第2話 今日の日を生きるって、それほどかっこいいことでもないから、とにかく毎日を積み重ねてるよ

「かわいい」


というあの一言が耳にこびりついて離れない。わたしはあの子の名前を訊いた。


「セエト」


 無表情であの子は言った。初めて聞く響きの名前だったので、


「どんな字書くの?」


と、興味本位で訊いた。


「カタカナ」


ほんとかな、と一瞬思ったけれども、カタカナの方がしっくりくる気がしたのでそのまま受け流しておいた。


「ところで、キミは?」

「ミスミ」

「ふうん。名前も、かわいい」


 わたしはあの子のとりこにでもなりそうな、不思議な感覚になった。


「ありがとう」

「何が?」

「かわいい、って言ってくれて」

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