第15話 敗北
風邪を切る音と、畳が擦れる音が鳴り響く、
華純と貴彦が向かい合いながら、お互いに持っている木刀で打ち合いをしていた。
「相手しろだなんて、珍しいわね」
「いや、ちょっと、自分の未熟さに泣けてきてね!」
「ふーん、まぁ、いいけど!あんたのそれ、やりずらいんだけど!!」
「当然だろう!」
そう話しながら、お互いの隙を付き合いながら得意の構えで疑似戦をやっていた。
華純の攻撃を防いでそのすぐ後に貴彦は攻撃をする、華純も防いで攻撃、これの繰り返しをしていた。
貴彦はやはり、左に木刀を持ってレイヴンに乗っている時の構えをしていた、華純は少し残念に思いながらも、受けていた。
「私には右は使ってくれないの!?」
「使うわけないだろ!右はさすがに模擬戦には使えないよっ!」
二人の打ち合いはすさまじく、他の隊員たちは、隅で見ているしかなかった。
「あいつら、何でそんな楽しそうなんだよ・・・・」
「よく、話しながらやれるなぁ~、若いって良いの~」
「若いで、済むのか?」
崖元はのんびり、羨ましそうに微笑んでいた。
酒井は二人が同じ人間とは思えないでいた。
「酒井、ワシらも模擬戦やるか?」
「やりませんよ、特にあんたとは!」
「いいじゃないか、そら、来い!!」
「だから、いやですって!!、ちょ・・・ほんと・・・ぎゃああああああああ!!」
崖元がウキウキ気分で酒井にを誘ったが、酒井は嫌がった、だが、じりじりと距離を詰められ、崖元に関節技を決められる
ちょうどその直後に二人は打ち合いをやめてその光景を見ていた。
「相変わらず、中良いわねー」
「あれ・・・放って置いていいの、まずくない?折れそうだけど、止めた方がよくない?」
酒井の腕はあらぬ方へと抑えられている、さすがにやばいと思ったので崖元を止めに行った。訓練を終え、シャワーを浴びて食堂でくつろいぐことにした。
「わらびもちください」
「はーい」
食堂担当の人たちがそう返事を帰してから数分で、冷えたわらび餅がお盆と共にカウンターに出される、それを持って、食堂の窓際に座り、冷たくもちもちとした触感を楽しむ
「んー!!うまぁー!!」
甘いものは好きな方だ、昔から特訓の終わった後に祖母が用意してくれていた。
この習慣はどうしてもやめることはできないと考えている。
「あんた変わってるわねー」
「えー、何でだよ・・・いいだろう、習慣なんだよ」
「ふーん」
華純は興味がないように答える。
華純だって普通に生きていたらきっと、貴彦よりも甘い物に詳しくなっていたのだろう
小鳥も同じだろう、もっとおしゃれとかいろいろしていただろうと思った。
「なぁ」
「なに?」
「この戦いが終わったら、どうするんだ・・・?」
「・・・・え」
つい口に出してしまった言葉だった。
ほぼ無意識で何も考えずに言ったせりふだった、思わず顔を上げると真剣な顔で考える表情をしていた。
「か・・・・すみ・・・・?」
「考えてなかったわ・・・・・どうしましょう・・・」
「・・・・・いや、気にしないで、悪い事じゃあないから・・・」
「・・・・まぁ、そうね、この戦いのために生きてきたようなものだしね、今更、普通になれなんて言われても無理ね」
「・・・・・だよね」
幼いころからココにいて、戦いのために身に着けた技術は戦いが終わったと同時に必要なくなる、そうなったら、彼女たちは、生きて行けるのだろうか、心配になった。
「まぁ、大丈夫でしょ」
「へ?」
急に小鳥の声が聞こえた、横を見ると肘をテーブルに乗せ、両手で作った器に顎を乗せにこっと笑った。
「そうなったら、貴彦君が教えてね、女の子って言うのを」
「・・・・・・ああ、それはいい考えね」
「え?・・・・ええええええええっ!!」
二人は真剣な目で貴彦を見ていた。
いつの間にここまで懐かれたのかはさっぱりだが、これは逃げられない気がした。
「おまえらな・・・俺なんかじゃなくって・・・もっと・・・いい人・・・」
「ムー!」
「断るつもり?」
「ですよね・・・・知ってた・・・」
一応断ってみようとしたが小鳥は方を膨らませいかにもいじけてる様子を見せる、華純の目は笑っていない逃げたら絶対に何かさせられる目をしていた。
呆れながらも、悪くないと思っていた、その時だった。赤い光が、基地の上部を掠った。
「・・・・・・」
「敵!!」
「何今の!!」
目視では敵の姿をとらえることはできなかった、だが、確実に彼らがいる。
貴彦は立ち上がる、食堂を急いで出て行く、華純たちも続いた。
「おお!どうした?」
「何してんのよ!!敵襲よ!!」
「はぁ?警報は鳴ってないぞ」
「さっき攻撃があったのよ!!」
訓練室の休憩所にたむろしていた、酒井たちが慌てて武装庫へと行く、華純に声をかける
華純は敵が来たことを知らせたが本来鳴るはずの警報が鳴らなかった。
だが、華純の真剣な声にみんな、動き始める。
貴彦はレイヴンの倉庫へ行き、レイヴンへと乗り込む、
「貴彦君!」
「どうした?整備まだだった?」
