第1話 それは突然に

東京にある小さな文房具メーカー「上野屋ペンシル」そこが俺の職場だ。

「表打さぁん!昨日頼んだ新商品の企画書出来てるか?」

上司である納屋の声が響く。俺はというとまだパソコンに向かっていた。

(出来てる訳ねーだろ!昨日のやつでも終業時間間際に頼んだ事じゃねぇか!!)

そんなことを思いながら、完成間際だった企画書を完成させ、納屋に手渡した。

「遅くなり申し訳ありません。完成しましたので確認をお願いします。」

しばらく目を通すと納屋は、

「ここのグラフは気にくわないなあ…。あ、あとこの文章にこれを追加しといてね。…」

数分後、俺の力作の企画書は修正で真っ赤になっていた。

これだけでも相当な精神的ダメージにも関わらず最後の一撃を納屋はかましたのだった。

「今日中に修正しといてねっ☆」

また、残業が確定した。クソ上司め。


その後なんとか企画書を完成させた俺は、終電にギリギリ間に合い、そして自宅へと戻った。

遅すぎる晩飯の途中、ふとあるテレビ番組が気になった。

《超能力者は本当に実在するのか!?》と銘打った番組で、超常現象の専門家たちが討論を行っていた。その中の一人が

『【ディアブローラ】という集団がおります。そのディアブローラの元幹部からお話を聞いた事があるのですが、そこに所属している者たちは皆この世界に不満を持っていて、彼らの目的は超能力で世界を変え、そして統治することだと言っていました。また、彼らの目的を阻止しようと、【ルミエラ】という集団がいるそうで、こちらもまた世界各国の超能力者がおり、ディアブローラの目的を阻止すべく、日々激闘を繰り広げているらしいのです。』

その言葉に専門家達が、

『激闘を繰り広げているだと?そんなのどこでやってるんだ!』

『それだったらニュースでも取り上げられるだろう!!』

とヤジを飛ばし、番組は激しい論争になっていた。

「ディアブローラとルミエラか…。なんかRPG の世界じゃねーか…。」

(俺が超能力者だったら、絶対ルミエラに入るかな)

「ったく…もう三十路なのになんてこと考えてやがる…。」

ふと、そんなことを呟きながら、缶ビールを開けた時、なにか閃光のようなものが見えた。しかし、雷のような轟音もなければ、雷が鳴るような空模様でもない。

「でも今光った気がしたんだけどなぁ…おかしいな」

気になったので外に出てみるとやはりなにもない。

気のせいかと思い、家に入ろうとした瞬間。

人影のようなものが横切った。次の瞬間。

ドゴォォォォン!!!!!

瓦礫が崩れ落ちる音と暴風が俺を襲い、吹き飛ばされた。どうやら血が出ているらしい。額から生暖かい液体が流れている。痛え。


すると、瓦礫の中から傷だらけの女が現れた。女は「クソが」と呟きながらこっちに向かってくる。

片目を開け、精一杯の声で

「…。てめぇ何者だ…。」と問いかけた。

女は「おっさん。私のことが見えんのか…。悪かったな家壊して。まぁ朝には家と怪我も治ってるからよ。ちと眠っててくれ。」

そこで俺の記憶は途切れたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る