第8話 我ながら何やってんだろうって思うけれども、こういうシチュエーションに結構憧れてたりもしたんだよね、まあ

まるでマンガだ、という言い回しは結構古い時代のものなんだろうと思う。お父さんがよく言ってるから。

じゃあ、最新の言い回しではなんと言えばいいんだろう。

まるで異世界転生だ、とか?


「ふっ、ふっ」


自慢ではないけれども、わたしは走るのは、まあ、得意な方だ。

彼はどうだろうか。


「ぜっ、ぜっ、ふは」


息遣いからするともう少しで音をあげそうな感じだ。

ところが意外にも彼は難コースへ突入する。


「あ、階段 → 直線30m廊下ナチュラル傾斜つき → 直角コーナー!?」


どうやら走力では敵わないと判断し、障害コースへ誘い込むようだ。

因みに、結構なスピードで校内を走るわたしたち2人に対し、これまた意外なことに大して気にかける生徒もいない。

いや。単にわたしが気にかけられてない、って結論付けたいだけかも


「フットワーク、いいな」


彼はちょこまかとしたコース取りをし、直線で詰められた距離をリセットするためコーナーや小刻みなサイドステップを要する群衆の中を選んで走る。そして、お決まりのコースへと進んで行く。


「あー。やっぱりそこか」


屋上への階段に差し掛かるのが見えた。


「きっと都合よく屋上への鍵も開いてるんだろうな」


ガチャッ! と金属製のドアを開けた。

わたしも階段ダッシュの要領で一気に距離を詰め、彼が開けたドアが閉まる前に屋上に走り出た。


「眩し!」


彼の姿を視認する前に、太陽の光にわたしは感じ入った。

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