ワイン、孤島、探偵(お題の単語をそのまま使わない)

 何故、俺はまたこいつと仕事帰りに酒を飲みに来ているのだろう?と言うか、何故、こいつは俺に構ってくる?

 分からない。謎だ……。

 俺がシャーロック・ホームズみたいに頭がよければ分かるのだろうか?いや、そもそも、シャーロック・ホームズも名前しか知らないけれども。


「って、先輩、話聞いてますか?」


 そんな下らないことを考えていたら、執拗にからんでくる。今日は若干、ウザい。

 何で、愚痴と言う名ののろけ話を聞かなきゃいかんのだ。


「あぁ、聞いてるよ」


 と、適当にあしらうと、もっと飲め、とばかりに自分のグラスに注いでいたビンを俺の方へと向けてくる。


「いや、俺はブドウとか嫌いだから」


 適当に断り、俺はハイボールに口をつける。うまい。

 はぁ、こんなからんでくるやつと一緒じゃなかったらもっとうまかっただろうにな。


「先輩、悠ちゃんって、本当にひどいんですよ。私たちの記念日、忘れてるんですから」


 あぁ、また始まった。この話、今日だけで何度目だ?


「周りは海、海、海!そんな中で見つけた一人の天使、それが悠ちゃんだったんです!まるで完成された一枚の絵画。思わず見とれてたら悠ちゃんから声をかけてきてくれて……。なのに、なのに!悠ちゃんったら『あれ?そうだった?』って……」


 それで、その記念日が昨日で、一緒にお祝いしようとしたのに、できなくて寂しかったんだろ。俺には関係ない話だろ。

 そう思いつつも、俺の頭の中では別のことで一杯だった。

 ……宮本悠莉。俺の元カノ。悠莉だから、悠ちゃん?彼女も数字に弱くて、俺の誕生日を忘れてたりしていた。やはり、こいつの彼女は悠莉、なのだろうか……?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る