第4話 開戦。そして目覚め。
隊員の言葉を聞いた科野隊長は、眼の色を変えた。
「全員配置につけ!!同時刻を持ってディアブローラとの開戦を宣言する!!!」
一斉に外へと駆け出す戦闘員たち。何をすればいいか分からず、呆然と立ち尽くしていると、岸が、
「おっさん!なに突っ立ってんだ!おっさんがなにも超能力が顕現していないとはいえ、ルミエラの一員なんだ!配置につけッッ!!!」
えっ…何言ってんのこの人…。とは一瞬思ったが、あまりの剣幕に「はいぃ!!」と情けない声を出して外へと駆け出した。
外へ出ると黒いマントに身を包んだ不気味な大群が待ち構えていた。
明らかに異様な雰囲気の集団だ…。
「また、勝負を挑んできましたか…。戦力差は我々の方が勝っていますが、今なら退却してもよろしいのですよ。」
科野隊長が挑発した。
「口を慎め!科野!全く貴様は【あの頃】と全く変わらず自分の実力をわかっていないな!!」
ディアブローラの集団のボスであろう男がそう言った。
「口を慎むのは貴方の方だ。ルミエラの力を甘く見るな!総員かかれ!!」
科野隊長の言葉と同時に戦闘が始まった。
いきなり始まった超能力者同士の戦いに驚きながらも、先程のディアブローラのボスの言葉が引っかかった。
【あの頃】とは科野隊長とあのボスは旧知の仲なのか…?だとしたらどうして戦っているんだよ…疑問が疑問を呼び頭の中で考えていたとき、
「おっさん!!」と岸が叫んだ。
しまった、こんな場合じゃ無かった。謝罪の言葉を述べようとしたその刹那、自分の体が急速に空へと向かい、俺の視界は曇天の近くにあった。
(あれ…さっきまで地面にいたのにな…)
少しでも情報を得ようと周囲を見渡す。
すると、黒髪のポニーテールに眼鏡の女が宙に浮き、右手を俺の方に向けてほくそ笑んでいた。
「こんにちは!おっさん!そして、永遠にさようなら」
そう言って、手を横に払った。
その瞬間、俺の体は左方向へ勢いよく飛ばされ意識はそこで途切れた。
(おっ…おっさんを守れなかった…もう少し速ければ…!!)
岸は激しく後悔した。それと同時に表打を薙ぎ払った敵に憎悪の念が湧く。
「てんめぇ…よくもやってくれたなっ!!!!」
怒りに任せて水圧の刀を振り回す。
雨の日は水を武器に変えることができる岸にとって最高のコンディションだった。
しかし相手も、岸の攻撃を軽い身のこなしでかわす。
「私の名前はてめぇじゃねえよ。ミナンだ。覚えとけクソ。お前もあの男みたいにふっ飛ばしてあげっか?フフッ」
挑発とも取れる言葉に岸はさらに激昂する
「二刀流で切り刻んでやるッッ!!」
刀を増やし、岸はミナンに斬りかかった。
次の瞬間。二刀流だったはずの刀は消えていた。と同時に両手は激しい痛みに襲われた。
「ゔわぁぁぁ!!!!」
岸の悲痛な叫びが響き渡った。
「すまねぇなあ。実はパイロキネシスも使えちゃうスゲーやつなの私。だからお前の二刀流の刀なんて怖くねぇよ。あの世であのオッサンと仲良くな」
「何言ってんの…?ゔぁっ!!」
岸は反論する暇も与えられずミナンに薙ぎ払われたのだった。
「ふたりとも簡単に倒せちゃってつまんないなぁ…どうしよっかな?くたばってるかどうか様子見に行こ♪」
その頃岸は森の中にいた。幸い意識はあったが、両腕に激しい火傷を負っていた
「うぅう…痛え!ミナン絶対許さねぇ!!おっさん探さないと…」
「岸さーん…生きてま…す」
聞き覚えのある声に振り返る。というか、二人とも同じ場所に飛ばされたらしい。
「おっさん…!生きてた…」
表打が仰向けで返事をした。どうやら動けそうもないらしい。
「なんとかな…お前…酷い火傷だ…あいつがやったのか…」
「しゃべるなおっさん!…つっ…骨折してるだろ!」
自分のほうが重症なのに心配してくれた事に感動していると、
「あー‼マジかよ!くたばってるのかと思ったのに!」
さっきの女が再び現れた…俺は恐怖で動けなかった。
「めんどくせぇ。一気にやってやるよ…。」
ミナンは手のひらを岸の方へと向け炎が放たれた。両手に火傷を負った岸は水を生成することができなかった。岸は覚悟を決め目を瞑る。
「岸…何してんだ…反撃しねぇのか…」
眼の前で仲間が死ぬのは見たくない。
奇跡的に何か起こってくれ…頼む頼む頼む
アイツを護りたい!!!!!
「うおあああ!!!」
激痛を堪え走り俺は岸の前に大の字で立った。
「お前が死ぬのは嫌だ!!…超能力者じゃねえけどっ…体張って護ることは出来る!!」
俺の目の前に炎が迫って来た。
あぁこれで俺の人生も終了だな。でも悔いはねぇな…仲間を守れただけでもいいじゃねぇか…
と走馬灯が浮かび始めた瞬間、炎は寸出で止まっていた。
(あれ…なんで……??とにかくラッキーだ!次は反撃だ!)
そう思ったと同時に炎はミナンに向かい、激しい砂煙が巻き上がった。
目の前で起こったことに信じられず、呆然としていると
「それがおっさんの能力か…!?」
「え、これ俺の能力なの?…誰かが加勢したんじゃねぇの?」
「何いってんだ…ここには…隊員の姿も見えないぞ…」
確かに周りを見渡しても誰もいなかった。
「ってことは俺がやったのか?…どういうことだ…?」
頭が混乱する。そして激痛も襲ってくる。
(これ早く治らねぇかな…敵も多分まだ生きてるし考えたいし、なにより岸が心配だ)
そう思った瞬間、嘘のように骨折が完治した。
「なっ…!??」
表打は、自分の身に起きたことが信じられなかった。
(どう考えたって今起こったことは【超能力】だとしか考えられない…2日間何も起きなかったのに急に超能力者になれたのか…!?)
ますます混乱していく表打。
その様子を見た岸は
「どうした…オッサン??」
と不思議そうに声をかけた。
「なぁ…岸、試したいことがあるんだが決して俺のこと気持ち悪いとか思うなよ」
それを聞いた岸は怪訝な面持ちで表打を見たのであった。
三十路超能力者。 平原 瑠衣華 @me-gyu67
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。三十路超能力者。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます