第111話 『ヴェスペレ K.339』 モーツアルト

 カトリックで『聖務日課』と呼ばれる1日9回のお祈りのなかで、夕方行われるものだそうですが、『うつうつ』の関心事は、いつも書きますように、その癒しの力であります。


 全体が6つの部分に分かれていますが、この曲、このような『名称』で言われてしまうと、なんだかさっぱり親しみがないようにお感じになる向きもありましょうけれど、実は、モー先生の作品の中でも、大変良く知られている音楽が入っております。


 それは5曲目の『ラウダーテ・ドミヌム』で、ここだけが取り出されて、単独に聞かれることも多い傑作です。


 意味合いとしては『主をほめたたえよ』ということだそうであります。


 あまりにも美しすぎて、異教徒のおじさんでさえ、お顔が少し赤らんでしまうくらいに、純情可憐な音楽であります。


 その一つ前の『ラウダーテ プエリ』は、大変荘厳な音楽なのですが、「なんだかどっかで聞いたぞ~~~?」という感じがします。作曲は、1780年。


 いずれにせよ、モー先生のたくさんの作品の中にあって、ちょっと軽く身を引くような形で、質素に存在しているような気もしますが、名高い『アヴェ ヴェルム コルプス K.618』よりも、大衆的に多分親しみやすく、お近づきに、よりなりやすい音楽ですし、じゅわじゅわと、悩めるやましんをなぐさめてくださるその力は、なかなかのものであります。


 それは、信仰を問わない、音楽自体の力なんだろうと思うのです。はい。


 





 







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