第45話 『ロマンティックな情景』 シベリウス

 作品101-5であります。


 やましんが大好きなピアノの小品ですが、あまりに美しいので、ほとんど宝物のように思っております。


 シベ先生が1923年~24年にかけて書いた「5つのロマンティックな小品」にまとめられております。


 具体的に作品が発表されている最後の時期の作品(交響曲第6番、第7番の頃)で、内省的だけれど、格別な趣があるのです。


 ご本人は、作品の発表がなくなった以降も、「私は常に作曲している。紙に書くのだけが作曲ではない。」と、秘書のサンテリ・レバス様に話していたと、レバス様がお書きになった伝記の中で語られていました。


 どのような音楽が浮かんでいたのかは、誰にも分らないのですが、その中には、幻の第8交響曲もあったのでしょう。(写譜の領収書が残っていたりもするようなので、一旦は楽譜にもなったが、廃棄された、と概ね考えられているようですが。)


 しかし、こうした小さな晩年の作品を聞くたびにも、そのあとまだ30年以上生きていらっしゃったのだから、その到達していた心境というものは、いかなるところまで行っていたのか、大変、気にはなります。


 どうにもならないけれど。


 館野泉さまが、シベ先生のお宅のピアノで演奏した貴重な録音もあります。


 なんだか、じわっと、涙が出そうな音楽であります。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る