ライブ、ロック、ヴァンパイア
ライブハウスに入ったわたしは薄暗い照明の中、始まるのを待っていた。
ずっと、楽しみにしていたライブ。
動画投稿サイトで初めて見て以来、すっかりファンになってしまったロックバンド。V系と言われるバンドだけれど、激しい曲の中に美しい旋律が重なって素敵だった。それだけでなく、PVもとても美しく、すっかり虜になってしまった。
そして、とうとう始まったライブ。
わたしの知らない曲もあったけれど、どれも本当に素敵で、最高の時間だった。
けれど、そんな時間も永遠ではなく、終わりは訪れる。次の曲のイントロが始まると、ボーカルの人が話し始めた。
「あぁ、残念だ。今宵の宴ももう終焉が近付いてきた。もっと、もっと血を……。そこの可愛らしいお嬢さん、さぁ、ステージ上へおいでなさい」
そして、わたしの前に道が作られた。わたしは、何かに操られるかのようにまっすぐと進み、ステージへと上った。
「さぁ、今宵の生け贄に盛大な拍手を!」
その言葉と同時、客席からは盛大な拍手が上がった。そして、わたしは首に鋭い痛みを覚え、全身の力が唐突に失われた。
美しい旋律が聞こえる。ボーカルの人の口元からは赤い液体が滴っていて、長い犬歯は赤く染まっていた。
わたしは知らなかった。
ロックバンド、ヴァンパイアナイト。彼らは正真正銘の吸血鬼であったことを。
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