遠慮なく言い始めるのです。



 と書いて、ずずずずずず~~~ ⤵⤵⤵


 やましん、落ち込んでゆきます。


 明け方からのゆめは、すさまじかったです。


 大洪水の中を、自動車で逃げ回る夢です。


 倒れ込む樹々や、崩れてくる建物の一部を突き破りながら(!)、やと、丘の上の自宅に辿り着いたものの、洪水はそこまで追いかけてくるのだ!


 お家の中から、大水が、どばっと噴き出すんです!


 こ、こあ~~~~!

 

 これは、正夢か?


 え、いったん中断いたしま~す。 (ベートヴェン先生の『第3交響曲』の、葬送行進曲が流れております。・・・・・午後2時15分)



  ********     ********


 

 結局、ますます落ち込む失態を、昼間やってしまった中では、ありますが、すでに翌日夜となりましたので、続けましょう。


 『おお運命よ


 月のように 姿を変える』


 と、叫んだあとですね。


 『不快な人生も 厳しいのは今だけ・・・・


  貧困だって、パワー(権力)だって


  氷のように とかして しまう』


 ときます。(レコードの訳文とネットの翻訳サイトを参照)


 むむむ、こりゃあ、あの『平家物語』の始まりと、同じようなことをおっしゃっていますなあ。


 それを『運命』という擬人化をするかどうかは別として、この世のはかなさ、については、洋の東西を問わず、感じるもののようです。


 ただ、ちょっと、ちがうらしいのは、ならば、自分も一緒になって、歌ってしまおう! じゃないの、と、悪乗りして来る感じがあるところです。


 やがて、音楽は、二つ目に移ります。


 『運命の車は廻るのだ。あるものは下がり


 あるものは、高くのぼる


 でも、頂に座る王も、破滅を警戒するが良い!』


 いやいや、まったくその通りであります。


 これを、芝居っけたっぷりな管弦楽が支えてゆくのです。


 太鼓が鳴り、ラッパが叫ぶのだ。


 繰り返しを基本としながら、次第に高揚するのです。


 『いまが絶頂なおかたも、いずれは、おっこちるかもよお!』


 と、無責任に、下っ端どもが地面をはいずりながら、叫ぶのです。


 やましんは、あまり、上に立ったことがない。


 高いところは、第一苦手です(高所恐怖症ですから!)。


 下層部で、好き勝手に文句言ってる方が気が楽には違いないです。


 ただし、収入は大幅に違う。


 ほんとに、極端に違うんですなあ、これが。


 そのかわり、上の方が言った言葉の重みは、重たいのです。


 そこんところは、『どこかで許さなければ、いつまでも、戦いはなくならない。』のですが。

 

 許すかどうか、許されるかどうかは、重なり合い、絡み合いで、もみくちゃに、なるものであります。


 怨むのはたやすいが、許すのは、難しいものです。


 あのひとことで、やましんは、辞職を決断したのですが、それは、やましんの人生をひっくり返したともいえるし、また、いやいや、この世から解放される、聖なる許しだった、のかもしれませんもの。


 さて、続いて、『春に』。


 やや、ものうげな、カスミがかかったような、なんとなく、古ーい時代の旋法にもとずくような音楽が流れます。


 『輝く春の面は、世界を覆うのだ。』


 なんだか、ほんわりと明るい、お花の咲く、あの世の園のような場所が描写されます。


 バリトンが、美しい歌を歌うと、合唱が、『待ち焦がれた春が、喜びを呼ぶんだ!』と、いささか、民族舞踏のようなおうたをぶち上げます。


 これが、何度か繰り返されます。


 続いて、『草の上で』。めちゃ、楽しいのですが、ちょっと引きずるような、変わったリズムの音楽が管弦楽だけで演奏されます。


 すぐに、合唱が『気高い森は花盛り!』と歌います。


 女声合唱が、恋をしたい、と、歌います。


 お化粧して、男を捕まえよう!


 といったり、なんだか、意味深なことを言ったり、じっつに、妖しいお歌がつながります。


 なんか、あぶないあぶない、雰囲気になってきそう・・・・・・・・


 しかし、本番は、これからというところなのであります。


 『輪舞』は、男女による賑やかな合唱と、なんとも美しい魅惑的な音楽が交差します。


 フルートのソロが、ひときわ美しい。


 かっこよく終結したら、場面は『居酒屋にて』に移って行きます。


 やましんは、ここ当分、まったく居酒屋にはゆきません。


 一人で行ったって、おもしろくもない。


 まあ、注文したとしても『ホット・ミルク』と、湯豆腐、になりますしね。


 居酒屋につきものなのは、まずは、『哲学』です。


 そこで、バリトン独唱が、いくらか悲壮感に満ちた『哲学』を披露するのです。


 音楽は、ここから、ひたすら盛り上がって行きます。


 ますます、悪乗りといっても、まさに、そうのような。


 一方で、夢のような美しい調べも出て来ます!



          ************  🍺 🍺 🍺  つづく



 



 


















 





 







   

 

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