第27話

 昼過ぎ。ケサン山脈の中腹までやってきた『暁』とカイルたちはその場所に近づくことを拒みたくなった。今まで嗅いだことのないような悪臭。それは血にまみれる彼らでさえ鼻を切り取ってしまいたいと思えるほどに。そもそも彼らは死体の後始末など気にしたことも無い。それは保安官たちの仕事だ。こうなった後の光景を目にするのはフランクでさえ久方ぶりだった。小屋の姿は見えていないが蠅の羽音がそこかしこで聞こえている。


「・・ここみたいだな」


「言わなくても全員分かってるさ」


 日中の蒸し暑さが悪臭に拍車をかける。カポカポと音を立てる馬蹄が小屋のある開けた場所で止まる。扉が吐き出したように血の跡が扉から漏れ出ている。乾いた砂は赤黒く染められ、青い空にはハゲワシが空を飛んでいた。


「それで・・ここからどうするんだ?」


「やつらはもうこちらの来訪に気づいてるだろう。だが外には出てこない。焼け死んじゃうからな」


「じゃあ小屋の中に入って吸血鬼を相手にするの?あたしはパス」


「そうしてくれハニー・バニー。あんたらも同じだ。そこでじっとしててくれ」


「冗談じゃねぇ。こいつにいいとこ持ってかれてたまるか。吸血鬼だかなんだか知らねぇが俺にだってやれるさ」


「素晴らしい意気込みだ。じゃああんたは一緒に来てくれ。餌になってくれれば清々する」


「んだとこら」


「アレン」


 ヒイロはアレンの腕を掴んでたしなめる。


「ここは彼に任せておこう。フランクが彼を必要としたんだ。俺たちじゃどうすることもできない。分かるだろ?」


 アレンはヒイロとフランクの顔を見てしぶしぶ立ち止まる。


「いいのかラッキースター?」


「今度その名前で俺を呼んでみろ・・マジで鉛玉ぶち込んでやる」


 さんざんあしらわれたのにも関わらずまだアレンは負けていない気でいる。その粘り強さは尊敬に値するだろう。


 カイルはゆっくりと小屋の方へ進んでいく。背中に下げた銀の剣と腰に下げたC96を意識しながら。そうして小屋の扉を開けた瞬間、カイルの体が衝撃とともに後方へと吹っ飛んだ。

 完全に不意をつかれた。向こうからやってくるなんて計算外だった。肩が外れたことを激痛で知る。食いしばり外れた肩を戻そうとしたところでマデリーンがふところに飛び蹴りを食らわした。この間一秒にも満たず、『暁』は息を飲むことしかできなかった。


「なんだあれ・・」


 一瞬の出来事にアレンですら言葉を漏らす。


「・・冗談じゃ・・っ・・・ない・・。なんだあんたたち、陽の光は大丈夫なのか・・?」


 目の前の吸血鬼二人は黒い装束に身を包み、顔すらロクに見ることが叶わない。体格からして一人は女だろう。なるほどそれなりに考えたものだ。だがその装束を引っぺがせばお前たちは簡単に死んでしまう。虫よりも儚い命だ。


「どうしたのジャコモ」


 黒い手袋をはめた手をぶんぶんと振るジャコモにマデリーンが声をかける。


「ああ・・奴を殴った手がどうも焦げ付いちまった。妙なコートを着ているらしい」


「なるほどねぇ・・」マデリーンはカイルの方へ向き直り静かに笑った「あなた、ジャンゴでしょう?」


「大正解だ薄汚いお嬢さん」


「なら、あなたさえ倒せばあたしたちはこの大陸で頂点に立てるってことね。それに大金を背負った無力なカモまで一緒とは・・。あたしたち相当ツイてるみたいよ」


「いいや、ここが運の尽きだ。俺が吸血鬼を相手に倒せなかったことなんて一度もないからね」 


「じゃあこれが最初で最後の敗北になるわね」


 マデリーンがカイルに飛び込んでいく。すかさずC96の弾丸を放ったがマデリーンはすべて躱しカイルの胸元へ正拳を放つ。仰け反って躱したつもりだったが肋骨にひびが入るほどのダメージを喰らった。


