第12話 覚悟

「―――っ!!」


何かに呼ばれた気がして、目を開いた、操縦室は明るくよく見えているが、レイヴンの目の前は真っ暗だった。


「なんだ・・・これ・・・」


「マスター!!目を覚まされたのですね!」


アイがうれしそうに言う、どうやら意識を完全に持ってかれていたらしい、


「どれだけ、気を失っていた?」


「五分くらいだと推測します」


「結構、長かったんだな・・・これ、どういう状況」


「はい、おそらくあの箱が作り出した空間にいるのでしょう、ライトもレーダーもすべてが遮断されて、コアがどこにあるのか、まったく分かりません・・・・」


ライトをつけているようだが、光を通さないのか、まったく何も見えない、暗闇に閉ざされていた。


「通信もできないのか?」


「はい・・・」


完全に閉じ込められたようだ、上のフタはなぜ開いたのかさっぱりだが、一つだけ分かるのは、コアはこの中に必ずあるという事、一瞬だが確かに見えた、最初に現れた箱の中にコアがあったことを、確かに見た。


「問題は・・・どこにあるかだな・・」


最初の箱よりはだいぶ大きくなっていたはずだから、この場所のすぐ後ろが壁だとして、反対側までどれだけあるのか、さっぱりわからない、正確に見れたものは少ない、それなりに広いのは確かだった。


「マスター、どうします・・・」


「相手は、俺たちの場所を把握しているはずだ、俺が寝ている間に攻撃はあった?」


「いえ、ありませんでした」


「・・・・」


気になったので少しだけ、横にずれようとしようとしたとき。


「マスター!」


「――っ!!」


ビシュンっという音がして光の玉が飛んでいた、どうやら、動く物に反応するようだ


「アイ、あいつ、今どこから打ってきた!?」


「す、すみません、あまりに一瞬過ぎて・・・・」


「・・・・いや、これからは、見逃すなよ・・・」


「え・・・」


立ち上がり、壁に手を付けた。


「箱の中を一周する、飛んでくる弾道を覚えといて、その中心にコアがある・・・」


「そんな!、マスター!危険です!!」


「危険なのは承知の上だよ、でも、やらないと・・・」


「マスター・・・・分かりました、私も覚悟を決めます!」


「・・・ああ、頼りにしてる」


ここで、止まるわけには行かない、あの男を否定しなければならない、ここで止まればすべてが失われてしまう、手の感覚だけで壁にそっては知らないといけない、立ち止まることなく全速で駆け抜ける。


「行くぞ!」


「はい!」


そう返事をされた瞬間、走り出した、案の定、コアはレイヴンを仕留めようとレーザーを撃っていくる、ギリギリだがすべて後ろに壁に当たっている、今どのあたりにいるのかさっぱりわからないがとにかく走る、走って、走って、解析が終了するまで足は止めなかった。


