第14話 第五の捕喰種

警報の中、レイヴンはその姿を地上へと表す。

数十メートル先にいる敵の映像が映し出される


「え・・・・」


その姿に貴彦は驚く。

海に足をつけ器用に前へ進んでくる、一体のロボット

片手は剣のように細く、もう片方は人の手のような形をしていた。


「なんだよ・・・あいつ・・・・」


「人?」


「レイヴン、地上部隊に告げる、こちらでは止められない、こちらでは止められない!!」


「・・・・・マスター!!」


「くっ!!」


海上部隊の制止が効いていないらしい、陸地に上る前に止めに行くため、走り出した。

今までの敵は、少なくとも浮いていた、が、今回の敵はどこか違う気がした。

海に海にひざ下したまで沈む場所で、待ち伏せた。

敵は、こちらをとらえたのか腰まで沈んでいる、場所で立ち止まった。


「と、まった・・・・?」


「・・・・・・」


「なんだ、こいつ、訳わからねぇ・・・」


「明らかに、今までと違う、油断するんじゃない!いつでも攻撃できるように準備をしておけ!!」


崖元の言う通りに貴彦も剣を抜いた。

目の前の敵も細長い剣を構えた。


「マスター!」


「・・・・・・いや、アイツは戦闘に特化している奴だ、こちらの動きを読んでくる、迂闊には動けない・・・」


敵の行動一つ一つが、長年その道を極めてきた者のそれの気がした。

かつて、祖父に教えられていた時のあの感じ、相手は確実にこちらの動きに合わせてくる、迂闊に突っ込めば、隙を突かれるのは確実だ。


「おい、レイヴン、いつまで突っ立てるんだよ!!さっさと倒せ!!」


地上か海上部隊の誰かがそう叫んだ。


「ちっ・・・・見て分からないのか・・・・おまえら、俺より戦闘経験あるだろう・・・」


こちらから動くのは危険だと判断していた、あちらが仕掛けてくるまで何もできないと思っていた、その時だった。


「ガアアアアアア!!」


「・・・っ!!」


急に雄たけびを上げ、海から飛び上がり細い腕をレイヴン目掛けて振り下ろしてきた、貴彦は少し反応に遅れたものの何とか剣で受け止めることができた。


「レイヴン!!」


「なんだよ・・・あいつ・・・」


地上部隊も海上部隊も人型の行動に理解が追い付いてこなかった。

レイヴンは受け止めたが、細い腕からは想像もできないほどのチカラで押される。


「・・・お、重い―――っ!!」


受け止めたものの弾き返すのは難しいと判断して、剣を左に斜めにして、イーターの剣を受け流した、落ちる形で近づいてきたその身体に右で拳を腹にあてるつもりだったが、剣ではない方の手で受け止められ、逆にけりを入れられ距離を取った、けりをくらったせいでその場に尻餅をついてしまった。


「ぐっ・・・・・そ!!反応が思ったより早いっ!!」


受け止めるために力を入れていた、左手がしびれていた。

イーターはそのことを知ってか、レイヴンへともう攻撃を仕掛けてきた。


「マスター!!来ます!!」


「――っ!!アイ、ヤツの隙を見つけろ!それまで何とかする!!」


「・・・・はい!!」


イーターは剣を突いたり振り降ろして、攻撃を連続的に放ってくる

その攻撃を、剣で受け止めたり避けたり振り払ったりしていく付いて行くことはできるが手数はあちらが上だった。

一突きしてきた剣を払った瞬間、衝撃がレイヴンに走った


「ぐっ・・・・・!くそっ!!剣をおとりにっ!!」


レイヴンの腹部にイーターの拳が入っていた、それによってバランスが少し崩れる

持ち直しても、攻撃の隙がない、操縦と生身との違いがここで響いてきている

損傷アラームがなっている、避けていたとはいえ掠ったりしてしまう、それが肩口やほかの場所のダメージになってしまっていた。


「だめだ、手がない・・・解析を待っている余裕はない・・・このままだとレイヴンが持たない・・・・どうする・・・どうすれば・・・・せめて、ほんの少しでも隙ができれば、一撃で仕留められるのに・・・・・!!」


頭の中でぐるぐる考える、ヤツのコアは胸に見えているのにそれを貫く隙がない

戦闘という経験の無さのせいか、それとも臆病になっているのだろうか、身に着けた技はどれも半端者が使う代物だ、後継ぎだからと言ってあの修練を超えられるほど自分は強くなかった。

今になって後悔するとは、実に馬鹿馬鹿しい


『戦え、貴彦、何があってもこの暗忌は、生きるための術だ!』


祖父の言葉が頭に過る。

生きるための術、祖父はそう言った。

父は何と思っていただろうか、この技はの事は父はあまり好きなようではなかったきがする。なぜこんな時に家族の事がよぎるのだろう、そんな場合ではないのにと少し笑う


「戦え・・・・・」


「マスター?」


「アイ!」


「はい!!」


「戦うぞ!」


「は、はい?」


貴彦の言ったことが分からず、首をかしげる


「解析はやらなくていい、その代り、レイヴンが俺の動きについてこれるように、バランス制御に専念して!!」


「は、はい!」


「レイヴン、少し無茶させるけど、ついてきてね・・・・」


左に持っていた剣を右に持ち替えた。

華純もその行動に驚いた、


「持ち替えた…?」


「マスター・・・?」


「暗忌、暗殺術の原点であり、元素の技、だが、これには制限がある、必ず利き手ではない方を使う、一撃で仕留めるこの技たちは相手を確実にしとめるための物、だが、殺すべきではない者を殺さないようにするために寸止めができるようにあえて利き手ではない方を使うように訓練される、聞き手を使うとき、それは、戦の時、一撃で何にも葬り去るために使う

いいだろう、おまえは初めて俺に利き手を使わせた!使うに値する敵と見た!

