第3話 セットアップ(2)

 見慣れた通知が現れる。

『ヘッドセットの使用をお勧めします』

ピコに促され、充電中だったヘッドセットを接続する。ネット通話に応答すると、ゲーム仲間の声が聞こえてきた。

『おー! やっと出た。もう今日は出ないんじゃないかって言ってたんだよ』

「今まで、新型アイチップのセットアップしてたんだよ。今ようやくバックアップのインストール終わったとこ」

『実際どうなの?』

「まだなんとも。ああ、でもネットワーク系の初期登録が視界認識使えるようになってる」

『まじかよ。じゃあ、視界認識の精度高いんじゃないか?』

「多分。まだそこまで試してないからなんともいえないけど」

『でも、問題なく接続できてんなら、いいな。結構手間だもんな、あれ』

「ああ」

『じゃあ、今日はまだログインできない感じ?』

「そうだな、もうちょっとこれに慣れてからじゃないと」

『おっけー。なら、今日は軽く狩に行くぐらいにしとこ。またログインした時は、クエストいこうぜ』

「了解。じゃあ、今日はこの辺で落ちるな」

『ああ、またな』

 俺は通話を切ると、AIを表示させた。慣れるまでは、彼女の案内があった方が何かと便利だからだ。チュートリアルを見てもどうせ覚えられないなら、彼女と話しながら覚えた方が早い。

『あ、お話終わったんですねー! お呼び出しありがとうございますっ! 礼斗あやとさんが通話中に先代アイチップのAIから呼び方などなどの設定データが引き継がれております! もちろん、ウェブ閲覧履歴、アプリケーションのダウンロードログ、稼働率その他徐々を、AIとしての行動に反映させていきます』

「ありがとう」

『どういたしまして!』

 相変わらずの明るい笑顔で彼女は答えた。

『そういえば、新着メールがありますよ!』

「開いて」

『了解しましたー!』

そのメールに記されて居たのは、モニターレポート送信用専用サイトのアドレスとアカウントとパスワードだった。俺は、サイトにアクセスすると入力エリアを選択する。

「これ、手入力じゃないとだめか」

『だめですねー。初めて使うアカウントはパスワードの手動入力が必須です』

「そうか……キーボードを使用」

『了解です! 登録キーボードと接続します。キーボードの電源を入れてください』

先ほど接続を切った時、電源を切ったのをすっかり忘れていた。俺は机の上に置居たままのキーボードを裏返し電源を入れる。アイチップとの接続を示すランプが青色に変わる。

『接続完了しました!』

「ありがとう」

メール画面を左側に出しながら、ブラウザを視界の右側に移動させる。透明度が低いウィンドウが視界を埋めるとやはり圧迫感がすごい。程よい大きさにサイズを調整すると、入力を始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る