第33話 マミ
マミはハニースマイル号の操縦モードを半自動からマニュアルに切り替える。
おお! 全部自分で操縦しようってんだな。
普通のパイロットは半自動で操縦するのが普通だ。マニュアルで操縦するとなると、把握すべき情報が多過ぎて、肝心の外敵が
しかし、完璧に操った場合はマニュアルの方がパフォーマンスが高い。ただ、相当熟練しなければ、半自動モードにパフォーマンスが劣るけどな。
マミは巧みにハニースマイル号を操作しながら、うまく黄金の船が放つレーザーの射線を逸らし、接近する機会を伺う。
黄金の船から来るレーザーは一定間隔で発射されるようだな。連射性能より、威力をあげているってことか。
黄金の船のレーザーが途切れた瞬間、ハニースマイル号は加速し、黄金の船ににじり寄っていく。
次にレーザーが来る前にハニースマイル号は減速し、レーザーに備える。
こんな感じのことを数度繰り返すと、黄金の船とハニースマイル号の距離が迫ってくる。
どうして距離を詰めるのか?
それは……
――ロックオンの為だ。
ミサイルを正確に黄金の船の動力部に当てるには、奴との距離を詰めてロックオンを行う必要がある。
既にハニースマイル号は黄金の船にロックオンできる距離まで来ているぜえ!
マミは黄金の船の動力部を見極めると、ロックオンを実行する!
オウケエイ! 言うだけのことはあるぜ! 素晴らしい腕だぞ。
俺はマミの座る操縦席に後ろから掴んでいた手を離し、彼女へ拍手を送る。
一度ロックオンしてしまえば、距離が離れても問題ねえ。黄金の船のレーザーを躱し易い距離まで下がり、奴が陸地の上を通るまで追いかければいいだけだ。
「すげえぜ! マミ。なかなかの腕じゃあねえか!」
「健太郎! ここからよ! このままこの距離を保つわ」
「ヘーイ! そいつはご機嫌だな。やれるのか?」
「問題ないわ!」
この距離を保つメリットはもちろんあるぜ。リスクは高いが、撃墜した後の様子をつぶさに観察することが出来るし、俺が
マミが問題ないって言ってるんだ。ここは信じるぜ!
俺はマミの頭を撫でると、彼女の爬虫類の尻尾がピクンと揺れる。おおっと、彼女の集中を乱してしまったらいけねえ。
そんなつもりで彼女の頭を撫でたわけじゃねえんだけどな。
「健太郎! もっと撫でてくれてもいいのよ……」
俺からは彼女の後頭部しか見えねえが、きっとマミの顔は赤くなっている。お望みどおり、俺は操縦席へと少し身を乗り出し彼女の頭を撫でる。この位置だと彼女の胸の谷間もバッチリ見えるぜえ。
マミはいつものカウガール風のファッションで、上半身には黒の水着のようなブラしかつけてねえ。彼女が動くと大きな胸が谷間ごと揺れる。
「さあ、そろそろよ! 健太郎!」
「オウケエイ! 俺は格納庫に行くぜ!」
測定器を見ると、陸地が迫って来ている。俺は格納庫からモニターを通じて外の様子を伺うことにしよう。
俺はマミに背を向けコクピットを出ようとすると、扉の手前にラティアが心配そうな顔で立っているじゃあねえか。彼女のウサギ耳は頭についており、耳の様子からも彼女の気持ちが手に取る様に分かった。
「心配するな! ラティア。大丈夫だぜ。何しろ俺だからな!」
俺は軽い調子でラティアの頭を撫でると、彼女は気持ち良さそうに目を細めた後、首を縦に振る。
彼女はそのまま俺に抱きついてこようとしたが、時間がねえ。俺は彼女のお尻を軽く撫でると、手を上げようとする彼女にニヤリと笑いかけ格納庫へ向かう。
格納庫に入った俺は
俺はモニターを見つめながら高機能ゴーグルを装着する。未開地惑星の時にも使っていたが、高機能ゴーグルは赤外線、ソナー探知、データリンク機能など様々な機能を備えているご機嫌なゴーグルなんだ。
通信は
――おお! 黄金の船が拡大されモニターに映り込む。その瞬間、ミサイルが黄金の船にぶち当たる!
やったぜ! マミ!
っと! もう一発ミサイルが飛んでくるじゃねえか。これは……ハニースマイル号からじゃねえぞ! 俺達以外にも黄金の船を追っていた奴が居たってことか!
『マミ! 黄金の船の高度はどうだ?』
俺は通信機越しにマミへ問いかける。ここからだと計器類の確認は出来ねえからな。
『健太郎! 黄金の船の動力は破損したはずよ。どんどん高度を落としていってるわ』
『ヘーイ! よくやった! マミ! 俺は今から出るぜ!』
『分かったわ! 健太郎、気を付けてね!』
よおし! じゃあ行くぜ!
俺は
◇◇◇◇◇
派手なメタリックブルーの機体は、太陽の光に反射してギラギラと輝いている。悪趣味な機体だぜ……誰だよ……心当たりはあるが。
悪趣味な色をした
黄金の船は確実に落下して行っていて、このまま落ちると荒野の上に衝突しそうだな。
追い始めてすぐに、黄金の船は船体下面に残っていた姿勢制御バーニアをふかして逆噴射をしかけた。
このままじゃ墜落は免れないと考えて、せめて不時着しようってんだな。だが主動力が損傷してるから充分なパワーが出せずに、かなりの速度で荒野に墜落する。
それでも船体は原型を保っているから、液体生命体の奴は無事だろうな……
俺は
じゃあ、行きますか! 俺は首を回した後、黄金の船へと駆け出す。
俺が黄金の船へと向かっていると、俺に並びかける影……ピチピチの黒のレザースーツに身を固め、金髪をオールバックにした男……プリンスだ。
「よお。プリンス、何の用だ?」
俺は足を止めずにプリンスに問いかける。
「なあに、我に擬態した
確かに液体生命体はプリンスに擬態していたが、彼はどうやってこのことを知ったんだ?
あの場には俺達しかいなかったし、液体生命体は直ぐに黄金の船に入っていったんだ。
「プリンス、良くお前さんに擬態してるって分かったな」
「あの場所にはカメラを仕掛けていたのだよ」
プリンスが説明したことは、液体生命体に擬態したプリンスが俺達を訪ねて来た時に言っていたこととほとんど重複していた。
彼はこの惑星――オーシャンプラネットに別荘を持っており、あの大広間のことを知っていた。だから、あのくぼみに合う形をした物を探していたというわけだ。
ブレードレースに参加したのも、それが理由ってことらしい。
余りに液体生命体の言っていたこととプリンスの言うことが一致するから、二人の間には何かあるんだろうな……戦いが終わったら聞いてみるか。
「プリンス! 話は後だ。液体生命体を始末してからゆっくり聞かせてもらう!」
「ふむ……」
プリンスはニヤリと微笑むと、黄金の船を
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