「素手じゃきゃあなたのコートが与えるダメージもかすり傷に等しいものね」



 ジャコモが真っ先に狙ったのは体格の小さいヴィジェだった。羽虫のように弱そうな子供だったがジャコモに流れる血が彼女に流れる血を感じ取った。厄介な相手を血が見つけていた。

 ヴィジェは向かってくるジャコモに飛びかかり宙で横に反転するとその横っ面に蹴りを放った。鋭い鞭のような痛みがジャコモの顎を襲う。そして、彼に襲い来る『暁』たちの弾丸の嵐。


 いくつもの穴がジャコモに空いていくがその傷は瞬時に回復し鉛玉がパラパラと地面に落ちていく。カイルは無数の銃声を耳にした後で『暁』に叫んだ。


「無駄だ!!鉛玉じゃ奴に傷一つ与えられない!!」


「・・どうやらそのようで」


 汗を垂らし引きつるアレンにジャコモが飛びかかる。ヒイロはアレンの前に飛び出すと散弾銃を頭に向けて放つ。だがそれさえも、飛び散る脳漿さえもすべて一瞬のうちにジャコモは回復してみせる。

 

 問題はそれだけじゃない。なぜこの黒装束さえ元通りになる?疑問を巡らすカイルの横腹に重い衝撃が走る。何をされたのかは分からなかった。マデリーンとの距離は近いが腕が届く範囲にはいない。


「あの子たち、打つ手なしみたいよ?すぐに死んじゃうかもね。あなたと違って。でも安心して?あなたには打つ手を打たせる暇さえ与えないわ」


 黒い装束から繊維がほつれ、その一つ一つがカイルの首元へと伸びていく。そうか。これは装束なんかじゃない。一つの生き物だ。気づいた時には装束は手足を掴み、カイルは自由を奪われた後だった。


「あたしたちの祖先は串刺し公って呼ばれてたみたいね。噛みついて血を啜るよりよっぽど素敵な殺し方だと思わない?」


 装束が切っ先を形作りゆっくりとカイルに近づいていく。随分気味の悪い洋服だ。軽口を飛ばそうと思ったが締め付けられた喉元がそれを許さなかった。

 

「さようならジャンゴ。地獄で会いましょう」


 切っ先がコートを貫きカイルの胸元を抉りかけたその時、マデリーンのこめかみが破裂する。装束による拘束が解かれカイルは地面に叩きつけられた。


 撃ったのはジャコモとの戦いの最中にあったフランクだった。なんて視野の広い男だ。カイルは素直に敬服する。だがそのフランクにジャコモの拳が飛んでくる。躱すこともできずにフランクは弾き飛ばされた。ジャコモの足には弾丸に続いてヴィジェのタスクが突き刺さる。


 少なからず『暁』は優勢だった。だがその攻撃の一つ一つがジャコモの死へと近づくことは無い。ジャコモの動きを制限することが精いっぱいだった。これが吸血鬼というものか。成す術の無い『暁』に緊張が走る。


「邪魔が入ったわね。でもあなたの寿命が延びただけよ」


「そりゃあいいや。あと何十年生きてられる?」


「この・・!」


 マデリーンから無数に装束の繊維が伸びてカイルに襲い掛かる。まっすぐにそれを捉えたカイルは銀の剣に刻まれた名前を呼ぶ。


「行こうぜジャンゴ」


 銀の剣は弧を描き繊維を切り落とす。繊維と呼称しているが紛れもなく生き物であろう。それも吸血鬼と同じく、このフローディアに招かれざる来客。ならば断ち斬れる。銀の剣はカイルの予想通り繊維を軽々と切り落とす。切り落とされた繊維は次々に灰と化し風に舞って消えていく。

 C96の銀の銃弾には成せなかっただろう。神の導きに感謝する。


「血に汚れし闇の者、彼の大地に踏み入れ、彼の大地を汚す者よ」


 カイルは視線の先にいるマデリーンを睨みつけ文言を垂れ流す。


「神の御名によりて選ばれし光、哀れな愚者に正義の鉄槌を下さん」


 近づくカイル。銀の光が繊維を断ち斬っていく。マデリーンはここに来て圧倒的な恐怖を感じていた。この男にこそ自分は成す術がない。自分が簡単に人間を屠ってみせるように、このジャンゴは我々吸血鬼をいとも簡単に屠ろうとしている。


「闇に還りしその身に刻め・・!」


 振り下ろした銀の刃がマデリーンの体を縦に断ち切る。絶叫とともにマデリーンの体は灰と化し彼方へと飛んでいく。


「我らこそジャンゴ、悪鬼を葬る光・・・・・・・・・なんか違った気がするなぁ」




 ジャコモを止めるのに要した弾丸、計三十五発。ジャコモを殺すのに要した弾丸、計一発。

 マデリーンを殺した後『暁』相手に躍起になっているジャコモを殺すのはとても簡単だった。あまりにも呆気なかった。


「最初から撃ち殺してくれませんかねのろま少佐」


「仕方ないだろ。俺だってできないことも知らないこともたくさんある。あんただってそうだ。吸血鬼を舐めてかかったご感想はどうだい?」


「言ってろ。てめえの銀の銃弾さえありゃ俺だって楽勝だ。寄越せ。今度から俺が相手する」


「馬鹿を言うな。鉛玉の何倍の値段すると思ってるんだ?」


「ジャンゴが『暁』に入ったらさらに面倒なことになりそうだな」


 かしましい二人にフランクは悪態をつく。


「そうはならないから安心してくれフランク。俺はジャンゴとしての務めだけ果たせればそれでいい。もうここで解散しても?」


「いいや。もう少し付き合ってもらうぜ」


「ここから先は料金が発生するぞ?」


「ここから先に銀山があると言ってもか?」


 カイルは口元を緩ませたフランクを見て頷いた。


「なるほどねぇ。じゃあもう少しおたくらに付き合うとしますか」




 ストンエイジ。フローディアに住まう先住民の種族の一つ。もはや人間のそれとはかけ離れた姿ではあるが彼らは二本足で歩き、意思の疎通を言語によって行い、小さなコミュニティを持っている。先住民と化け物を見分けるときの大きな違いがそれだ。岩のような硬質の鱗が平均三メートルを超える巨体にちりばめられ、体格から想像できる通り小さな岩をその拳で砕くほどの力を持っている。

 性格は比較的温厚で、種族の違う者に対しても攻撃の意思が見られない限りは見境なく襲ってはこない。彼らの寿命が長く主に鉱物を主食にしているのが主な理由だろう。生存競争に関わりもしないのだ。


 山脈の奥深くにストンエイジの集落はある。彼らの見かけによらず岩を削ってできた住居はフローディアに点在する人間の町と比べても良くできた作りだった。繊細な装飾によるあしらいはまさに一つの美術品のようでもある。


『暁』とカイルの一行は殺伐とした銀山に突如現れた建築物の数々に思わず息を飲んだ。まるで文明を持たない人間がいきなり文明社会に放り投げられたようだった。

 通りに立つ一人のストンエイジが彼らを岩の鱗にある深緑の瞳で見つめている。アレンは緊張で足がすくみかけたが何もしてこないのを見計らうと町の奥へと消えていった。


 フランクは一枚の紙を片手にストンエイジに声をかけている。イヴからもらったストンエイジが使う簡単な言語のカンペ。イントネーションすら不明だったがストンエイジは表情を崩すことなく静かにこの町で一番大きな建物を指さした。

 ストンエイジは顔にも生える岩の鱗のために表情が作られず、いつも全員がものものしい表情で暮らしているとイヴが言っていた。だからこそ交渉の際に表情を持つ者は酷く困惑するという。成立か不成立か。そのカギを握っているのはいつも浮かべられる表情にある。


 町の一番奥にそびえる曲線の映える立派な建造物。宮殿と呼ぶには大げさで屋敷と呼ぶには物足りない。おそらくはここが酋長の家なのだろう。

 扉の無い大きな入り口に足を踏み入れると、狭い通路にイーリアスの眼のように自ら光を放つ様々な鉱石が燭台の上のろうそくのように機能していた。

 その幻想的で愛らしい光景にアーニャは目を輝かせる。


「夢の中の世界みたい!」


 無骨な外見に繊細な中身。アーニャはすぐにストンエイジを気に入ったようだった。



 奥に入ると人間が三人は座れそうな椅子が一つ目に入った。豪華絢爛とはまた別の神聖な部屋を思わせる荘厳な空間。冷たい温度を孕む岩は丁寧に磨かれ、天井から漏れる天国への階段のような陽の光によって輝いている。一行がこの部屋には誰もいないのかと思っていると部屋の中央から少しずれたところにあるものものしい岩の彫刻が動き出した。ヴィジェは「むお」と少し驚いていたようだった。

 酋長は紳士的な立ち姿で『暁』を出迎えいた。他の住民に比べて肉付きは少なかったが背の大きさは変わらずフランクたちは視界を上にやる。酋長の頭頂部には鱗が重なってできたようなとさかがあり、酋長の生きてきた年月と彼の持つ権力を表している様だった。


「悪いが使える言語は少ない。単刀直入に言うぞ」


 フランクは彼が理解するはずもない英語でそう言うとカンペを読み始める。

 酋長にもそれがどういうことか分かっていたようだった。


『銀山から採れる銀の流通を我々に任せてほしい』


 喋るには濁音の多い言語。言ったことが相手に伝わるかどうかフランクは酋長の顔を確認してもう一度話す。


『言葉は話せても理解ができない。首を縦に振れば「はい」横に振れば「いいえ」だ。もう一度言うぞ』


 酋長は首を横に振る。フランクは困惑した。交渉の余地すらないとでもいうのだろうか。そんなフランクを余所に酋長はおもむろに低い地鳴りのような声をあげる。威嚇というわけでも無いらしい。

 するとフランクたちの背後から一人のストンエイジがやってくる。

 他のストンエイジよりも鱗がびっしりと全体についていた。ストンエイジ一人一人を顔で判別するのは困難だ。この先誰かを限定して呼ぶときにはうろこの数を数えなくてはならないのか。フランクは心の中でため息をついた。


「銀の渡す相手、もう決まってる」


 声質が地鳴りのようで聞き取りにくくはあるが確かに英語を話している。驚きを隠せないアレンたちとは反対にフランクは悠々とした態度で彼に声をかけた。


「なるほどね。あんたが仲介人ってことか」


「そいつが来た。だから銀を流した。代わりに私たちに技術を与えてくれた」


「それでストンエイジがここまで発展したってことか。大した野郎だな」


 フランクはここまで言葉が不慣れなストンエイジに対して違和感一つなく会話をしてみせたがどこか話が噛みあわないような感触を覚えていた。なんとなく辻褄があっていない。切り出すように彼らに一つの質問をする。


「そいつが来たのは今からどれくらい前になる?」


「八十六年と四か月と十六日前。最近の話だ」


 なんて大昔の話だ。先住民との会話で見られる辻褄の合わないやり取り。フランクはこれが初めてではなかった。


「それで・・銀は今?」


「やつが来ない。流せない。掘れるだけ掘って・・もう何も出てこない」


 やっぱり。フランクは腰に手を当てて考える。時間感覚の差というやつだ。相手の人間はまだ生きていると思っている。


「なぁ、少し残念な話をしてもいいか?」


 ストンエイジは頷く。『はい』


「俺たちの寿命ってのはあんたらほど長くはないんだ。長く生きれたところで七十、八十ってとこだ。このフローディアじゃ六十まで生きたら長寿と言ってやってもいい。そいつがここに来た時にはおそらく人生の半分を謳歌した最中だろう。つまり・・言いにくいんだが、そいつはもう死んでる」


 ストンエイジはしばらく硬直してかぶりをふった。『いいえ』


「意地悪で言ってるわけじゃない。本当の話だ」


「でも、そしたら、やつは俺たちを守ってくれた。化け物から俺たちを。もう守ってくれるやつはいないってことか?」


 なるほど。大昔にもここいらの銀やこいつらの所有する鉱石を狙ってハモンドの一味や俺たちのような輩、果ては化け物が襲撃してきたというのか。銀を流通させた人間は立派にもそいつらからストンエイジを守ってやったらしい。まさに英雄じゃないか。


「ああ悪いが・・」


「生きてるぜ」


 どう言葉を掛けていいか悩んでいたフランクにカイルが言葉をかぶせる。カイルは何か確信を掴んでいたようでもあった。


「そいつはまだここで生きてる」


 そう言ってカイルは鞘に納められた銀の剣をストンエイジの目の前にかざした。


「俺の名前を知ってるか?」


 目を丸くしながらストンエイジが小刻みに震えだす。


「・・ジャンゴ・・・お前・・ジャンゴか・・?」


「ああ。紛れもなくジャンゴだ。同じ人間じゃないが同じジャンゴさ」


 困惑するフランクたちをよそに駆けだした酋長は剣を凝視すると低い声で叫んだ。


『ジャンゴが帰って来た!!』





「一体どういうことだ?」


 酒を煽りながら不満そうにアレンがぼやく。


「俺にも分からんね。ただなんとなくピンときた。先代がこいつらになんかしてやったんだなって」


「風来坊は一族の宿命か」フランクは薄紅色の鉱石の膜でできたような透明感のあるグラスに酒を注いで笑う。


「それが仕事の大半だからな。各地を回らなきゃ化け物だって倒せない」


「それもそうか」


『暁』とカイルはストンエイジのもてなしを受けた。だが想像よりもずっと静かなものだった。酒が並べられ食事が提供され音楽と踊りと・・そういうものとはかけ離れたもてなし。ストンエイジにとっては重要らしき酋長の家の奥の間で静かに酒を飲むだけ。この酒だって自前だ。ストンエイジには飲み食いという概念がないのだから。なんにせよ自分たちは歓迎を受け祀り上げられている。そのことに変わりはない。

 アーニャとヴィジェは色とりどりの小さな鉱石をストンエイジから受け取り、天井から静かに垂れる一本の陽の光にあててその輝きを楽しんでいた。綺麗なものに心奪われる二人の女の子は普段の彼女たちに比べたらまるで別人のようでもあった。


「銀山もお前のおかげでどうにかなりそうだ」


「先代のおかげと言った方が正しいね。だがしっかり報酬はもらおう。銀は定期的に無償でウエストリバーサイドのガンスミスに渡してくれ。それで心置きなく銀の銃弾が使える。それから銀で得た利益の二割をもらえればそれでいい」


「でかくでやがってのろま少佐」


「もとはと言えばジャンゴのルートだ。親切もいいところだと思うがね」


「決まりだ」フランクは酒を喉の奥へ押し込んで笑った。「ジャンゴがいなけりゃ吸血鬼も倒せなかったし、すでに死んでる人間を探さなきゃならなかった」


 アレンはまだ何かを言いたかったがそんな空気ではなかった。確かにこれ以上余計な無駄足は挟みたくない。フランクが解決したと言ったのだから解決したのだ。

 俺はこいつと違っていくらか大人なのだ。時には引き際というものを理解する。


「・・ジャンゴ!!」


 流れていた一件落着の空気を裂いて部屋の入り口でストンエイジが声をあげる。表情には表れていなかったがどことなく高くなった声質を聞いて不安を覚えたカイルは立ち上がった。


「何があった?」


「襲撃・・襲撃だ・・!化け物が現れた!!」

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