鰐、砂漠、騎士(比喩三種盛り)

 メールの返信を打つ。


『元気にしてるよ。悠莉は?会いたいって話、来週の日曜なら空いてるけど、どう?』


 これだと、俺がまだ未練があって、会いたい、そういう風に思われないか?いや、事実だけども。


『悠莉はいつが都合がいい?合わせるよ』


 これだと、俺が暇人っぽく……。

 いや、もう、どうにでもなれ!そんな思いでメールを打ち直して送信した。

 叶うことならまたやり直したい、そんな想いを潜ませた俺のメールは、彼女までの長い旅路を一瞬で駆け抜けた。そして、彼女の想いをすぐに持ち帰ってきた。


『じゃぁ、来週の日曜ってどうかな?』


 俺は、それに二つ返事で返した。



 彼女は俺にとっては砂漠の中のオアシスの様な人だった。どんなに疲れていても、嫌なことがあっても、彼女がいればそれだけで癒されていた。救われていた。

 だから、俺が彼女の騎士になって守る、そんな風にも思っていた。空回りをしてしまったこともあるけれど。

 あぁ、何だか、ゆっくりと寝られそうだ。


 そんなことを考えて寝たからだろうか、変な夢を見た。砂漠で彼女を襲う巨大な鰐。そして、俺はそんな彼女を守ろうと必死に戦っていた。

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