第19話 頭脳イーター

ドカーンという音が艦内に響いた。

ハッチを怖し、何体かのイーターを串刺しにして中へと侵入した。


「うへぇ・・・やりすぎた・・・・酔いそう・・・」


慣れない空中戦をして、目が回りそうになった。

改めて艦内を見る、鉄や何の素材か分からない肉にも見える変なものが入り混じった奇妙な建物、ふと正面を見ると人型イーター達がきれいに整列して立っていた、起動していないのか動く気配は全くなかった。


「こいつら・・・生きてない・・・?」


「マスター、あそこから、奥へ行けるようです」


攻撃してこないことに安心する、すると、アイが並んでいる彼らの横にあった、道を示す

指示に従い、ただ並んでいるだけの人形たちを通り過ぎて行こうとした。

その時、後ろからドーンと何かが落ちてきた音がした。


「なんだ!?」


「敵影!、どこにも反応は無かったのに!?」


「・・・やるしかない」


剣を左手に持ち替える。

現れたのは、同じ人型だが、前の奴らより金肉筆に作られている、右手にはハンマーが握られている、一つ目で左右に移動した後、こちらを見ると手に持ったハンマーを大きく振り上げる、その時動かない人形たちに当たり粉々になるのが見えた。


「・・・・お前・・・・そいつらは仲間じゃないのか!!」


降ろされたハンマーを剣で滑らせ、軌道を変える、床に落ちたのを見て、デカ物の懐へと入る、顔を狙い、剣を突きたてる


「やああああああ!!」


だが、顔の前にデカ物は手を出した、剣が手に突き刺さった、がそれ以上前へは進まなかった。


「なにィーーー!!」


「マスター、危ない!!」


「・・・っ!!」


何とか剣を引き抜き、振り下ろされていたハンマーを避けた、距離を取ると、壁に背が当たった。


「・・・・・・・こんな事、してる場合じゃない・・・!」


貴彦は、レイヴンの進行方向を変え、奥へと続く道へと入っていく。


「マスター!」


「あんなの、相手にするだけ無駄だ!!でかすぎる・・・」


「マスター!追って来てます!!」


「え!!嘘だろう・・・」


相手にしていられないと思い、奴を放置したがデカ物はレイヴンを追い、ギリギリと居れる道をところどころ壊しながら、追ってきた。


「くっそ!面倒だな!」


レイヴンの移動速度は変えずに右手に銃を持ち、デカ物へと放つ、だが、当たるものの大したダメージにはなっていないようだった、大きい体のくせに意外と速いデカ物の足を狙う、少しでも足止めになればと思ったが、聞いている様子は全くなかった。


「かてぇ・・・どんな体してんだよ・・・」


「マスター!、まえ!!」


「え・・・ッ!!」


アイの声に振り返る、目の前には壁があった、どうやら行き止まりのようだ、危うくぶつかりそうだった、だが、後ろから怪物の声がした、それと同時にレイヴンは地面へと倒れるような体制を取った瞬間、ドカーンと壁が崩れた、少しでも遅れていたらハンマーに潰されていたかもしれなかった。

