第18話   「夜想曲第10番」/「ピアノソナタ第3番」 ショパン

 これまで、あのショパンさんが、どこにも出てこなかったのは、単なる成り行きでございまして、ショパンさんの音楽が苦手とか、そういう訳ではございません。

 『夜想曲集』の場合、通称『第2番』あたりが、とりわけ有名ですが、ぼくにとって、最高の癒しは、この、『変イ長調作品32の2』なのでございます。

 これも、もう相当昔のことでありますが、ルービンシュタインさんの古~い録音を聞きました時に、一番すごいなあ~、と感心したのが、この曲でありました。


 丁度、その時代、著作権法あたりの抜け穴を突いたかのような、複製CDが沢山世に現れた頃であります。

 なにしろ、CDは、当時非常にお値段が高かったのです。

 そこに持ってきて、定価はそれなりに書いてあるんですが、なぜか本屋さんや、ホームセンターさんや、駅の構内とかで、表示の半額以下の1000円前後で販売される不思議なCDが、大量に発生したことがあるのです。(現在も、その余波を見かけますが・・)

 この種のCDの問題は、『複製』もの、というだけではなくて、『幽霊もの』や『正規の廉価版CD』も絡んだりして、実は、国際的に込み入った、なかなか、複雑な事情がっあたようなのですが、『うつうつ』では、これを追及する気は毛頭ございません。


 ただ、その当時、このルービンシュタインさんの録音なども、正規盤以外で、あちらこちらで良く目立ったという事で、思い出しているだけであります。


 この曲は、よくよく考えれば、同じメロディ-の、果てしない繰り返しが基本なのにもかかわらず、そこから無限の世界が広がって来るのですから、びっくりしない方がおかしいです。

 もちろん、ショパンさんでは、なおさら演奏の在り方が、大きく左右してまいります。ルービンシュタインさまの演奏は、いまさらながら、すごいものだと思います。中間部の演奏が特に圧倒的に素晴らしい。そうして、その中間部から主部に戻るところ、ここが、とてつもなく感動的なのです。

 もう、なんといいますか、ぼくの、こりこりの心を、激しく揺さぶるのです。

 マッサージ器だって、揺さぶるから気持ちよくなるのですから、音楽だってそうなのですよね。(これは、喩えですけれどね・・)

 ちなみに、エヴァ・ポブウォツカさんの録音もいいです。

 もっと繊細で、慰めが深いです。


 一方、大曲が少ないショパンさんの作品の中で、3曲あるピアノソナタは、それぞれ結構な規模を持っております。

 第1番は、若書きの故か、いささかほっとかれていますが、どうしてどうして、良い音楽です。

 評論家などの専門家の皆様方は、とっても、お詳しいがために、わりに作品の、足らずの部分を強調することも多いのですが、自分にとって魅力的な音楽を、世間でなんと言われていようとも、自分で納得しながら、うんうんと聴くのが、アマチュアの極意であります。

 この曲なども、『聞かず損』になっている作品のひとつでありましょう。


 第2番は、『葬送行進曲』があるだけに、超有名曲で、しかも、とっても『謎』のある作品で、気になる音楽ですが、実は、ぼくは第3番が大好きなのであります。

 それはもう、ひとえに、『癒し効果』が恐ろしく高いからであります。

 実際、音楽そのものも、よくまとまっていて、無理なく聴くことができることも事実だとは思いますが。

 この曲の録音で、一番感動したのは、リパッティさんの、これまた古っい録音です。  

 ちょっと音が十分録れていないのが残念ですが、たとえば、第1楽章の第2主題への移行部について、これほどの演奏は、まだ他で聞いたことがないように思います。(音の状態も、録音の場合は、そのまま自分の心の音楽の内に入ってしまうことがありますのです・・、そうつまり、バチバチという、本来は雑音であるはずの音が、そのまま音楽の思い出の中に入っているのであります。これが無ければ、もう音楽じゃあないみたいな感じですねえ。まあ、ちょっと言い過ぎですが。)

 第2/第3楽章もそうです。リパッティさんの、崇高な気持ちが、じっくりと伝わってくるように思います。

 若くして、苦しいご病気で亡くなってしまったのは、本当に残念でたまりません。

 第4楽章、ここも大好きです。第3楽章の、淡い、夜想曲風の覆いを、するどく断ち切ってしまう開始の部分、その先のどこか焦燥感にあふれる、でも湧き上がるような豊かな音楽。ショパンさんが、何かに取りつかれたように、疾走してゆきます。第2番に比べて、遥かに確実な足取りで。


 ばらばらに失踪していた僕の心が、どこかから駆けつけてきます。

 これを聞かずして、どうしましょう、と。



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 このような、つたないものを、お読みくださっている方に、深く、厚く、お礼申しあげます。もう少し続けていたく思います。どうぞ、すばらしい音楽の方に免じて、下手くそな部分はお許しくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

                          やましんより・・・






 



 

 

 









 

 



 


 

 



 

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