宿題、噴水、献血

 高校時代の夏休み最後の日、大量に残っている宿題から目を逸らすためにこの公園に来た。あの当時と何一つ変わらない風景。

 あの頃と同じように俺はベンチに座り、目の前の小さな噴水を眺めていた。

 同じ場所で、同じ風景を見ている。それなのに、感じるものは全く違う。


 不満はあったけれど、未来への希望があった。

 不満はないけれど、未来が見えなくなった。


 逃げ道を探しながらも、逃げずに立ち向かっていた。

 逃げ道を探していたら、身動きがとれなくなっていた。


 才能のある人が輝いて見えた。

 才能のある人が妬ましく見えた。


 何が変わってしまったんだろう……?

 背もたれにもたれ掛かり、空を見ると、眩しいほどの太陽。目を閉じても分かるその明るさ。

 一つため息をついて、視線を前に戻すと、正面のビルに献血センターが入っていた。

 今まで、気付かなかった。

 どれだけ俺は下ばかり見ていたんだろう……。


 俺は立ち上がり、まっすぐ前を見て歩き始めた。

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