「解析終了、ここから十メートル上空、一メートル二メートル五センチのところにいます!!」


アイがそう言った瞬間、滑りながら地面を削り愛が示した、場所へと方向転化する

目の前からくる弾を何とか避けながら姿勢を低くして、背中でスライディングしながら、右にあった銃を取り出し、それを真上に構える。


「吹っ飛べえええええええええ――――――――――っ!!」


引き金を引いた。

同じくレーザーの玉が真上に向かって放たれた、そのすぐ後にパラパラと赤い破片が落ちてきた、すると、同時に壁が崩れ始めた。


距離を置いて、地上部隊、改造部隊は見守っていた。

彼があの中に入って五分も過ぎていた、皆絶望していた、その時。

何かが破壊される音とガラスが割れる音を聞いた。


「なに・・・いまの・・・」


「レーザーが・・・上に向かって飛んで行ったぞ・・・」


「・・・・・おい!見ろ!!黒い壁が!」


大きく立ちはだかっていた、壁がしおれるように縮んで消えていく、それと同時に見慣れた、機人が現れる、夕日に照らされながら、その存在を示した。


「・・・・・・レイヴン」


「レイヴンだ!!」


「生きていたぞ!!」


「うおおおおおお、レイヴン―――――っ!!」


「・・・・貴彦・・・・」


ガシャンと音を立てて、コックピットの扉が開き、その中から一人の少年が現れる


「ハァー・・・・・・・眩しいな」


ずっと暗い中にいたから光は眩しかった、だが、レイヴンから見た世界はとてもきれいな色をしていた。

レイヴンの回収と共にいなくなったとされる人々の弔いが行われた。

彼らがいたという記憶は残念ながら誰も持ってはいない、複雑な思いのまま彼らに花を手向ける


「名も知らぬ我が同胞たちよ、どうか安らかに・・・」


指令が号令すると、みんな、黙祷をささげる

護れなかった命がある、それだけで貴彦は悔しかった。

自分はまだ、未熟だったと、心の中で悔しがった。


「なるほど、あの中でそんなことが・・・」


「はい、神楽正紀は、俺たちの敵です」


報告もかねて指令に暗闇の中で会ったことを話した。

断言するように貴彦は言った、彼は敵だとそう言った。


「そうか・・・破滅が救い・・・・刷り込みではないというわけか」


「おれは、覚悟を決めました、あの男が差し向けてくる敵は、すべて、俺が破壊します、誰も、もう失わないように・・・」


「ああ、私も友人を殺す覚悟をしよう、あと二体か・・・」


いつ来るか分からない敵

今回の負傷はそこまでではなかったが、足回りに不安があったと小鳥は改善に取り掛かった、華純はまだ、いなくなった人たちの墓標から帰ってきてはいない。


「すまないね、君にはつらいことばかりを押し付けてしまって、実に情けないよ・・・」


「いえ・・・俺は、なにも・・・」


「ああ、そうだ、君にこれを渡そうと思っていたんだ」


「え?」


そう言って竜崎は部屋の隅にあった棚の一番下の引き出しを開けると、二つの箱を取り出して、貴彦の前に置いた。


「・・・・これは?」


「君のお母さん、時雨の遺品だ・」


「――――っ!!」


「まぁ、と言っても研究ノートがほとんどだ、一応保管していたが、私が持っているより、君の方が相応しいだろうからな、渡しておくよ、もし、読んで何か気づいたことがあるなら教えてくれ、私もこれの意味を知りたいと思っている」


「・・・・はい」


二つの箱を持って、部屋へと帰って行った。


貴彦が去った後、竜崎は外を眺めていた。


「・・・・・これが運命というのだろうか・・・」


「はっはっは!運命だってよ!!」


「―っ!!」


突然聞こえてきた声、振り向きながら拳銃を向ける。


「よぉ、久しぶりだな、竜」


「正紀・・・何をしに来た」


「いやぁ、よくもまぁ、あんな悪魔をそばにおいているなと思ってよ・・」


「・・悪魔?何の話だ?」


「レイヴンの操縦者だよ、アイツ、狂ってるぞ」


忠告のように神楽は言う

そんなことを素直に聞くわけがない。


「おまえから見れば、俺たち全員狂ってるんだろ?」


「くははははっ!!確かにな、でもよー、アイツも大概だぜ、俺が拳銃を向けてるのに平気な顔して俺には向かってきたんだ、おかしいだろ?あいつ、俺なんかより悪魔だぜ」


ぎゃはははっと大笑いをする正紀、だが、竜崎はその様子を冷めた目で見ていた。


「・・・・なんだよ、オレはおまえのためを思って言ってるんだぜ・・・なぁ、竜よ」


「・・・・黙れ、世界の裏切り者・・・私を気安く呼ぶんじゃない・・・・」


「・・・・ふん、こんな世界の何がいいんだ、守ることがそんなに偉いのかよ!?クソくだらないことしか考えない奴らが支配するこの世界の何の価値があるんだよ!!お前が一番、この世界の価値を知っているんじゃないのか!?」


「・・・・・・」


「なぁ、竜、守って何の得になるんだよ、人間に価値があるのか?秩序が何をしてくれた?同じことの繰り返しをすることが人間の生きる価値なのか?戦いをやめない愚かな者たちがそんなに大切か?ただ平和を待つだけの人間がそんなに好きか?」


そう繰り返す、正紀、竜崎は彼の言葉をただ聞いて鼻で笑い飛ばした。


「フン、そんな論議をすること自体が愚かだ、人間は変わらないだろう、同じことを繰り返し、同じ理由で人を殺し、国を奪い、支配を快楽にするだろう、秩序は都合よく解釈されるさ

人間に価値など求めること自体が愚かだ、戦争をしたがるのは金儲けがしたい奴だけだ、都合よく神などを利用して、ただ殺すだけの兵器を作り上げていく。

そんなわかりきった答えを知っているのにもかかわらず、自分の大切なものを守るのが人間だ、平和をどれだけ唱えた所で結局自分の都合しか考えていないから戦争が起こるだと分かっているのに、分かり合えるというのが人間だ!

矛盾を知りながらもその矛盾から逃れられないのが人間だ!!

無意味だというのなら貴様が起こしているこの戦いがどんな戦争よりも無意味だ!!」


竜崎はそう叫んだ。

持っていた引き金を引いたが、正紀には当たらなかった。


「・・・・・お前も同じことを言うのだな・・・・」


「・・・なに?」


「あの女、時雨にも同じことを言われたよ・・・」


「・・・・・なんだと、それは、どういう意味だ!!」


「クククっ、病死したとでも思ったのか?あいつを殺したのは俺だ」


それは衝撃的な告白だった。

医者にも見せて病死だと判断された彼女を殺したと言ったのだ


「貴様ぁ!!」


「アッハッハッハッハッハ!!当たるわけないだろうが!!」


「ぐっ!」


誦談をすべて避けて、竜崎の頭を掴んで床へと叩きつけた


「後悔しろ、すぐに俺が正しいことが証明されるのだからな」


薄れゆく意識の中、消えていく正紀を見送ってしまった


「くっ・・・・・・そ・・・・」


人知れず竜崎は執務室で倒れていたと、貴彦が知ったのは翌日だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る