第三話「トイレットペーパー」

「ウツロ、そこらへんにトイレットペーパーない?」


トイレの便座に座りながら、ドア越しに居間にいるだろうウツロに向かって問いかけた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・見当たらないなあ」


しばらくした後、トイレのドアをコンコンとノックしながらウツロが答えた。

最後にトイレットペーパーを買ったのはいつだ。

あの日季節外れの炎天下の中を二人で両手いっぱいの買い物ぶら下げて。

その次の記憶が、無い。

適当なダイレクトメールのチラシなんかで済ませてもいいがトイレに流せないので処理が面倒だ。


「どうすればいいかなあ?」


ドア越しにウツロが次の指示を仰ぐ。

早朝ではスーパーはまだ開いていないし、仮に開いていたとしてもウツロ一人でスーパーに行かせるのは不安だ。

水に流せる紙、あ、そうか。


「俺の通勤鞄にポケットティッシュが入っているはず。それを持ってきてくれ」

「わかった」


俺みたいなウッカリ屋が多いのか、最近のティッシュは水に流せるものが多い。

しばらくの後、頼んだ物を手に持ったウツロがトイレのドアを開けた。


「今日は帰ってきたらセックスできる?」


どうやら、漫画を読んでいるところを邪魔してしまったようだ。

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