第174話 『交響曲第9番』 ベートーヴェン

 この、『第9交響曲』は、以前『地球最後の日音楽詩編集』で扱いました。


 ただ、あそこでは、たいへん特異な前提条件付きでしたから、あまり尋常なことには、なっておりません。


 『貴様、一体、いつまで生き恥をさらしているのか?一刻も早く自決せよ。』


 やましんは、毎晩、元職場のかたたちから、そうしたことを、暗に迫られる夢に苦しんでおります。


 夜間に、1回~2回くらい、トイレ休憩挟んで、連続上映されます。


 くたくたで朝目覚め、軽く朝ごはんいたしますが、動ける元気はなく、また寝てしまいますが、まず、間違いなく、その続きが始まります。


 もちろん、自分の夢の中ですから、登場人物には、何の責任もございません。


 ここ2年以上、これが継続しております。


 自責の念と、自分自身のふがいなさに苦しんでいるのです。

 

 いろいろ、お薬も使っていますが、なかなか、いい夢はやって来ません。


 2015年3月2日、病気休職後一年くらいたって、やましんは所長室に呼ばれ、幹部4人がかりで、やましんから見れば、ほぼ、尋問状態になったのは、非常に苦しかったです。(なさった方は、善意だったと思いますが・・・)


『給料だけ、もらってすむと思うな❗』


 と、所長さん。


『一体いつになったら、仕事できるようになるの!』


 と、元部下で、その時現在は課長さん。


 やましんは、まあ、いくらか、気にさわったこともあったのですよ。


 彼らにとって重要なのは、ご自分の立場と、内部の体制固めであって、やましんの健康ではないことは、よく分かりましたから。


 でも、まあ、根本的には、おっしゃるとおりであり、やましんは、ただ、恥じ入るばかりでありまして、これはもう、『自決』やむなしと思ったのです。


 それでも、やはり、個人の生活と言うものもあり、奥様も別居中とは言え、理解をえなければならず、在職したまま自決すれば、おおきなご迷惑になるわけですから、まずは身を処さなければなりません。これ以上職場で頑張っても無駄であることは、明白でした。それでも、決断をくだすのには、多少時間がかかりました。


 以前は、難しい会話もそれなりに可能でしたが、一度焼け付いた頭は、なかなか元の通りには戻らないものです。(元から良くなかった、というご意見も、ありました。そのほうが正しいのかも。それならば、よく頑張った、という理解も可能になります。)


 いずれにせよ、使えなくなった使い捨て兵士は、もはや上層部の役には立ちません。


 ヴァイオリンを弾けなくなったヴァイオリン奏者にも、フルートを吹けなくなったフルート奏者にも、打てなくなった野球の打者にも、もはや席がありません。


 しかーし!!


 こういう時に、その役割を果たすべく、この世に存在するのが、この曲なのであります。(もちろん、それだけではないですが・・・効用のひとつであります。)


 ボロボロになった、やましんが、準備を整え、いざ、自決せんとする、その前に立ちふさがり、はりせんじゃなくて、バットを持って、やましんのおしりをば、きつく叩き上げて、『まだ、生きろお〰️〰️〰️!』と、強制するのです。


 なんと、恐ろしや~~~~~!!!


 そう、それこそが、この『第9交響曲』なのであります❗


 理屈っぽい、論理責めの『第5交響曲』より、理屈抜きで、はるかに強力に、力ずくで、押しまくってくるのでありますのだ!


 それこそが、まさにべー先生の『第9交響曲』の正体なのだ!


 あらゆる権力。あらゆる圧力に、決して負けることのない、まさに万能の力を弱者に与える奇跡の『交響曲』なのであります。


 そう、だから、やましんの『自決』は、空間凍結おあずけ状態にあります。


 『第9交響曲』のせいにするのは、卑怯だと言われるかもしれないですよね。


 『正々堂々と、さっさと自決せよ!』


 という、やましんが夢の中で創造した幹部の皆さんのお声は、消えないのです。


 この巨大で、人類の歴史に深く刻まれた傑作も、初演はなかなか大事だったようです。


 1824年5月7日。本来、少し先にロンドンでの初演予定だったものが、(ウイーン側が、ベー先生の作品が英国で初演されるなんて・・・それじゃあ面目が立たないと、きっと思ったのか・・・)急遽ウィーンで行われることとなり、結果、出演者さんには練習時間があまり取れず、しかも、お歌いになった事のある方はよくご存じの通り、この曲の声楽部は、あまり(まったく!)声楽的ではなく、また、なかなか難しいので、まあ、『べーさんは、どうせあまり聞こえていないから』・・・ということで、ある程度か、かなりかわかりませんが、自分たちで歌いやすく変更したらしいともいわれますが、それでも、曲が終わった後の聴衆の反応は大きかったようです。アルト歌手のウンガーさまが、演奏が終わったのに、まだオケのほうを向いていたままだったベー先生を、聴衆の方に向けて差し上げて、ベー先生ははじめて、聴衆の熱狂を知った、と伝えられています。


 その後の打ち上げで、儲けがほとんど出ない事を知って怒り狂ったべー先生が「おまえら、ねこばばしてるんだろう!!」と、仲間の皆さんにくって掛かったとか、そのお怒りが、まったく収まらないので、あきれて、みんな先に帰ってしまったあと、一部の友人だけが、ベー先生を送り返したとか、舞台裏では、なかなかの大騒動があったらしいです。


 そここそが、自分の中だけで溜め込まないで、多少無理やりでも発散させてしまう、いかにもベー先生らしいところなのだ、と、やましんは思いますです。はい。


 それが、どうも、また、許されたらしいところが、やはり、この、文字通りに恐るべき天才のすごいところでもありましょう。はい。



     ・・・・・うつ 😭😭😭 うつ・・・・・


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