第17話 しゅうまつの足音
その日はいつもの平日、いつもの日常が流れる、ただ一か所だけ、その日常を逸脱していた。
海には大量の軍艦、その後ろの陸地には戦車や、見た事ない大砲が並んでいる。
「すごいな・・・・」
「あれで、時間稼ぎをするそうよ、レイヴンの修復には時間がかかる、あんたのその怪我の回復も含めてね・・・」
「・・・・」
レイヴンはまだあの時の戦闘の傷が残っている、そして、貴彦の片足はいまだに包帯に巻かれているせいで松葉杖が必要な状態のままだった。
「空から落ちてきているって、聞いたけど・・・」
「ええ、宇宙に居たそうよ、まったく卑怯だわ、自分は安全なところにいて、脅威となる可能性をつぶしに来たんだって・・・ムカつくわ・・・」
「それだけ、警戒されてたってことか・・・」
ワールド・イーターに警戒されて、飛び道具を使わせたというのはある意味、良かったのかもしれない、それだけ彼らも追い詰められているという事が分かったのだから。
「何納得してるのよ、あんたあいつらに負けたのよ、悔しくないの!!」
「いや、悔しいけど、イーター達も後がないんだろうなと・・・」
「だといいけどね、とにかく、あんたは休む!!戦いが始まったら、休んでられないからね!」
華純に押されるままに自室に戻される。
今は、休むのが仕事だと言われる、が、やることがないというのは正直苦痛だった。
「暇だ・・・」
ベットに寝転がり、天井を見つめる。
つぶやいた言葉も空気に消える、母の影を探してとんでもないことに巻き込まれて、ここまで来てしまった。
正直よく逃げ出してないなと自分をほめる、でも、自分の敗北のせいで絶望の淵まで落とされてしまった。
情けない、未熟だとここに祖父や父がいたらそう叱られていただろうか、今、二人はどうしているだろうか、いつもみたいに仕事に行っているだろうか、最近顔を合わせていない親を少し思い出した。
「そうだ・・・」
ふと思い、鞄の中からレターセットを取り出す、今時こんなのを使うのはどうだろうと思いながらも筆を止めずに書き綴った。
きっと読まれることはないだろうけど、書いたものを鞄にしまう
ベットに再び横たわり目を閉じ、決戦まで瞑想を始めた。
陸海軍が待ち受ける中、そいつは徐々に降下してきた。
その強大さは、空を見える範囲で覆い尽くすほどの大きさだった。
「全体―――――!!放て―――――っ!!」
化け物が見えたと同時に、合図が鳴った。
その瞬間、すべての兵器からレーザービームや、巨大なミサイルが飛んでいき、爆発していく、命中したかどうかを双眼鏡で確認するが、
「そ、そんな・・・・」
かすり傷一つついていなかった。
すると、化け物の一か所が上へと開いた。
「え・・・・うそ・・・・」
「全員退避いいいいいいいい!!」
その声と同時にすべての軍機が下がっていく、だが、海と陸地に大きな音を立てて降り立った者たちがいた、それは、レイヴンが警戒して倒した人型のイーター達だった。
「くそう!!あれは一個の個体じゃあなかったのか!!」
「イーターの戦艦という事か・・・厄介だな」
「・・・・・っ」
「おい、こら!華純どこへ行く!!」
逃げて行く戦車の中、華純は耐えられなくなり戦車の上へと顔を出した、そこには、巨大な人型の機械とも生き物とも取れない奴らが後ろから追ってきている、華純はバズーカを手に持って戦車の上で構える、それは、あの同時作戦の時に使われたものだ、あの後、小鳥がずっと改良に改良を重ねて作られた最新版だ。
「人間をなめてんじゃあないわよ!!この化け物どもおおお―――――っ!!」
発射と同時に後ろの支えが飛び出し安定させると同時に装填された弾が飛び出していく、その勢いはあの時と比べ物にならないほど早く人型イーターの顔面に命中する。
「あたった!!」
顔の右半分を消失させた、上にその勢いにやられてか、イーターは後ろに倒れた。
だがそれは一体だけで、後から数匹追ってきている、華純は装填をして、もう一度構えた
「おい!バズーカを使え!!あれなら・・・・う、うわあああああああああ!!」
「―――っ!!酒井さん!!」
「た、たす、ぎゃあああああああ・・・・!!」
「たいちょ・・・・・!!」
「うわああああああああ・・・・!!」
「来るな!!しにたくなっ・・・・!!」
無線で話していた、酒井の叫び声とともに右の数メートル隣を走っていた戦車が、横転した。
そのあとも、無線からは多くの隊員たちから悲鳴ががっていく、会場からも陸上からも、崖元は聞いていられなくなり、無線を切った。
「崖元さん!!」
「予想外の事態だ、ワシらには、どうすることもできん!!今は、生き残ることが最優先だ!!」
「・・・・くっそ―――――!!」
華純はバズーカを撃ち続けた。
