第112話 『精霊の踊り』 グルック
フルートを吹き始めたおじさまが、必ずと言ってよいくらい吹きたがる曲です。
それは、初心者でも、指のテクニック的には、割と何とかなるということと、何と言っても、人間の持つ、『業』といいいますか、『愛の罠』といいますか、この音楽が持つ独特の『神秘性』が、おじさんたちを、地獄の深みへと誘うのです。
それは、この曲が、グルック先生の代表作『歌劇オルフェウスとエウリディーチェ』の中のバレエ音楽であるということから、依ってくるものだからでもあります。
なので、この曲、なかなか曲者なのです。
大体、一般的に言って、その全体は『A=B=A』という大きな形式なんですが。
時に『B』の部分だけが演奏されることも多く、その際は『メロディー』とか呼ばれている事もあるのですが、『精霊の踊り』で通してしまう事もあるようです。
どうも、これは、元々この歌劇の『ウィーン原典版』(1762年10月5日)では、『A』にあたる音楽はあるけれど、『B』の部分は、なかったのです。
ところが、やがてパリで上演するにあたって、フランスでは、歌劇にはバレエが必ずくっ付くものという常識が出来ていたようでありまして、バレエがないと聴衆から受けないと考えられたため、急遽、グルック先生、バレエ音楽を追加したのです。
それが、この『B』の中間部になったわけだった、らしいのです。
この歌劇自体、非常にストイックな歌劇で、太古から伝わる古典的な題材であり、またグルック先生の信条からも、あまり派手さはないので、ドタバタ的な面白味は皆無です。
こいつは、その中核となる音楽ですから、なかなか簡単そうでいても、ソロで演奏するのは、結構、難しいのです。
多くのおじさまたちは、やたら、昔の恋とか失恋とかを思い浮かべるのかどうか・・・、ちょっと思い入れが過ぎて、粘り過ぎるきらいがあります。テンポがちょと、遅くなるのです。
気持ちは、よくわかります。
この『オルフェウスとエウリディーチェ』と、日本の『イザナギとイザナミ』の物語が、あまりにそっくりなので、元々のルーツは共通してるんだろうというお話は、有名なところです。
ただ、結末が大幅に違って来るところは、大変興味深いです。
まあ、ただし、これは『うつうつ』の扱う範疇ではありません。
この曲は、大変癒し効果が高い反面、副作用が大きいと言う欠点があります。
『取り扱い要注意』の劇薬であります。
やましんは、警戒して、ステージで吹いたことはありません。(1回だけやったかも・・・)
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