第11話 噂(1)

 直前に学生の目が赤く光っているのを見たからだろうか。昼間の女子学生達の話がどうも頭から離れない。

『礼斗さーん、着信ですよー』

ただ、長いリンクが送られてくるというだけの話だった。何故これほどまでに頭から離れないのだろうか。……そういえば、ゆりあさんの目も度々赤く光っていた気がする。

『礼斗さん! 着信ですよ! 聞こえてないんですか!』

「え、あ……応答して」

『了解ですっ! 全く、何分呼んでると思ってるんですか』

ピコは怒った様子で、そう言ってインターネット通話の画面を表示させた。

「悪い」

『私より、相手に謝ってください』

『やっと出たか。いつになったら出るのかって話してた』

「悪いな、ちょっと考え事してて、通知気づかなかった」

『考え事? 何かあったのか? 俺でよければ相談乗るぜ?』

「助かる。大したことじゃないんだが、気になって仕方なくてな」

俺は、昼間小耳に挟んだ女子学生達の話を伝えた。

『それ、俺も似たような話聞いたことある。ってか、この間ギルドの掲示板に書いてあったぞ。読んでないのか?』

「そうだったか? 読み流したのかも」

『なるほどな。なんか、SNSだけじゃなくゲーム内でも流行ってるらしくて、メンバー曰く、模倣犯だろうって話なんだけど。でも、俺別のやつから、リンククリックしたら乗っ取りにあったアカウントがあるらしいって聞いたんだよなぁ』

「乗っ取り? ゲームアカウントのか?」

『ああ。でも、なんか、そいつがやってたSNSとかも被害に遭ってるっぽくて、結構危ないらしい』

「そうなのか」

 ゲームにログインしながら話を続ける。パボ・レアルは、現行のVR用ヘッドセットと相性がよく、簡単な設定でゲーム内の雰囲気を壊さずにゲームを楽しむことができる。おかげで、以前は少し不便だった通話をしながらの操作——ゲームをプレイするには支障はなかったが——もスムーズに行えるようになり、かなり快適になった。強いて問題点をあげるとするなら、AIを切り忘れると、VR映像を視界認識するため、危ないだ何だとうるさいことぐらいである。それはそれで楽しいのだが。

『じゃあ、今日はいつもの場所でいいか?』

「ああ。あと、あそこ行きたい」

『限定マップ?』

「ああ。あそこのクエストいくつかまだ残ってんだよ……」

『じゃあ、そうすっか』

パボ・レアルのVRとの相性の良さは雰囲気を壊さないことだけではない。現行のアイチップ以上に視線認識の精度が高く、ハンズフリーでVRを楽しむことができる。いくらかコツは必要なのだが、慣れてしまえば問題ない。もとより、遠距離型のキャラクターを使っているぶん、前衛職よりも幾分か操作が容易ではあるのだが。

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