第30話  『アヴェ・ヴェルム・コルプス』モーツアルト

 これは、『宗教音楽』ですから、やはり仏教徒の僕が語ることには、お叱りはあるかもしれません。


 それでも、何でも、これは人間の音楽の『ある領域』が、到達できた最高地点なのは、間違いが無いだろうと思います。

 それは、いわゆる異教徒であっても、個人の心の支えとして、大切なものになっても、ちっともおかしくないと思うのです。


 実際、この音楽は、『感動的な』とか、『すばらしい』、とか、そういう言葉の領域からは、遥かにはなれたところにあります。

 どう書こうとしても、もし最高の文豪であっても、(たぶん)自分の言葉が、この音楽に到達しているとは、かなり言いにくいだろうな、(とか、これまた勝手に)思います。(音楽が上とか下とかではなくて、音楽は音楽だからです。)


 いわんや、この、あほのやましんなどに、何が言えるでしょうか。


 『栄えあれ、まことのおからだ』というような意味合いとのことで、『聖体賛歌』と言われる領域の音楽です。

 チャイコ先生がこの作品を『組曲第四番』に使っていることは、とても有名です。


 まあ、辞書的な事柄は、辞書さんにお任せいたしますとして、さらに、言葉の問題は後回しにしても、この曲は「うつうつ」に対する効能が強力です。(いつも書きますが、個人差がありますので、ご注意ください。念のため。)

 しかも、非常に短く、あまり時間を取りません。

 その、微妙に移りゆく和声が、あまりに素晴らしいので、アマチュアでも、合唱団に関わる方ならば、きっと、効能をよくご存じでしょう。


 聞く側から、歌う側になると、聞くだけとは違う効果があります。

 練習会場に漂う雰囲気が、一転しますから。

 なんだか、周囲に雲が漂う感じになるのですから、びっくりです。


 ときに、名手ブリン・ターフェルさまのCDのように、ソリストとバックコーラスというような形に編曲されているものもあるようですが、あまりに上手すぎる歌手だと、むしろ少し(表現がよくないし、個人の好き好きですが)多少、音楽ショー的になる感もあるので、最初はやはり、原典コーラス版でじっくりと、お聞きになって、それから様々なバージョンに行った方がよいかなあ、とは思います。(よけいなおせっかいです。気にしないでくださいね。コーラスだけと違って、個人が目立ってしまう、という意味であります。)


 それにしても、これにしても、いやあ、良く効きます。

 いいですなあ、これは!


 ただし、これもまた、毎度言いますが、良く効く音楽には、副作用もあります。

 鎮静効果が高くて、ぼくなど、あまりに不調な時にこの作品を聞くと、もう、言葉もなくなって、かえってしばらく動けなくなったり、寝られなくなったり、してしまうこともあるので、やはり、適度な使用が肝要です。


 

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