第四話「家事手伝い」

食後の片づけは、ウツロも手伝ってくれる。


「これ、棚に片づけて」

「わかった」


俺の部屋では、キッチンの片隅に陣取る冷蔵庫の上に小さな戸棚を置いている。

食器類はそこだ。

大きな地震に襲われたらもしかしたら一溜まりもないかもしれないが、バストイレ別1Kクローゼット付き居間6畳では、どんな空間だって有効活用したい。


「これは、ここ」


普段ポヤポヤしている雰囲気とは裏腹で、ウツロが意外と物覚えがよくて助かっている。

それなりに注意力もあり、おそらく茶碗を割った数は俺の方が上だ。


「ウツロ、今度一人で買い物行ってみるか?」

「いいかもね」


ウツロが一人で買い物を覚えてくれれば大いに助かる。

そうなったら、合鍵も作ったりしなくちゃな。


ウツロが束ねた髪を揺らしながら、戸棚の中を覗き込む。

ゴムで一つに結わえるのは俺がやっている。

おそらくいつもその様子を鏡越しで眺めているから、覚えてはいそうだがウツロから明確にものをねだる事は少ない。

時間のない平日朝に「直して」と言われれば若干怒りの感情が芽生える事は確かだが、それ以外はスキンシップの一環なんだと思う。


「ねえ、今日もう一回セックスしたい」


まだ一人で買い物は早いかもしれない。

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