第10話  J.B.クラーマー:ピアノ協奏曲第5番

 まだまだ、知らない名曲は山ほどあるなあと思います。

 この曲もそうした作品です。


 クラーマーさん(1771~1858)は、ベートーヴェンさんの一つ下ですが、もっと長生きをしたので、亡くなったころは、もう、ロマン派時代の真っ最中でした。



 実業家として成功していて、今日では、あまり本格的な作品を聞く機会は多くはないように思います。


 でも、この曲、なかなかのものです。


            🌸


 第1楽章は、ハ短調。ちょっとベートーヴェン風の厳しい主題から始まりますが、第二主題はロマン派風の穏やかな感じ。しかし、曲が展開部、再現部と進むほどに、奥が深まってゆくのが、「むむむ、こやつ、できるな!」と感じさせます。


 この曲の白眉は、それぞれご意見は出るでしょうが、第2楽章です。


 軽いロマンス風の曲と見れば、そうかもしれませんが、ぼくにはなかなか効きました。大きなシップを背中にどかんと貼ったような感じで、じわじわーっと染みてきます。モーツアルトさんならば、もう一歩踏み込むかもしれないな、とも思いますが、きっと、これがクラーマーさんなのです。


 終楽章の主題は、ちょっと大ハイドンさんのピアノ協奏曲を思い出させる気もしますが、これも進むほど造形が深くなります。


 最後は、ショパンのピアノ協奏曲を思わせるような風情で、かっこよく終わって行きます。ちょうど、古典派とロマン派の音楽がうまい具合に総合されているような感じで、聞きやすい曲です。


 深刻になりすぎず、また過度に感傷的にもならず、程よく美しい旋律を持ち、それなりにすごくカッコいい。


 歴史上の大傑作とまでは言わなくても、こうした佳作はとても心の安定に役立つように思います。こうしたものは、例えばデュセック(ドゥシ-ク)さんのピアノ協奏曲なんかも、やはりそうだと思います。



・・・・・・・うつ 🛸 うつ・・・・・・・・・・・・・・

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