◇7「少年作家」

 学校を終えて家に帰り、パソコンのスイッチを入れる。

 ここんとこ取材ばかりしていたから、今日は少し書いてみようかな。

 商店街の事も気になったけど、フィオの言う通りならあの黒い獣も大それた事はしないはずだし、僕が行っても何にもならない。

 いや、違う。本当はフィオの言葉が気になっているんだ。

 フィオに男として失望されたような、というのは言い過ぎかもしれない。元々僕に男らしさなんて期待するはずはない。

 おばあさんの為に不良共と対立したタカシ。

 神王に立ち向かっていったミチル。

 僕は彼らには敵わないのではないか。

 ミチルは結局足を骨折して病院に逆戻りした。単純骨折だからすぐに退院できるそうだけど、しばらくは安静だから商店街に現れる事もない。

 フィオに近づく心配がなくて安心してしまう自分が嫌になって、そんな気持ちではフィオにあわせる顔がなくて……、というのが正しい理由なんだろう。

 だから何かに没頭していたくて、僕は逃げるようにパソコンに向かっていた。

 僕がそんな事をしている間に、裏ではとんでもない策略が巡らされていた事を、この時はまだ知らなかった。

 本を手に入れた童顔の小さな御曹司は、僕達の事など忘れて私欲の為に動き出していると思っていた。もう事態は僕らの手を離れて、関係ない所で進んでいくのではないかと思っていた。

 でも……、そんな事はなかった。

 実際リオンは神王と本を手に入れ、アメリカでその力を存分に揮(ふる)い、力を示すつもりだったんだ。

 それは私利私欲と言うより、父親の力になりたかったからだ。彼の事を弁護するわけではないけれど、彼も父親に認めてもらいたい一心で頑張っていただけなんだろう。

 その為、リオンは神王の力を試すのを兼ねて国内の反対勢力を叩き潰していた。自分の不在の間拠点を守る為の準備に忙しかったようだ。

 だけど本を調べている内に、彼は見つけてしまった。秘密に辿り着いてしまった。

 だから考えを変えて、日本でもう一仕事する必要ができた。

 そして僕がそれを知る事になる経緯には、辛い現実があった。

 そう、裏で画策していた者の中に、僕の知っている人が居たからなんだ。

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