第5話 事情聴取
気がついたら、同じ場所だった。
病室のような牢獄、一人、膝を抱えて座る。
他人との距離の取り方が昔から苦手だった、話せなくなったのは、母と別れて父と暮らすようになってからだ、それでも何とかやってきた。
ここに来たのは、間違いだったのだろうか、そう思っていると鉄格子の方に人の気配がした。
「よぉ、ヒーロー、元気かい?」
現れたのは華純だった。
「なんだ、おまえか」
「おい、口の聞き方には気をつけろよ、お前の書いた紙は役立たずだったぞ」
「・・・・は?」
華純の言ったことが理解できなかった。
「実行できたろ!?」
「いいや、できなかった、このうそつき!」
「そんな、俺はちゃんと書いた!!」
「うるさい!!指令がお前に会いたいそうだ」
「・・・いやだ」
不服そうに華純が言う、これを否定しが人の足音が聞こえてきた。
華純が横を見ると戸惑ったような顔をした。
「指令・・・」
「華純、口が悪いよ、やぁ、少年、いや、前田貴彦君」
「・・・・あ、名前」
「前田?お前そんな名前だったのか?」
ここに来て、初めて名前を呼ばれた。
名乗らなかったのに、なぜ彼が知っているのか、それが疑問だった。
「初めまして、貴彦君、私は竜崎 大輔、君のお母さんの仕事仲間だ」
「・・・・・・」
「おかあ・・・・さん・・・・?・・・・え、あの人、子供いたの!?」
「ああ、ちなみにお前より二つほど年上だ、敬いなさい」
「・・・・・嘘だろ・・・」
竜崎と名乗った、男は華純に鍵を開けるように言った。
華純は渋々、鍵を開けた。
「出てくるといい、話をしよう」
そう言うと竜崎は案内をするように、貴彦を連れて行く、華純はまだ信じられないように、貴彦を見ていた。
案内されたのは、竜崎の司令室だった。
紅茶と茶菓子を出されて、向かい合っている応対用のソファーに座る。
「さて、どこから話そうか・・・」
「あの敵と、あのロボットは?」
「ふむ、いいだろう、まず、君が倒した敵はイレギュラー、アンノーン、使徒とも呼ばれている」
「崖元さんが異世界の敵だって言ってた、この世界を奪おうともしているって・・・」
「ああ、まだ研究段階だが、回収できた一部から、この世界とは全く違う技術が使われていることがわかっている、それを安定させているのがこの世界の技術だとも、つまり、あれは二つの世界の技術が生み出した、化け物なんだ。
野放しにして置くとこの世界のすべてを食い尽くそうとする、あれは、それを止めるために君のお母さんはあの機人、レイヴンを造ったんだ」
「あれにAIがいることは知ってる?」
「AI・・・?ああ、彼女にあったのか?」
「AI・・・?,指令どういうことですか!」
「華純、レイヴンはもう、意志を持った。あれはもう、彼の物だ」
意志、あのAIがあのロボットの意志だと竜崎は言った。
彼はあれを知っていた、母は彼にだけは知らせていたらしい
「母さんはどうやって、イレギュラー?の事を知ったんだ?」
「さぁ、それは私にも分からない、だが、いずれ宇宙から生命が来るかもと言う噂が流行ったことがあった。彼女は何か、確信めいたものを持っていたようだったが、どうやって確信したのか・・・・」
「あいつらはあと何体いるんですか?」
「ああ、時雨博士の観測予知では四体いるとなっている、まだほかにいるかは、分からない」
怪物たちを予期した、母の観測によると四体いる、つまりさっきので残り三体となったわけだ、あれだけでかいのが数十体と居たらさすがに困る
聞きたいことを続ける。
「・・・・・どうして、俺だと分かったんですか?」
出会った覚えのない、彼がどうして自分の正体を見破ったのか、疑問だった。
名乗っていないのだから知らなくて当然だと思っていたのに、竜崎は間違えずに言ってのけた
「ああ、君があの時使った技、あれは、かつて暗殺者が使った技の原型の技だと思ってね、試作段階の技を今でも伝えている家があるというのは昔学んでいたから、彼女の結婚相手がその手の人だったとも聞いた事があったからね、まさかと思ったよ」
「・・・・俺は・・・どうしたら、いいですか・・・」
「うーん、難しいね、君の意志に任せるが、できればここにいてほしい、レイヴンはもう君に決めたみたいだったからな」
「・・・・・」
「今日は休んだ方がいい、部屋に案内しよう」
山に偽装して作られている基地の中を案内されながら、一番上近くの角部屋に案内された
部屋にはベットとテレビにソファがあって、奪われていた俺の荷物が置いてあった。
「中間の階に食堂があるから好きな時に行くといい、
風呂はそれぞれの部屋にシャワーがあるが、別の場所に大浴場がある、好きな方を使いたまえ、少し休むといい、何かあったら、そこの機械を使って連絡してくれ、では」
「あ・・・・・はい」
一通りの説明をして、壁に埋め込まれている機械を指差し、説明した後、部屋を去って行った、もう少し話したいことがあったけど、言葉が出てこなかった。
ベットのある部屋の隅には備え付けの冷蔵庫もあった、一流ホテル並みの設備が整っているようだ。
ここから、一駅乗れば大きな都市がある、ここにいるのなら、買い物が必要そうだ。
「って・・・・居座る気か・・・?」
自分から思わず出た言葉に驚いた
ふらふらと歩き、ベットに倒れこむ、俺の知らない母を知っている人達
よくわからない化け物たち、レイヴンと呼ばれる機械人形、一日にいろんなことが置きすぎている気がする。
ようやく落ち着けたからか、一人になれたからか俺はいつの間にか、眠っていた。
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