第4話 情報の整理

「おかえりなさい、リザーズ。首尾はどうかしら?」

目を覚ますと、目の前にライラがいた。リザーズは、自分の城のベッドに戻っていた。ライラの顔を見て、ため息が出た。

「あら、姉の顔を見てため息とは、そんなに大変だったの?」

「大変も何もアルバートにすら会えてないし、いきなり魔法学校に放り込まれたんですよ。姉上が言っていた使い魔はどこにいたんですか?」

「会ってないかしら?おかしいわね。どこ行ったのかしら?」

「姉上、本当に魔族を助けたいんですか?情報がなさ過ぎて、どう動いていいか全く分からなかったんです。」

ベッドからを身体を起こして、リザーズはライラの目をしっかり見て話した。

「魔族を助けたいのは本当よ。魔法学校の新学期のことは知らなかったの。・・・・では、情報の共有は食事をしながらでもしましょ。」

ライラは笑顔を消して、立ち上がった。


いつの間にかネアスがいて、きれいに盛り付けされた料理の並んだ机があった。

ライラの魔法で、部屋をいつの間にか移動させられていた。

「おかえりなさいませ、リザーズ様。」

ネアスが深くお辞儀をする。食事を前にして、ひどくお腹が空いていることにリザーズは気が付いた。

ネアスとの挨拶もそこそこに、机の上の料理を次々に口へ運んだ。

「さすが我が王、食べる姿も勇ましい!!」

いつの間にかガスートもそばにいて、リザーズの食べる姿に感涙していた。ネアスはその様子を呆れた様子で見ていた。

「ふぅ、食った、食った。こんなに食べたのは久しぶりだ。」

空になった皿がいくつも積み上げられ、それをネアスとガスートが片付けていた。


食後の紅茶が運ばれてきて一息ついたところで、ライラが話を切り出した。

「相変わらずよく食べるわね。一息ついたところで、さっそく本題に入るわね。まず、リリーシュ嬢の性格について。一言でいえば平和主義の八方美人。人当たりはすごく良くて、敵は少ないはずよ。ただ、自分がないから父親の敷いたレールをひたすら進んでる感じね。」

いつものへらへらした雰囲気はなく、まじめにライラが話を進めることにリザーズはライラが本気なのだと感じた。

「だとしたら、アルバートとの婚約も父親の計画なんですか。本人の意思はあまりないんでしょうか?」

「それはどうかしら。女の子はみんな王子様に憧れを持っているもの。リリーシュとアルバートも小さい頃から一緒に過ごしてきた仲だから、恋愛感情がないとは言い難いわね。」

「そうですか。でも、戻ったときにベッドのそばにいたのは弟のデイビッドでしたよ。向こうは少なくともリリーシュに好意を持っているようでしたけど、本当は第3王子とできてるんですか?」

「私もそこは分からないわ。リリーシュ嬢は八方美人で誰にでも優しいから、好意を抱いている殿方は多いのかもね。それに、父親が宰相だからうまく取り入れば将来は安泰だし。」

その八方美人がすごく厄介そうだなとリザーズは思った。ライラが嘘をついている様子もないし、この話はここから先には進みそうにないと思い、リザーズは話題を変えた。


「それでは、魔法学校について教えて下さい。友人や指導者、寮のルールなど2年生であるリリーシュが知らないとおかしい点がないようにしておきたいのです。」

「そうね、それじゃあまず、ファーベ魔法学校について解説するわね。」

そう言うとライラは、指をパチンと鳴らした。すると、机の上にお城のような建物が映し出された。

「これが、ファーベ魔法学校全体の建物。ここが寮ね。そして、こっちが各教室の並ぶ建物。それから、中央に演習場。」

映し出された建物をクルクル回しながら、ライラは説明を始めた。思ったよりかなり広い建物で、魔法動物も飼育してあったり、教師たちの部屋も個人個人で用意されていた。


「次は、先生たちね。まずは、校長のジェイバー・ヨング。見た目は若いけど、エルフの血を引いていて、かなり長生きしてるようね。魔力も高く、どの先生たちからも信頼は厚く、生徒の親もこの先生に教わってきたようよ。」

ライラがまた指を鳴らして今度は、銀髪の人物を映し出した。新学期の挨拶で中央にいた人物だ。エルフは長生きな種族だが、それにしてもかなり若く見える。まぁ、自分たち魔族も長生きだが、見た目が歪な分、人間からは敬遠されている。

教師たちは全部で10名。魔法が使える人間だけではなく、エルフやドワーフの血を引く者もいた。比較的人間と共存してきた種族だからだろう。


「次は、リリーシュ嬢の周りにいる人達ね。まずは、シャロン・サックウェル。幼馴染で、リリーシュ嬢の親友ね。アルバートとも幼少期からの付き合いがあるわ。性格は、明るくて誰とでも仲良くなる子ね。ただ、負けず嫌いなところもあって、時々同年代の子と対立することもあったようね。」

「え、親友がいるんですか?すぐ、おかしいって気が付かれないですか?」

「うーん、まぁそこは、リザーズがうまいことやって。」

「姉上、そんな簡単に言わないでください。」

「大丈夫よ、今までだって家族にうまくごまかしてきたじゃない。」

「そうですけど・・・・・」

「はい、次行くわよ!時間も限られてるんだから。」

ライラは、リザーズの言い分は無視して話を切り替えた。

そのあと、幼馴染を一人と、一年生の時に仲良くなったアイリスを説明された。寮の部屋は、このアイリスと同室らしい。そして、兄のバーナスと仲良くしていたのは生徒会長で、ラディキッド・ブラグデン。バーナスは生徒会の副会長をしているらしい。だから、生徒があんなに挨拶していたのかと、リザーズは納得した。その他に、王子の従者で同年代で一緒に学校に通っている、シャンセマム・カーライル。そもそもアルバートに近づけてないので一度も見かけてはいない。

そのあとに、寮のルールを説明されて、授業の流れも聞いて、最後はもう一度この計画の目的を改めて聞かされた。

「私の教えられることはこのくらいね。あとは、リザーズの魔王としての腕にかかってるわ。よろしくね。」

ライラは、満面の笑みで言った。情報の整理に、頭をフル回転させていたリザーズは、顔を上げた。ライラの顔を見て、リザーズも思わず笑った。





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