第7話 守るチカラ

死を覚悟して衝撃を待った。

しかし、死の音は来なかった、恐る恐る目を開くと、白と青の機人が襲い掛かっていた、触手を右手で掴んでいた。


「レ・・・・イヴン・・・?」


来ないと思った。

今朝の彼の様子から来るはずがないと、確信していたのに彼は来ていた、なぜと思い通信を開いた


「あんた・・・なんで、逃げなかったの・・・」


貴彦は右の操縦レバーで触手を抑え、左の剣で切り落とした。


「なんで、いるのよ・・・」


「はぁ?なんで、だと・・・・?そんなもん・・・俺が知りてぇーよ、ほんと、どうして来ちゃうんだろうな・・・・バカみたいだ・・・どうしちゃったんだろう・・・」


「・・・・マスター!」


AIの言葉で前を向き飛んで来た、種のような弾丸を避ける


「危ないから、下がってろ!」


「なっ!!言われなくてもそうしてるわよ!!」


「なぁ、AIユニット、お前名前は?あるの?」


「・・・・はい、アイと呼ばれています。」


「そうか・・・アイ、いい名前だと思うよ」


「貴彦様・・・」


「様はいらないよ、なんか変な感じするからやめて」


「はい、マスター!」


「まぁ、いいか・・・アイ、アイツのコアはわかる?」


「はい、上に乗っているつぼみの中から高エネルギーを感知しております」


アイが画面に表示されたのは目の前の巨大な花を横から取った者だった、つぼみのようになっている場所の中に何かの球体が赤く光っていた。


「あそこか・・・」


剣を持ち直し、登るための場所を探していた時、ホワンと音がしたと先ほどの種が弾丸のように飛んでくる


「いいこと、思いついた!」


そう言うと走り出す、そして、ジャンプして種の上に乗って次に飛び移るときに切り裂いて次へと飛んで行った。

それを繰り返すこと、四回、花の上にたどり着いた。

花の上にはつぼみのような花弁、この中にコアがある、剣を構えて距離を詰めようとした、その時


「マスター!下がって!!」


「―――っ!!」


アイの言葉で距離を取った、するとつぼみがゆっくり、広がっていく、花の中心には人のような顔と手のような触手、まるで人がピンクのドレスを着ているかのように見えるその光景はとても異様だった。


「本気、という事かな・・・・」


ホワンと音がしたと同時に花びらがあたりに浮いてくる、もう一度ホワンと鳴いたと同時に、花吹雪がこちらに向かって飛び回ってきた。

飛んで来た花びら達を避けたり切り裂いたりして、回避して行く、だが、後ろから何かがぶつかった様な衝撃が来た。


「ぐっ・・・・!!なんだ!?」


「背中に花びらが!」


「くそっ!!」


外そうと機体を揺らすも取れる気配がない、そうしている間にも花弁は機体に付き纏っていき、埋め尽くされてしまった。


「レイヴン!!」


華純は思わず声を上げてしまった。

撤退中の戦車の上から花の上の戦いは見えていた、が、レイヴンの姿は、花の中へと消えてしまった。


「酒井さん!戻らないと!!」


「戻ってどうするんだよ!!、あれたちの武器じゃあ、あんなとこにいる奴に届くわけないだろう!!」


戦車を運転している、同僚に言うがすぐに否定されてしまう


「でも!!」


「うるさいぞ・・・・耳元で騒ぐなよ・・・」


その時だった、通信をつないでいたインカムから貴彦の声が聞こえてきたのだ


「・・・っ!!貴彦!!」


「闇に貫け、暗忌、一槍あんき いっそう!!」


花びらの山から花の精の胸目掛けて剣が心臓であるコアごと貫いた。

ピシッというガラスが割れるような音を立ててコアは崩れ去り、花の精も姿を保つことができなくなり、崩れて消えて行こうとしていた。


「マスター!離脱を急いでください!」


「ちょ・・・ちょっと待って!!」


立っていた場所は崩れ消えて行こうとしているため降りるすべがなく仕方なく飛び降りた。

運よく海に落ちたせいで高い波を立ててしまった。

海上部隊の数隻から怒鳴り声が聞こえてきた


「す、すみません・・・・」


無事にレイヴンも回収され、基地に戻ってきた

食堂へ行くと、地上部隊の人たちにもみくちゃにされた


「よっ!!兄ちゃん、助かったぜぇ―!」


「え・・・あ、いえ・・・」


「まったく、遅いのよ!あんた」


「ご、ごめん」


「おいおい、来てくれたんだからいいじゃあねぇーか、なぁ?」


「いや・・・俺が悪いんです、決心がつかなくて・・・すみません・・・」


「いいって、いいって!!最初はそんなもんだよ!!あ、オレ、酒井な!よろしく!!」


「よ、よろしくお願いします・・・」


「こら、酒井、少年を離してやれ、おまえより、彼の方が疲れてんだよ」


三十少し過ぎた男は、酒を飲みながら大笑いしながら貴彦の背を叩く、その勢いに押され苦笑いしか出てこない貴彦を助けてくれたのは崖元だった。


「そりゃひでぇよ!おやっさん!!」


「いいから、あんたは向こうで酒飲んでなさいよ!!」


華純は酒井の頭を貴彦から離し、向こうにいる酒飲みたちの方へと追いやった。


「あー、ひでぇや、まったくよぉー!!」


それでも懲りずに豪快に笑う酒飲みたちを呆れながら見ていた。


「賑やかだな」


「馬鹿なだけよ・・・」


「まったく、弱いくせに飲むからだ・・・」


二人も呆れて文句を言う、どうやらいつもの事のようだ。

すると、一人の兵士がこちらに来た。


「あ、いたいた、前田君、指令が呼んでます!」


「あら、三野」


「俺を・・・?」


みんなと同じ軍服を着ているが、大きいのかに会っていない背の小さな少年が呼びに来た。

その言葉に疑問を投げると頷かれた、三野と呼ばれた、彼についていくと司令室に連れて行かれた。


「ではっ!」


「ああ、ありがとう」


初めて来たとき以来だったか、相変わらず生活感のない部屋、ただ違うのは、彼は指令の椅子に座ったままで自分は机を挟んだ前に立っているという事。


「先の戦い、見事だった、礼を言わせてほしい、ありがとう」


「いえ、俺は、何も・・・」


「残ってくれるという、解釈でいいかな?」


「あ・・・はい、俺なんかで、役に立つのなら・・・」


「いや、ありがたいよ、とても心強いよ、サポートは彼らを頼ってやってくれ、私もできる限りの支援をしよう」


その言葉に頷く、心強いのはこちらの方だとも思った。

母が残した、最後の願い、その意味も知ることができるかもしれない

そんな期待を抱きながら与えられた部屋から空を眺めた。


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