水色の空なんてなかった。
佐藤伊織
第1話 再会
ベットの上で、雲を見続けていたら日が暮れていた。
視線をずらすと、一人の女の子が座っている。
その子は、40年前に、公園で一緒に遊んだことがある。
「また、遊びにきたよ」
僕は嬉しかった。誰かが僕を訊ねてきてくれたことに。遠い記憶を辿って。
「君は、今、何をしているの?」
女の子は、じっと前を見ている。
「君は、どうして、昔のままなの?」
女の子の視線は、僕の身体から出ている無数のチューブに注がれていた。
「もうすぐ、僕は意識がなくなるみたいなんだ。」
「そう。」
女の子は手をのばし喉のチューブに触った。
「長かったね。」
「うん、長かった。」
「最後に、言いたかった事、ある?」
「…うん。」
「なあに?」
「あの、ありがとう。40年前、君と遊べて楽しかった。」
「うん。私も」
「お互い、生まれ変わる事があったら、また会いたいね。」
女の子は頬笑んだ。
僕はちょっとだけ長い眠りについた。
僕は本当に40年前のあの日、あの子に会っていたのだろうか。
彼女は一体、誰なのだろう。
水色の空なんてなかった。 佐藤伊織 @Tofu
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