第29話 最強タッグ結成

 次の日の朝、俺はマミと改めて海底にあるだろうお宝について彼女に確認を行う。昨日の海水浴で判明したことなんだが、彼女は泳げない。海の中へお宝探索に行くというのに、泳げないのはちょっとどころの問題じゃあねえ。

 未開地惑星の時みたいにどんな怪物が潜んでいるかわからないから、おいそれと彼女を連れて行くわけにはいかねえからな。

 

 お宝の探索は俺一人で行い、もしお宝をゲットした場合はマミに全て譲渡するってことで彼女と約束を交わした。

 

 急ぐ旅でもないから、俺は海底に望む装備の確認を行う。

 アクアバイザーにアクアスーツ……レーザー式44式マグナムに超振動ハンドアックス……水中用に穂先が射出できるタイプのもり。アクアバイザーは水中呼吸ができるようになるだけでなく、通信機能や赤外線を使った暗視装置までついているご機嫌な一品だんだぜ。

 アクアスーツは最大二千気圧まで耐えることができる海底に潜る時は必須のアイテムだ。

 

 おおっと、忘れちゃいけねえのが乗り物だな。乗り物はどうするか迷ったんだが、小型潜水艇でお宝付近まで行くことにした。速度が一番出るしなあ。やっぱ男ならスピードだろおってことでこれにしたんだ。

 俺が身一つで泳ぐ時のために、ジェットバーも小型潜水艇に積み込むことにする。ジェットバーがあれば、水中でも快適に進むことができるからなあ。こいつを両手で握ってスイッチを押すと、前へ進んでくれるんだぜえ。

 

 装備のチェックは面倒だが、ちゃんとしておかねえと故障したらかなわねえからな。男たるもの装備にはこだわりを持たねえとな!

 

 よし!準備完了だ。

 俺がみんなに準備が出来たと伝えに行こうと扉に手をかけた時――


――大音量の交響楽が外から鳴り響いてきたじゃねえか。


 いくらご機嫌な交響楽でもこの音量だとただの騒音だぜ。全く、楽しみ方ってのを分かってねえやつだ。

 しかし、そもそも観光惑星にもなれずに人の少ない惑星の、こんな孤島に訪ねて来るとはどんな奴だ?


 俺が眉を顰めながらログハウスの外に出ると、ようやく大音量の音楽が止まる。

 ログハウスの前には派手なメタリックブルーの小型飛行機グライダーが着陸していた。俺が出てきたのに気がついたからか、小型飛行機グライダーのハッチが開き、飛び降りる人影……


 小型飛行機グライダーから降りて来たのは……キチキチの黒のレザースーツを身にまとった、金髪をオールバックにしたナルシストそうな若い男だった。


「ヘーイ! プリンス。こんなとこまで何用だ?」


 若い男――プリンスは左腕にマネキンの脚を抱き抱え、マネキンに履かせた黒の太ももまであるソックス? タイツ? を右手で撫でている。

 相変わらずだな、こいつは……プリンスはマネキンの脚に太ももまでのタイツを履かせて撫でることが好きな変態だ。ナルシストな言動といい、気持ち悪い奴だが格闘能力だけは、見るべきところがある。


