無職、ロン毛、誤報

 働いていた会社が倒産し、無職になって二ヶ月が経った。ハローワークに通うも、新しい職は一向に決まらない。

 失業保険は貰えているものの、貯金はほとんどない。そもそも、給料も安かったから、貯蓄に回すお金なんて全くなかったのだ。

 もし、このまま職が見つからなかったらどうなるのだろう?失業保険も三ヶ月しかもらえない。あと一ヶ月ほどだ。それまでに無事見つけられるのだろうか?


 さて、今日もいい仕事がないか、探しにいこうか、と家を出る準備をしていた。この際、俺に向いた仕事、そんなものを求める気はない。ただ、人並みの生活を送れるだけの収入を得られればそれで十分だ。


 けれど、靴を履いて外に出ようとした瞬間、ボロアパートに凄まじい警報音が鳴り響いた。

 火災報知器の音だ。

 このアパートで火事?ははっ、職もなくなって、さらに住むところまで失う、ってか?

 そんな絶望的な状況に俺はもう笑うことしかできなくなっていた。


 俺はハローワークに行くのを止め、一日遊ぶことにした。いや、遊ぶといっても一人でどうしたらいいのか分からないから、ただ街をブラつくだけで終わってしまったけれども。

 そして、夕方にアパートに戻ると、出たときと何一つ変わらない状況でアパートが建っていた。まるで火事などなかったかのように。

 どうやら、あの警報は誤報だったらしい。

 それを証明するかのように、ロン毛の今時の若い男性が警察に叱られている様子が見えた。



 あの誤報からしばらくして、俺は無事に新しい職に就くことができた。そこは今までより給料、待遇、など全てにおいていい条件のところだった。

 きっと、あの日がいい気分転換になったことが原因なんだと思う。それまでは本当に焦りしか俺にはなかったから。

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