来い、戦いをしよう!」


ガアアアアと声を荒げて、先ほどと同じようにもう攻撃を仕掛けてくる、だが、先ほどと違ったのはレイヴンの動きだった。

付いて行くのがやっとだった攻撃は届く前に振り払われ、避けられる

振り払った後、かその瞬間かイーターに攻撃を入れている。

まったく違う動きに全員が圧倒された。


「なんだ・・・何が起こっている・・・・?」


「奴の方の動きが鈍くなってない?」


「あの子、右利きだったのか・・・?」


レイヴンの小さな攻撃をくらい続けたからなのか、イーターの動きが鈍くなっていた。


「敵の動き、弱くなっています!」


「当然だ、全力の攻撃をすべて受け流し、避けているんだから、人型が仇になったな、ワールド・イーター、今までの奴みたいに化け物だったら、おまえには負けていたよ、だが、お前の制作者は俺の出すスピードに対抗するために人型にしたんだろうが、ざんねんだったな、

俺は、本気なんて出したことないんだよ」


右手を肩の高のまま後ろへと引いた、それはいつも左で技を出していた、構えだった。


「暗忌源流第一の型、一刀妖刀」


「ガアアアアアアアアアア――――――っ!!」


イーターはレイヴンに向かって、走ってくる

レイヴンは動かなかった。


「レイヴン!!」


「マスター!!」


声が聞こえる、だが、貴彦は静止したままだった。


「闇に走れ・・・・・煌めき!!」


一瞬の刃の光が動いた、人に見えたのはそれだけだった。

気がついたら、レイヴンとイーターの場所は背中合わせに入れ替わっていた


「・・・・え?」


「・・・・な、なにが・・・」


胸のコアはひびが入り、砕け散って行った、それと同時に人型のイーターは砕け塵になって消え去った。


「マスター・・・・?」


「ハァー・・・・・・ハァ・・・・・ハァ・・・・・」


限界を超えた集中力と敵が射程範囲に入ってくるまで待つという行為は、何よりも精神を削り、その疲労が一気に貴彦を襲った。

それと比例するようにレイヴンのあらゆるところから、警告アラームが鳴り響いていた。

操縦席の背もたれに身を預け、呼吸を整えながら、回収を待った。


「もー!!レイヴンをこんなにして――――!!何やってきたの―!!」


「す、すみません・・・・」


回収され、レイヴンの様子を見に来た瞬間、小鳥は怒鳴った。

腕やらいろんなところに湿布を張っている、貴彦はその怒鳴りを聞くことしかできなかった。


「もう!!関節部の整備がどれだけ大変か、知らないわけじゃないでしょ!!」


「・・・・・ごめんなさい・・・」


「あんた、右利きだったのね」


「え・・・ああ、まぁ、これのせいでどっちが利き手だがたまに忘れるけど・・・」


「あんな隠し玉があったなんて、知らなかったわ・・・」


「まぁ、使うことはほぼないからね・・・おかけで筋肉痛だよ・・・」


普段使わない、筋肉をたたき起こしたせいで腕まわりの全般が悲鳴を上げていた、すると、華純が質問してきた。


「あれ、どうなってるの?私たちには、何かが光ったことしか見えなかったけど・・・」


「ああ、あれは、ただ、剣の先でコアに穴を造ったにすぎなよ、相手が突っ込んでこなかったらそもそもできないし、本来なら針みたいなまさに暗殺具って言うのでやるものなんだけどね・・・」


「よくそれでやったわね・・・」


「はっはっは・・・だからこんな状態なんだよ・・・暗殺で追及されたのは、傷口の最小化だ、刀ではなく針やハサミ、誰もが考えもつかない方法で殺すことで傷口を小さくする方法を模索された、今回使ったのはまぁそれの始まりみたいなものだ、柔いとがったもので相手を一撃で屠るための技、剣でもやりようではできるものだ」


「ふーん」


「まぁ、俺も聞いただけだしね・・・ホントかどうかは知らないよ、これでも中途半端にしかやってないから・・・」


「ほかにもそう言うのがあるの?」


「ああ、あるよ、俺がやれるかと言えば、たぶん無理だと思う・・・」


「・・・・そう、まぁ、期待しないでおくわ」


そう言って、華純は倉庫を出て行った。

今回は本当に無理をした、自分もレイヴンにも、もっと練習しておけばよかったと今更、ながらに思う、次に来る敵のために、少し鍛えようと思うのだった。

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