銃をデカ物の顔へと向けた、ほぼゼロ距離だった。

何のためらいもなく引き金を引いた、それと同時にレーザーが上へと放たれると同時にデカ物の顔がコアと共に消し飛んだ


「・・・・・・顔は意外と、脆かったようだな」


顔を破壊された大きな体のイーターは塵になった。

立ち上がり、もう一回道を探すも一本道のようで横道はなかった。


「ここから、どうやって行けば・・・・」


「マスター、後ろ」


「え?ああ・・・なるほど・・・自由自在なのね」


どこにもつながっていない道、だと思っていたが、アイが気づき、振り返ると道が続いていた、どうやら、後から壁を付け足したようだ

壁を作り、レイヴンを惑わそうとしたようだがさっきの敵のハンマーによって破壊されてしまったことで意味を無くしたようだった。


「まぁ、なんにせよ、残念だったな」


操縦レバーを握り直し、前へと進んで行った。


爆発と破壊音が鳴り響いていた戦場は静けさを取り戻していた。

倒れ伏していた人型イーター達はその姿を塵に変え、消え去っていた。

華純は空を見上げる、いや、空は見えない、もはや青という美しい色は覆われ鉄路赤の物体が頭上を支配していた。


「・・・・・貴彦」


あの中に彼がいる、たった一人であの中へと入って行ってしまった。

もう、自分たちにできる事は何もなかった、悔しさかやりきれなさなのか、ただ自分の拳に力を入れることしかできなかった。


テレビからなる、世界滅亡の危機、家の外は騒がしく、叫び声も響いている

家の中もバタバタと大忙しで電話をしている息子、妻はいつも通りお昼の片づけをしている。


「おやじっ!逃げるぞ!母さんも!!」


「どこに、逃げるというんだ・・・」


「なに?」


「逃げる場所などありはしないだろう」


「くそっ!!貴彦はなぜ、電話に出ないんだ!!」


苛立てながら何回も電話をする、あの子が出るはずもないことはわかりきっているのに、老人は立ち上がり居間を出て行く、彼が行った先は道場だった、ラジオをつけても同じように付ける世界消滅の危機、老人は座禅のように座り、目を閉じる

騒然のする街とは、反対に同情は静かだった。


「貴彦よ、お前は戦場にいるのだな」


老人の言葉は空気となって消える、テレビに一瞬だけ見えた白い羽を広げた騎士、

だが、その剣の持ち方、使い方を見間違えるはずはなかった。

愚かな息子は分からなかったようだが、自分には分った、今孫が何をしているのかを、

いろいろ厳しくし過ぎたことの方が多い、だが、あの子の強さは誰よりも知っているつもりだった、だから、逃げる必要はない、そう思った。

老人は目を閉じ、ただ静かにときに身を任せた。


強大な赤いコアを中心に、至る所にパイプやホースなどが部屋を埋め尽くしていた、

男は一人、地上のささやかな抵抗ともいえる生き物たちの様子を見つめていた。


「そうだ、逃げ惑え、まずは命ある者、次に地上、次に海、その次は空、その次は星々、その次に宇宙、そして最後はこの世界という器が消える、どこに逃げようともお前たちは消えるのだ、虫けらどもが最後の終末を恐怖で楽しむがいい、ははははははははははははははははははははははは――――――――――っ!!!」


狂った笑うを浮かべる男、その部屋に突如、爆発音が響き渡った。


「・・・・なんだ?」


壊れた壁、土煙を立てている、その中から赤い光と黄色い光が徐々に見え始めてくる


「どうやって・・・」


「ずいぶんと、遠回りをしたな・・・」


ありえない、ココは絶対的に隠された場所、見つけられはずがないそれなのにそれは立っている、目の前に、煙の中から現れる白い騎士に恐怖を初めて覚えた。


「どうやら、あれみたいだな」


「はい、このエネルギーの周波数、熱原料、間違いなく、この戦艦のコアです。」


画面に見える強大なビー玉のように赤い球。

たくさんの機械につながれ、それがいかに重要なのかが見てもわかる、それの前に置かれているコンピューターにつながれた、画面から地上の様子が見える


「貴様、どうやって、ここまで来た、レイヴン!!」


「神楽、正紀・・・いや、頭脳イーターとでも呼ぼうか?」


「なぜそう思う、私とお前に何の違いがあるというのだ?なぜ私が人間ではないと断言できる?」


人間とまったく変わらない、サングラスをした金髪の男、それは確かに神楽正紀そのものだった、アイも不安そうに貴彦を見る、貴彦は冷たい目で男を見下し、口を開いた。


「サングラス」


「・・・は?何を馬鹿なことを・・・」


「そうかな、神楽正紀という人は星を見に行くような人だ、確かにサングラスを持っていてもそれはただのファッションだったり、日光を避けるためだとおもう、なのにお前はずっとサングラスをしている、それって何か見られたくない物を隠しているからだろう、人間と思ってほしい・・・とか?」


