第3話 AIサポートユニット

貴彦のいる場所から、上へ行った、基地の司令室には画面いっぱいに巨大な球体が街の港近くにいることを確認していた。


「くっ・・・・博士が早まったかもと言っていたがホントだったとは・・・華純、動くか!?」


男が画面越しの華純に質問する、彼女は何かの中にいて、あたりに手を伸ばしている


「ダメです、指令!やっぱりこいつ動かねぇよ!!」


「なぜだ・・・なぜ動かないんだ・・・これでは・・・世界が・・・」


あれを破壊できる兵器に華純は乗っている、だが、その兵器は動かない、いや、動かせないのだ、目の前に写るあの球体を破壊できる力は沈黙したまま、動かないのだ。

絶望していると、一つの通信が入る


「崖元さん・・・?」


「指令、彼を、乗せてみてはどうでしょう?」


「彼・・・ああ、博士の部屋に入ってきた少年か」


「ええ、彼の鞄の中にあったあの手紙、きっと博士の考えでしょう、どうです?一つ賭けてみませんか?」


「おっさん、何言ってんだよ!!」


「・・・・・いいだろう、博士の手紙を持っていたんだ、きっと何か手にしているかもしれない、頼んだぞ」


繁はうなずき、通信を切った。


「はーなーせ!!離せよ!!」


「いいから来なさい・・・逃れられんよぉ~」


とても老兵とは言えない力で貴彦は引きずられていく、必死に抵抗するもののまったく、はが立たない


「はーなーせー!!、このおおおおおお!!」


「ハーハッハッハ、若いもんにはまだ負けんよ」


いやいや連れてこられた場所は、先ほど見た施設の中で一番天井が高く広い場所だった。


「な、なんじゃこりゃ・・・・」


「今、外に敵がいる、君はあれに乗ってそいつを倒して来てくれ」


「は?・・・・・っ」


繁が指さす方を見ると一体の人型機械人形が立っていた、身長は夕に高層ビルを抜いているであろう、その白と薄青色の機械人形から、華純が降りてくる。


「さぁ、行くぞぉー!」


「は?ちょ・・・おい!!」


「ホントにやるんだ・・・」


「なに、あの子?」


「あれが動くかどうか、試すんだって」


「ふーん」


機械人形の整備士が華純にそう聞いた。

貴彦は引きずられるままに、乗るための担架に乗せられ、機械人形の中へと放り込まれる


「わああ!!ちょ・・・おい!!」


「君ならやれるだろう」


「はぁ?」


繁がそう言った後、入ってきた扉を閉められる、明かりが付きその全容が見えてくる、椅子の横にはバイクのレバーのようなものが足元には車のペダルのようなものがついている、テーブルのような位置にはたくさんのメーターと数個のボタンが左右にそれぞれあり、正面にはスマホパットくらいの大きさの画面が一つあるだけの狭い運転席

何をすればいいのか分からず、あたりを見渡していると、壁だと思っていたところが映像を表示した。

そこには、繁や華純、先ほどの広い部屋が映し出されていた。


「・・・・・・なんだよ、これ」


「さぁ、少年、それを動かして見せろ、君から奪った物は返した、君ならどうにかできるのだろう?」


「はぁ!?できるわけないだろ!!、何考えてるんだよ!!ふざけるなよ!!」


すると、広い画面が動き、今いる場所とは別の場所が半分に映し出される、そこには見た事もない化け物が今にも港の町を襲おうと近づいてきているところだった。


「・・・・な・・・に・・・これ・・・」


「君が今乗っている物で破壊すべき、敵、どこぞのバカが呼び寄せたか、作り出したかは知らないが、こいつを放置することはできない、放置すれば、瞬く間にこの世界が食い尽くされる、さぁ、動かして、見事あれを倒してヒーローになって見せろ!」


「・・・・訳わからねぇー・・・」


できるわけがない、そのためにここに来たんじゃない、なのにどうしてこうなる。

狭い椅子の上で膝を抱えて俯く、いつの間にかこうやって縮こまるのが癖になっていた。

こうしていれば、誰も俺に気付かないでいてくれるから、放って置いてくれるから、画面から悲鳴が聞こえ始める、あんなものを見たら悲鳴を上げて逃げるか、面白半分で写真を撮ってネットにあげるかだろう、俺も写真は撮るだろう。

でも、俺が、今、置かれている状態は、そんなものではない、あれを倒せと言われているのだ、これを動かしてあれと戦えと、訳が分からない


『いいかい、貴彦、隠したいものは常に持ち歩くところに隠すのが一番だよ、大事なものもそう、毎日観る物か、身につけるものに隠すんだ!!』


「・・・・・大事な物・・・・」


ふと母の言葉が浮かんだ、まだ一緒に住んでいた時に、彼女がそう言っていた気がする

だが、身に着けていたものなんて、もう・・・


「・・・・鍵」


繁がいつの間にか返してくれた鍵を手に取る、鍵には部屋のタグがついているだけ、だが、このタグよく見ると半分に折れている、まるでキーケースのように、それを横から見るとやはり中に何か挟まっている。

横から挟まっている物を押すと、長方形型のメモリーカードのような物が姿を現した。


「・・・・ナニコレ、メモリーカード?にしては形が・・・・?」


異様なそれに戸惑う、そもそも、これを出したはいいがどうしろと言うのだろうか、いや、それよりもなぜ、彼らではなく、母は自分にこれを渡したのだろう、こんなことに関わっている事を言わなかったのは父が信じないと分かっていたからだろう、では、なぜ、死の間際になって息子に手紙を出した?

不明なことが多すぎて、考えがまとまらない、ふと、目の前の大画面より手前にある、小さめの画面の上部に目が行った。

そこにはちょうど、このメモリーカードが入りそうな挿入口があった。


「・・・・・ここに、挿せばいいの?」


上から差し込もうするが、手を止めた。

きっと、もう逃げられなくなる、そんな気がしていた。

大画面の方から繁のプレッシャーがかかっている上に、あの化け物と戦闘中であろう兵士たちの悲痛な声まで聞こえてくる。


「・・・・・っ、もう・・・・どうにでもなれ!!」


一回だけだ、後はあの華純とかに使い方を教えて、ここから出て行けばいい、そうすれば普通でいられる、そうすればもう、こいつらに関わらずに終われる、そう思ってメモリーを刺した。

その瞬間、今まで動かなかった手前にある機械たちが動き始めた。

広い倉庫に機械の動く音が響き渡った、それを聞いて、みんな驚きの声を上げた。


「動いたっ!?」


「よくやったぞ、少年!!搬送急げ!!」


機体がレールに乗せられ、そのまま上へとレールを辿って行った。

操縦室の中の貴彦はこの機械が動いている事より、目の前のサブ画面に表示された生き物に戸惑っていた。


「ようこそ、レイヴンへ、私はこの機体のAIサポートユニットです。」


丸に目と口とリボンがついてるだけの生き物がそう言った。



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