第6話 君の意志を
結局、この基地で一夜を明かしてしまった。
言われたとおり地下と地上の中間にある広い食堂に入っていくと、大勢の人がいた。
こんなにいるとは思わず、入り口で立ち尽くしていた時だった。
「あああああああー!!」
「――――っ!!」
急に大声を出され振り返ると作業用のぶかぶかのズボンとタンクトップと言う女の人らしからぬ胸の大きい人が俺の事を指差していた。
次の瞬間にはすぐ目の前まで、近づかれていた。
「君でしょ!!レイヴン動かしたの!!会いたかったんだ!!」
「え・・・・あ・・・あの・・・」
「あ、私ね、風呂
「は・・・はぁ・・・ありがとう、ございます?」
「君にいろいろ聞きたいことがあるんだ!朝食まだでしょ、私も一緒にいい?」
「え・・・・あ、はい」
「やった!!」
そのやり取りを遠目から華純は見ていた
「遅かったかぁ~・・・」
「助けてやれよ」
「いやだよ、小鳥がああなったらあたしじゃあ止められないよ」
地上部隊の一人とそう話しながら、少し離れた机から見守ることにした。
小鳥と向かい合いながら話したのは主にレイヴンの動作の速度とか違和感とかそう言うものだった。
「ふむふむ、ありがとう、いい意見が聞けたわ!次に出撃するとき、楽しみにしててね!!」
「え?・・・次?」
「え?残るんじゃあないの?」
「あ・・・・」
どうやら、小鳥は貴彦が残って戦うと思っていたようだ、改めて言われると自分はどうしたいのか、分からないでいた。
「・・・・俺は、俺は別に、ヒーローになりに来たんじゃないんだ、ただ・・・」
「お母さんを探しに来た、だっけ、うん、わかってる、でも、私はあなたがここに残ってくれると思っている、強制する気はないよ、でも、心のどこかで残りたいって思っているんでしょ?」
「・・・・・なんで」
小鳥は貴彦の心を見透かすように言った。
「さぁ、なんででしょ。君の意志に任せるよ」
そう言って、小鳥は去って行った。
司令室、竜崎は朝食をとって戻ってきていた。
「お帰りなさい、竜崎様」
急にパソコンが起動し、丸いリボンをつけた生き物がいた
「やぁ、アイ、お帰り」
「はい、本日から通常業務に戻らせていただきます」
「アイ」
「はい」
「貴彦君のこと、お願いするね」
「・・・・はい、ですが、貴彦様は・・・」
「大丈夫さ、君を持ち出してまで、彼に託したのだから、きっと大丈夫だよ」
「・・・・はい」
そう言って、電子の生き物はいなくなった。
「出雲、どうして、彼をここへ導いた?お前は何を見て、この事態を予期したんだ?」
いない者に聞いたところで何も帰ってこないことはわかり切っていた。
しかし、聞かずにはいられなかった、聞いていればよかった、だた、そう思うだけだった。
朝食を終えてから部屋に籠った。
この状況と自分の心を整理するために、いろいろ追いついて異なものが多すぎて、いつの間にか居眠りをしていた、その時だった。
けたたましい警報の音で目を覚ました、あの時と同じ、敵があいつらが現れたのだと分かった、立ち上がり扉を開いて走ろうと思った。
だが、扉の前で足が止まってしまった、自分は今、何をしようとしていた?
戦うのか?あの化け物の仲間を殺しに行くのか?それは、ここに残ることを意味しているのに?頭の中がそれでいっぱいになった。
『いいか、貴彦、チカラとは、ただの道具だ、それを使うものによって意味を成すのだ、
弱きものに使えばそれは悪となる、だが、誰かのために使えばそれは正義となる、学べ、我が家の伝統を』
頭を過ぎったのは祖父の言葉だった。
昔、それに触発させていじめを止めた、でも、結局、悪者になったのは俺だった。
一発だけ殴っただけだった、彼らの拳の数より、立った一発しか当てていない俺を先生は叱った。
今思えば、バカだった、祖父にも怒られた、理由は聞いてもらえなかった。
「貴彦君!!出てくれるか!?」
昔を思い出していた時、竜崎さんの声が聞こえた、壁についている通信用のパネルからだった、竜崎さんの声のほかに華純が何か叫んでいる声や、何かの発砲音が聞こえる
「貴彦君、決断の時だ、君の意志に聞く、行ってくれるか?」
「・・・・・・」
どうすればいい、俺は何がしたい
何度も、何度も、考えてもまとまらない
母さんはどうして俺をここに呼んだの?
「―――――――っ!!」
その時、誰かの悲鳴が聞こえてきた、気がした
「海上部隊は船から鎖を撃て!絶対に陸地にたどり着かせるな!!」
空中に浮かぶ花のような形をした円盤に卵が乗っている不思議な怪物、その後ろから、鎖を打ち付け船で進行方向とは違う方へ引っ張る。
「くっ・・・・!!レイヴンはまだか!?」
「期待するだけ無駄だ!!あいつはきっと来ないよ・・・・」
「なんだと!?」
「非難は何とかなったぞ!!」
「おっさん、使徒用の武器でこいつを攻撃しろ!!」
「言われんでも、わかっておるわぁ・・・!」
バズーカを取出し浮いている化け物に向けて放つが、命中はするものの怯む様子はなかった
「くそっ!!人間をなめるなよぉー――――ーっ!!」
崖元が持っていた、バズーカを奪い取って弾を込め、化け物めがけて放った。
だが、触手が現れバズーカの玉を握りつぶした。
「なっ!!」
触手は大きくしなり、華純たちめがけて振り下ろされた
「ひっ――――――っ!!」
死を覚悟して、咄嗟に目を閉じた。
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