ミノタウロス、非日常、強盗

 コンビニで働いて何年も経つ。そして、コンビニには多種多様なお客様が来店する。もちろん、良い意味でも悪い意味でも。

 さらに、深夜になれば、不審者の来店も多数ある。浮浪者が買い物目的ではなく入ってきたり。(ごく稀に窃盗を行うことがある。なお、万引き、という言葉は嫌いだから使わないことにする)


 さて、そんな中でも最も奇妙だった話をしよう。

 深夜、一人のお客様が来店した。見た目は人のそれではない。そう、神話に登場するミノタウロスの格好をしていた。

 彼はまっすぐにレジへと向かってきた。そして、鞄に手を入れ……。

 俺は強盗かと思った。咄嗟に警報装置を作動させそうになった。

 けれど、彼が出したのは公共料金の払込用紙。

 いつも通りにそれを処理し、ミノタウロスのお客様が店を出たとき、さらに驚愕のことが起こった。

 彼の向かった先にはフランケンシュタイン、ヴァンパイアなどがいた。そこで気付いたんだ。その日がハロウィンであることに。


 彼は何にもないはずの日常を非日常に少しだけだけれども変えてくれた。

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