第357話 《うつうつ歳末特集》その3『カルミナ・ブラーナ』 前編  オルフ

 まえに、一回どこかで取り上げさせていただいた、かとは思いますが、そこは『歳末特集』なので、ここは、じっくりと行きましょう。 


 なんと、『うつうつ』始まって以来の、三部構成(前編・中編・後編)になる予定であります!


 で、この作品も、三部作『勝利』(トリオンフィ)としてまとめられた作品群の第1作であります。


 あとのふたつは、『カトゥリ・カルミナ』『アフロディテの勝利』であります。


 圧倒的に、『カルミナ・ブラーナ』が人気作です。


 この作品の最初の部分は、しょっちゅう、様々なテレビ番組の、BGMとして使われる有名な部分です。


 だいたい、なにかとんでもないものが出てくるような番組とか、摩訶不思議なシーンとか、まあ、だいたいそうしたイメージが強いようです。


 なので、曲名は『なんだそりゃあ?』と、おっしゃる方でも、『あらま、これは聞いたことある。』という向きが多いはずであります。


 つまり、一回聞いたら、そのまま頭の中に残ってしまうような、極めて印象的な出だしなのであります。


 1803年にボイエルン修道院という、ドイツはバイエルンにある修道院で発見された多数の古いおうたを編纂して、1847年に出版されたものを元にして、オルフ先生が作曲した作品。1936年に完成し、翌年に初演されたとのことであります。


 なので、あわてて、題名だけを見て、CDなどお買いあげになると、もしかしたら、この、中世のお歌の復元をしたCDを、買ってしまうかも。


 オルフ先生の作品を聞きたい場合は、『カール・オルフ作曲』となっているのを、お確かめください。


 あほのやましんも、この、オルフ先生の曲は、一回だけステージで歌わせていただきましたが、まあ、正直言って、しろとの歯が立つ音楽ではない、と言ったほうが、正解でありましょう。


 『第9交響曲』の合唱も、なかなか難しい事は事実ですが、こちらは全曲に渡って合唱が活躍するので、しかも、使われている言語が、非常に幅広く(ドイツ語、フランス語、ラテン語)しかも早口言葉みたいなものも多く、とってもむつかしいのであります。


 ところが、なにしろ、楽譜が、一見、易しそうに見えるのが、じっつに、困ったものなのです。


 まさに、見た目と実際が、かけ離れた音楽であります。



 まず、冒頭『運命、世界の王妃よ』


 さいしょの一発『O Forutuna』! は、まさに命がけの部分となります。


 しかし、こいつがむつかしい。


 ほぼ、なぐりこみの手法です。


 『能』じゃないので、外に向けて撃ちはなさなければなりませんし、だいたい、この、あたまから、どかんといくのは、どうも日本語の慣習(なんとなく、そこはかとなく。あたりさわりなく、まわりくどく、やんわりとゆく・・・)のとは正反対で、たとえば、仕事休みたいと言う場合『あの~~、実は、今日はですね、なんといいますか、こほん・・・ちょと、体調がたいへん、良くなくてですね~~~。熱があって・・・』じゃなくて、『熱があるので休みます。じゃ!』と、いう感じに、すぱっと、言い切らなければならないわけです。


 相手は、『運命』ですから、待ってくれないのです。


 ずばっとゆかなくては、なりません。


 もあっ!と出るのでは、具合が良くないのです。


 この『O』が非常にむつかしい。


 海外生活とか、留学とか、演劇とか、しっかりさなっているかたはともかくも、この思いっきりはたいへんだ。


 個人のすべてのしがらみを断ち切り、これで最後だと言う覚悟で、ずばっと、出さねばなりませんが、まあ、そうは言っても、実際には個人差もあります。


 この部分は、曲の最後にも出てくるのですが、そちらは、まだ出しやすい。


 最初は、非常にむつかしいのです。


 気の乗らない日もある。


 ところが、やはり、優秀な方は、これが、できちゃうんですねぇ。


 やっぱ、できるかたは、なんでもできちゃう。


 なんなんでしょうか、あれは、いったい。


 まあ、そんなもんです。


 しかし、そこを、努力するのが、練習です。


 以前、人だかりがする、長い駅のホームの端っこに立って、さかんに、なにやら、せりふらしきを、繰り返し叫んでいる方を見ましたが、まあ、ホームのはしっこなのは、しかたないですね。


 一方、一時期、市役所様の若手職員さんを、朝、駅前に立たせて、大声でご挨拶させる研修らしきをやってたところがあります。


 やましんは、あまり、感心しません。


 やるなら、職場でどうぞ。


 なんだか、見てる方が、ストレスたまるのです。


 研修の為に、かかわりのない、通りがかりのやましんに、無用のストレスかけて、どうするの?


 もっとも、普通の人が、優秀な人を相手に回すならば、より多くの練習をする以外に、対等にやる道はないことだけは、確かです。


 ただし、つかれます。


 壊れます。 はい。


 さて、そういうわけで、この冒頭部で、相手を可能な限り、ビビらせておいて、やおら、本題に入ります。



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