 ブレードレースの戦いは熱くなれたよなあ。


「健太郎君。この星に我の別荘があるのだよ」


 プリンスは俺へ鷹揚おうように応じるが、マネキンを撫でる手は止めることはなかった。


「ほう。それはそれは、お邪魔してるぜ。この星にな」


「健太郎君、ものは相談なのだが……」


 顎をクイッとあげて、気障に決めるプリンスは、相談とやらを俺に語りはじめる。


 プリンスはこの星に別荘を持っていて、この星に昔ある海賊が隠した財宝がある噂を聞きつけた。

 とある孤島に海賊達が拠点にしていた建物が残っているらしく、それを調べているうちにお宝の場所を突き止めたそうだ。


「……というわけなのだよ」


「で、俺にお宝を取ってきて欲しいっていうのか?」


 俺が鼻を鳴らしプリンスに問うと、彼は大げさにため息をついて芝居掛かった仕草で額に手を当てる。


「んー健太郎君、我の調べた財宝の座標は……」


 おいおい。プリンスが俺に伝えてきた座標は、俺たちがこれから行こうとしている座標と一致する。

 驚く俺の顔でプリンスは察したのか、フンと鼻で笑った後、俺に向き直る。


「健太郎君、どうやらあのブローチが示す先は、我の知っている財宝の在り処と一致するようだね」


「そうみたいだな。気分の悪いことに」


「どうだろう、健太郎君。君の財宝探索に付き合わせてもらえないかな? 報酬は要らないさ」


「……お宝は欲しく無いのか?」


「もし我がどうしても必要になるようなものならば、まずは君達の言い値で買うように交渉しよう……」


「応じなければ、無理やり奪うってことかよ」


 俺がニヤリと微笑むと、プリンスもニヤアと口の端をあげる。


 面白え、こいつはプライドが異常に高いからお宝探索中は俺たちに協力するだろう。

 お宝を俺たちがゲットしたとしても、奴の言う通りの行動をしてくる。そういう意味ではプリンスを信用することは出来るんだよな。


 ハハハ! 愉快な奴だぜ。分かりやすくていい。


「プリンス、一ついいか? お宝探索の目的は何だ?」


「知的好奇心を満たすためだよ。ずっと気になっていたからね。あの場所にさ」


「分かったぜ。ついてこいよ! 足手まといなら置いてくからな」


「全く……健太郎君。君こそ我に遅れるなよ」


 俺とプリンスは互いに握手を交わし、共にお宝探しに行くことになったのだった。


 プリンスが一緒に来ることをブラザー達に伝えたが、拒絶するよりむしろ賛成する雰囲気だった。

 とんな危険があるか分からないから、俺を一人で行かせたくなかったようだ。ブラザーはこれから俺にウーを連れて行くように言うつもりだったみたいだぜ。


 ヘーイ! 何言ってんだよ。子供じゃあるまいし、一人でお使いくらい余裕だぜ。


 俺とプリンスはブラザーに宇宙船ハニースマイル号を運転してもらい、お宝があるだろう座標に到着する。

 彼は潜水艇に乗り込んだ俺たちを射出し、孤島に戻っていった。


 さあ行くぜー。海底探索!


 潜水艇は三人乗りで二列シートになっている。前列が操縦席で、後列が二人がけの長めのソファーになってるんだぜ。

 俺は操縦席に、プリンスは後列に踏ん反り返って脚を組んでいる。マネキンはもちろん置いて来させたがな。


 潜水艇には事前に座標が登録してあり、自動操縦で進んでいる。万が一の時は手動に切り替えて俺が操縦するって寸法だ。

 潜水艇は順調に潜航していく。ええと、操縦席にある水深メーターを見ると早くも五百メートルの深さまで潜ったようだ。


「プリンス、あと十分ちょっとで到着するぞ。そろそろアクアバイザーを装着してくれ」


 俺はプリンスに告げると、操縦席脇に置いていたアクアバイザーをかぶる。アクアスーツは既に着ているからこのまま外に出ても問題ねえぜ。

 武器と道具も持った。あとは到着を待つのみだ!


 進むこと十分と少し……


「健太郎君。いよいよだね」


「ああ、そのようだな!」


 見えて来たぜ。水深およそ千メートルの海の底に、ギリシャ神殿のような石造りの神殿が見える。ここがお宝の在りかのようだぜ。

 潜水艇は神殿のそばの海底へ静かに着陸する。

 

 早く外へ出たいところだが、先にブラザー達へ到着成功を伝える。一応アクアバイザーには映像送信機能がついているから、今俺の見ている風景はブラザー達にも見えているんだけどな!

 水深千メートルはもちろん真っ暗闇の世界だが、暗視スコープ機能がアクアバイザーについているから視界良好ってやつだぜ。

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