「フン、母親の日記にでも書いてあったのか?」


「いや、母は気づいていな無かったよ、あんたが操られていると信じていたんだと思う、友達だったからあんたがもう死んでるって思いたいたくなかったんだと思う。

でもさ、いくら、こいつらのチカラが使えたからと言っても、不自然すぎるんだよ、そら、取ってみろよ、そのサングラスを」


「フフフ、人間とは実に面白いな、思考が一人ひとり違うのだから、実に面白い!」


「―――ひっ!」


「テメーはもう、食われてんだよ、母さんに入れた蟲とか言うのに・・・」


神楽がサングラスを取った。

その顔にアイはおびえた声を出した、彼の顔は確かに人の形状を逸脱していはいない、だが、その眼はもう、人の物ではなかった、本来一つのはずの黒目の数が明らかに違う

一つしかないはずの黒目が三つも存在していたのだ。


「それで、私をどうするのかな」


「決まってんだろう、おまえごとそのコアを破壊する!!」


剣を突き構え、地面をけり、一気に距離を詰め、突き刺そうとしたが


「愚かな・・・」


男が手をかざしたと同時にレイヴンの剣がその手ごと突き刺そうとしたが、その手前で受け止められる


「なにっ!!」


「そんなものは、通らんぞ!」


剣が弾かれる、貴彦は後ろに下がりながら銃を撃ったが同じように空中に止まり、レイヴンに向かって飛んでくる


「くそっ!!」


飛びかえってきた弾を回避する。


「念力・・・?」


「わかんない、でも、これじゃあ、攻撃が通らない・・・」


剣も銃も通らない相手にどう戦えばいいのか、面倒なのは頭脳イーターだけあれをどうにかしない限り、戦艦のコアを殺せない、奴はその力を使い、光の玉のようなものを使い、それをレイヴンに向けて撃ってきた。

弾を避けながら考える、どうすればいいのか、そう考えていた時、置かれたコンピューターの画面が見えた。


「・・・あ・・・・っ!!じいちゃん!」


逃げ惑う人々の映像の中でただ一人だけ、同情に座り、目を閉じている祖父の姿があった。


「なんで・・・逃げてないの・・・」


「ああ、その男、おまえの祖父なのか、面白いだろう、どの人間も逃げ惑い、破滅を嘆いているのに、その男だけ、ずっとそうして座っている、生きることをあきらめたのだろうな、あっははははは――――っ!!」


「・・・・・・・・・・・」


違う、祖父がそんな弱い人なわけじゃあない、あきらめている人たちは地面に座り込んでいない神に祈っている人たちの方だ、なら、祖父はなにを思ってそこに居るのだろう


「そういえば、お前らの事をテレビが報じていたな、まぁ、我々の仲間だと勘違いをしていたようだがな」


「・・・・・・じいちゃん、まさか・・・・」


祖父がなぜそうしているのか、なんとなくわかったような気がした。

剣を握り直し、振り返りながら剣を突きたてたが先ほどと同じように見えない壁に阻まれる


「同じことを繰り返して、どうするのだ?」


「同じこと・・・?お前にはそう見えているのか?」


「なに?」


先ほどと変わらない、剣がこのまま弾かれるだけ、そう思っていた。


「暗忌、闇に響け、音切り!!」


レイヴンが剣の柄を弾いた、その瞬間、頭脳イーターの右半分が吹っ飛んだ


「な・・・・・なぜ・・・・・っ!!」


「空気の振動はおまえのそのバリア?では防げないぜ」


「ぐっ!!」


「さよならだ」


ナイフを取出し、頭脳イーターの身体を貫き、壁へと突き刺した。


「空気だと・・・!?忌々しい、世界め!!なぜそこまで頑張る、この世界を救ってなんになる?人も生き物もいずれ死すのだ、なら同じだろう?なぁ、弱虫」


イーターはささやく、彼があきらめ、この世界が破滅するように導くために、悪魔のほほえみを向けながら、たが、貴彦はイーターを無視して、巨大コアに近づいていったのだった。


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