其の瓊《に》*甘酸っぱい皐月の御祭り編*

天童彩の想い**ゴメン……透。

 ゴメン……とおる



 アタシさ、死んじゃったみたいなんだよね。



 せっかく大好きなアンタと付き合えたのに、勝手に死んじゃってゴメン。一人っ娘(こ)でワガママなアタシの、ダメな特徴だね……。



 でも、これはこれで良かったのかなって、ときどき思うんだ。



 だって、モテモテのアンタと、バカなアタシがいっしょにいたら、透の価値を下げるだけでしょ?

 だから、アタシがいなくなって正解なんだよ。

 きっと。



 …………透はさ、アタシなんかよりも、もっと美人で、も~っと頭が良くて、むぉ~っと! 素敵な女性といた方が、絶対に幸せになれると思うからさ。



 こんなこと言ってるけど、別にアンタを突き放してる訳じゃないし、嫌いになった訳でもないからね。


 アタシは透といっしょにいれたこと……まぁ短い期間だったのかもしれないけど、とても幸せだったんだ。だから生きてるアンタには、おじいちゃんになるまでず~っと幸せでいてほしいんだ。透のおじいちゃん姿なんて、あまり想像したくないけどさ。


 ……………………へへっ、ゴメン。やっぱ、あの日のこと思い出しちゃうや……。


 透といたあのとき……もう、何年も前だよね、懐かしいなぁ。


 あのお祭りで、いっしょに食べたリンゴ飴。今でも覚えてるんだ。だって、すごく美味しかったからさ! 

 できるなら、また食べたいくらいだよ!




 でも、もうできないんだよね……。




 死んじゃったアタシには、もう透と話すこともできないし、透に顔を見てもらうこともできない。

 ちょっと、残念……。


 無理だってことは、このバカなアタシでもわかってる! 




 でもやっぱ、アンタと二人で見たかったなぁ……。




――お祭りの、でっかい花火……。

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