何度も、何度も、なんども、たとえそれで人型のイーター達を怯ませることができたとしても完全なる破壊はできない、それでも生き残るために必要だった、だから、指が痛かろうが方が外れそうだろうと華純は撃ち続けた。
『崖元さんそのままこちらに向かってください、あれを使います!』
「指令!!」
「あれって・・・?」
「・・・・対イーター用の基地の防衛砲台、使うのは最後の最後までないと思っておったがしかたない・・・華純、中に戻れ!!」
「・・・は、はい!!」
華純が崖元の指示で戦車の中に入った瞬間、大地が揺れ始めた。
「な、なにっ!!?・・・・なによ、あれ・・・」
山にカモフラージュされていた基地は、どんどん上に上がり、隠させた地下を外装を見せる
その外装には四角い戸口がありそれが開くと、大砲が現れた。
機械音が鳴り光の玉が大砲に集まっていく、そして、それは、放たれる。
「撃てぇ――――――――っ!!」
指令の合図とともに放たれた光は、華純たちの後ろにいた、なりそこないの人型どもを跡形もなく吹き飛ばした。
「すごい・・・あんなのあったって、知らなかった・・・」
「ああ、当然だ、使い予定など全く想定されていない物だ、あれは試作段階で取りやめになった機会だ、あれには時雨が死ぬ原因になった物が使われているからな・・・・」
「え・・・?」
「とにかく、いったん戻って、次の戦闘の作戦を見直すぞ!」
崖元の提案に頷いた、だが、華純は後ろを振り返る。
攻撃を受けてしまった隊員たちはどうなっただろうかと、被害はどれほどなのだろうか、酒井は、他のみんなはと最悪な方へと思考を落としてしまう。
「みんな・・・・」
「大丈夫じゃ、みんな、おまえと同じように訓練してきた者たちだ、ワシらの記憶にまだおる奴らはきっと大丈夫じゃ!大丈夫じゃ・・・!!」
ただの希望論だけど、生きていると信じるしか今はできなかった。
静かな部屋、そこに一人横たわるのは貴彦だ。
外の爆発音や悲鳴は聞こえてないのか、眠っているようだった。
貴彦の横に一人の男が現れる、サングラスの金髪の男、その手にはナイフを持って貴彦の首を狙っていた。
「・・・・・・・っ!!」
振り上げたナイフを降ろした。
だがそれは、貴彦の首ではなく、横に刺さった
「ちゃんと狙ったらどうですか?」
「―――――っ!!」
貴彦はそう言って、ゆっくり目を開いた。
起きていたことに神楽は驚き、貴彦から距離を取る。
「貴様・・・・おきて・・・・」
「・・・・・どうした?殺さないのか?そんな度胸もないか」
「・・・・なんだと・・・!!」
起き上がりながら貴彦はそう言った。
神楽はそれに激怒する。
「なら、なぜここに来たんだ?俺を殺すためだろう、やれよ、やれるものならな・・・」
「くっ・・・・!!何故・・・なぜだ!なぜおまえはそんな目ができる!!なぜ、恐怖していない!!終末が始まったのだぞ!!なのになぜ!!」
貴彦は神楽を睨むように見ているのに神楽はそれに苛立ちにも似た何かを抱いているようだ、いや、違う、貴彦は見えにくい神楽の表情を見た。
「なぜだ!!貴様には感情はないのか!!なぜだ!何故まだ、戦いをあきらめていないのだ!!」
「ああ・・・そう、おまえ、俺が怖いの?それとも、世界が壊れるのが怖いのか?」
「なに・・・私が恐怖を・・・・抱いているというのか!?」
「あんたの事なんてどうでもいいよ、俺はあんたの作った、化け物を殺す、あんたホントはもう生きてないんだろう?どこにいる?」
「・・・なんだと・・・私が生きていない・・・どういうことだ・・・」
「なるほど、無意識か・・・やっぱり、おまえ、操られてんだよ」
「なにを・・・馬鹿なことを・・・!!」
「利用していると思い込んでいるというより実際はそうだったんだろう、でも、お前の方が利用されてんだよ、あいつらは、この世界で存在できないんだろう、だから、餌を使った。
おまえはまんまとそれに掛かった、お前の本体は、ヤツのコアの中だろうよ」
神楽はそれに動揺し、さらに後ろへと下がる。
「あんた自身が、ワールド・イーターって言う生き物なんだよ、最後の終末をもたらす破壊の王としてあんたが、最後の敵だ」
神楽は顔を俯かせ何も話さないまま、その場に立っていた、だが、急にその顔を上げる
だが、その顔はもう、人ではない、無は黒く塗りつぶされたような闇でどこを見ているのかもわからない
「ヨクゾ、見破ッタナ・・・・人間ヨ」
「いや、ただ存在だけしているあんたらに会話の概念はない、そいつの意識を利用しているのか・・・・」
「ナカナカ、面白イゲームダッタ、ダガ、コレデ終ワリダ、残念ダッタナ、人間」
そう言って、ワールド・イーター、神楽は消えてしまった。
それと同時に、貴彦に連絡が来たのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます