3#2匹のキョンを縁結びした風船

 「だぁかぁらぁーーー!!この風船にぃーーあんたが息を吹き込んで欲しいの!!」


 「僕が息を吹き込むと?」


 「この風船があんたの吐息でどんどん大きく膨らむわよ。」


 「風船がどんどん大きくなると?」


 「「ばぁん!!」とでっかい音をたてて、風船がパンクしちゃう!!」


 「ひやっ!!」


 雄キョンは思わず耳を塞いだ。


 「だぁかぁらぁーーー!!あたいがあんたが風船を膨らますのを、フォローしたいのよ。」


 雌のキョンは興奮している雄のキョンのカイムの目を見るとニコッと微笑んだ。


 「じゃあ、息を吸って!吸って!吸って!吸って!風船に息を吹き込んでぇーーー!!」


 雄のキョンのカイムは、口にくわえている緑色の風船に向かって肺に力を入れて、頬をと鼻の孔をパンパンにはらませて・・・



 ぷぅ~~~~~~~~~!!



 「ふぉっ?」


 雄キョンのカイムは、仰天した。


 自らの吐息で直径15センチ位から、倍の30センチに風船は膨らんだのだ。


 「じゃあ、今度はわたしが続きを膨らますわ。」


 雌キョンは、口移しに雄キョンに風船を渡すと、雌キョンは深く息を吸い込み、


 ぷぅ~~~~~~~~!!


 雌キョンの吐息で更に緑色の風船は膨らみ、まるで洋梨のようにパンパンに膨らんだ。


 「ひゃっ!後一息でパンクしちゃう位!!」


 雌キョンは、そう言うと偶蹄で吹き口を器用に結ぶと紐も一緒に結び、緑色の風船の紐を雄キョンのカイムの角にきゅっと結んだ。


 「そうそう、聞いてなかった。貴方の名前はなあに?私は『ドゥス』って言うの。」


 「お、俺は『カイム』・・・」


 「カイムさん!!好きよォォォォォ!!」


 雌キョンのドゥスは、雄キョンのカイムに突然抱き締めてきた。


 「おっと?!」



 どさーっ!!



 2匹のキョンはその場で倒れこんで、雌キョンのドゥスが木から取ってきた風船が反動で舞い上がった。


 「よっ。と。」


 雌キョンは、その舞い上がった風船の一つを口で紐をキャッチするとまた偶蹄で風船の吹き口の結び目をほどいては雄キョンのカイムの口に宛がってぷぅ~!ぷぅ~!と息を入れて膨らませさせ、今度は雌キョンのドゥスが口で息を入れて、ぷぅ~!ぷぅ~!と膨らまして吹き口を偶蹄で結んで紐を付け、また雄キョンのカイムの角に付け、また雌キョンのドゥスが転がってる風船の吹き口をほどき・・・を何度も繰り返し、回りに風船が無くなったら、また木から直径15センチの風船を取ってきて・・・


 「出来た!!」


 「はにゃ?」


 気が付くと、雄キョンのカイムの両方の角には、パンパンに膨らんだカラフルな風船の束が結ばれていた。


 「わたしと貴方の『永遠の愛』の結晶よ。わたしの吐息と貴方の吐息・・・

 そして私達キョンと木に引っ掛かった風船との同様の『存在』・・・」


 雌キョンのドゥスはうっとりと雄キョンのカイムを見詰めると、いきなり口を近付けてきて思いっきりぶちゅっ!とキスをしてきた。


 「む、むぎゅっ!!こ、今度は何?!」


 「結婚しよう!!つがいになろう!!だって、この風船は人間の結婚式場から来たんでしょ?」


 「な、何言ってるの?!」


 「だから!!ここで!!私と貴方の吐息が一つになって・・・今度は心も身体も一つになって・・・!!」


 雄キョンのカイムは赤面して成すがままに、雌キョンのドゥスに押し倒され・・・


 雄キョンのカイムは雌キョンの成すがままに・・・


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


 「へぇ・・・へぇ・・・」


 雄キョンのカイムは、まるで空気の抜けた鹿の空気ビニール人形のようにぺたんとヘタって倒れこんでしまった。


 「ありがと。これで、同じね。貴方の角に結んだ風船の束には、『わたし』と『貴方』の吐息で膨らんで、そしてわたしのお腹の中には、『わたし』と『貴方』の愛の結晶がこれから膨らむのよ。

 さあて、どっちが先にパンクしちゃうかしら?」


 雌キョンのドゥスは、満面の笑みを浮かべて、まだ放心状態の雄キョンのカイムに優しくキスをして、ぴょーん!ぴょーん!と駆け回って行ってしまった。


 「・・・・・・何だったんだ?」


 顔を赤らめた雄キョンのカイムは、鹿の空気ビニール人形に空気が入るようにムックりと起き上がると、角に結びつけられた頭上の微風に煽られてポンポンと揺れる風船の束にホッコリと見とれていた。


 「ドゥスちゃんか・・・何時また逢えるんだろうな。」


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