「いや、整備はばっちりだよ、全力でやってもたぶん大丈夫だと思う!!」
「・・・ああ、ありがとう、小鳥!」
レイヴンに乗り込むとアイが不思議そうな顔で現れる。
「マスター?どうされました?」
「敵だ、おそらく最後の・・・」
「え・・・しかし」
「姿は見えない、でも居る、小鳥!!」
ハッチが開き、レイヴンは地上へと姿を現す、だが、敵は見えない
「敵影、見えません!!」
「・・・・・いる、絶対に・・・どこかにいる・・・」
と、警戒していた時、また、赤い光がレイヴンに向かってはなって来た
「――――っ!!」
ギリギリだったが右腕を上にあげ、体を横に傾けたおかげで致命傷にはならなかったが、右腹部を掠っていた。
「・・・・・なんとなくの居場所はわかった、けど・・・」
今度はビームの発車場所を見逃さなかった、動かれる前に叩こうと走り出した、
剣を抜きその場所に振り降ろすとカーンっと金属同士がぶつかる音がした、それと同時に敵は姿を現した、ひし形が横に二つ並んだような形の物だった、だが、ダメージは入っていないようだった。
「浅い!っ!!」
剣に力を入れようとしたが赤いコアがこちらを向いたと同時に先ほどと同じ、ビームを放ってきた、顔を後ろに下げ足蹴にして飛び上がり、距離を取った。
「はぁー・・・・危なかった・・・・」
「・・・・・・あれが、最後の・・・敵・・・?」
「分からない・・・でも、やるしかない」
姿を消すことをやめたイーターは目のようにコアを向ける
貴彦には、違和感があった、今までの敵とは何かが違う、そんな違和感。
「・・・・考えてられない、あんなものそう何発も撃たせるか!」
姿勢を低くして、コアを貫くために走った
「闇に貫け、一槍!!」
剣を槍のようにして、コアを貫こうとした、が、コアの前にエネルギーのような何かが集まり、剣が届くと同時にはなった。
「―――――しまっ!」
目の前に赤い光が迫った、反射で左に避けたが、光を完全に回避することはできなかった
「――――そんなっ!!」
「レイヴン!!」
「・・・・・貴彦」
光が消えた後、レイヴンが姿を現した、だが、それはあまりにもひどい物だった。
右上半身は操縦室をギリギリ掠っていただけだが、それ以外は吹っ飛んでいた。
膝をついて動かなかった。
操縦室では、あまりの衝撃で貴彦は気を失いそうになっていた。
「はー・・・・ハァー・・・・・はー・・・・!!」
あと数センチずれていたら、どうなっていたか、分からなかった。
初めて、この戦いで死を意識した。
「マスター!」
「アイ!!無事か!?」
「はい、なんとか、しかし・・レイヴンは・・・・」
「ああ、だが、まだ敵はいるぞ・・・・」
剣は届くことはなかった、いや、届かせていたら自分はもうここにはいなかっただろう
判断を誤った、だが、のんびりもしていられない、敵はまだ、こちらをとらえている、残った左で剣を持った。
「なめるなよ!!」
コアめがけて、剣を投げた、が、それと同時に、また、ビームを撃たれて剣は消えた。
だが、赤いビームを避けて、違うビーム砲がコアを壊した。
「命中したぞ!!」
レイヴンは右に田をレるようにして銃を取出し、コア目掛けて一発撃っていた、赤い光が消えた瞬間に構えたレイヴンが敵の前にあらわれる。
「消え去れええええええええええ!!」
もう一発放った、それは確かにコアに命中した。
「おし!!やったぞ!!」
「よくやったぞ!!少年!!」
「ねぇ・・・待ってよ・・・・どうして・・・」
華純が喜ぶ皆を静止した。
ひし形の敵は、消えてなかった。
「どうして、あいつ、消えてないのよ・・・・」
「まさか・・・・・」
ひし形のイーターは、目を閉じたまま、レイヴンに突っ込んできた
「ぐっ――――――っ!!」
無事な左で止めようとしたものの、力負けして近くの山に押し付けられた。
「ぐかっ!!・・・・・・・っ!!」
衝撃で、頭を揺られる、ゆっくりと上を見るとイーターが、真上に上がっていた
「・・・・・・・そんな」
最後に見たのはそれだった。
すべてが終わった、気がした、死ぬというその現実に体が震えそうになった。
壊れた通信機から誰かの呼びかけが聞こえる、だがそれも、すべてイーターによって押しつぶされた、強い衝撃のせいですべてが真っ暗になった。
「貴彦――――――っ!!」
華純はその光景に絶望した。
レイヴンはガラクタになり、操縦席の安否も分からなかった。
ひし形の敵は突進した後、上に上がり、レイヴンの胸、操縦室あたりを押しつぶした
イーターは上に上がると同時にその姿を消した。
「救急班、急いで、少年のところへ!!はやく!!」
華純はその場に崩れ落ちた、最悪の事態が頭を過ぎったからだ
小鳥もそのことを聞き、崩れ落ちる、整備には問題なかった、なのに、レイヴンが負けたことに貴彦の安否も分からない状態だという事に、体を震わせてた。
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