第28話 ビーチでリゾート

 天気は快晴! 気温は泳ぐに丁度いい! よおし、海で泳ぐぜえ。

 俺達はパラソルとビーチベッド、ドリンクに氷を運びビーチサイドにご機嫌なパラダイスを設置する。ブラザーはパラソルのテーブルの脇にビーチチェアを置いて、そこに座って本を読むそうだ。

 こんないい天気でビーチサイドだってのに、ブラザーの恰好はいつもの英国風のスーツ姿……ちゃんと革靴まで履いているんだよ。ブラザー、もう少し雰囲気ってのを考えてくれたら嬉しいぜえ。

 しかし、男たるもの細かいことは気にしないもんだぜ。

 

 俺はひざ下まであるカーキ色の水着にイカしたサングラスを装着し、ビーチサンダルを履いて全員が到着するのを待つ。女性陣はまだ時間がかかっているようだからなあ。

 

 女性陣一番手はウーだった。スレンダーな体系に良く似合った白のスクール水着姿でやってきた彼女は、まずブラザーの姿を探していた。彼女はブラザーがいつもの英国風スーツ姿できめているのを見ると少しがっかりした様子で、ビーチチェアに腰かける。

 黒髪のポニーテールも少しがっかりした様子に見えてしまったぜ……ブラザーよ。一緒に泳いでやれよ。

 

 ラティアは水玉のビキニに同じ柄のボレロを腰に巻いた姿で俺に手を振りながら、こちらに駆けて来た。大きな麦わら帽子と同じ素材の厚底のサンダルも良く似合ってる。彼女を追う様にしてログハウスから出て来たマミも彼女らしい水着を着ている。

 虎柄のビキニにビーチサイドだというのにいつものテンガロンハット、靴は黒色のミュールを履いていた。お尻から生える尻尾のところは水着に穴を開けていて、尻尾が窮屈きゅうくつそうな様子はない。しっかし、マミが走ると胸が揺れて壮観だぜ!

 あんまり眺めているとまたラティアが不機嫌になるから、眺めるのもほどほどにしておくか……

 

「ブラザー。ウーと泳がねえのか?」


 俺は悲しそうな顔をしているウーを放っておけず、静かに読書をするブラザーに聞いてみた。

 

「ん。ウー君は私と泳ぎたいのかね?」


 いや、見ればすぐ分かるだろ! とブラザーに突っ込んでも無駄か……彼はそんなことを気にする奴じゃあねえ。

 

「ウーに聞いてみてくれよ。俺達は先に泳ぎに行くぜ」


「うむ。この後聞いてみよう」


 俺はブラザーとウーに手を振ると、ウーが俺に軽く会釈してから、ブラザーの耳元で何やら囁いている。

 

「マミ、ラティア。泳ぎに行こうぜ」


 俺は振り返ると二人を誘い、波打ち際まで走る。太陽の光が波に反射してキラキラ輝いているぜえ。

 ヘーイ! 俺は二人の手を引き海へと入っていく。

 

 が、マミの様子がおかしい。腰くらいまでの深さまで進むと、手を引っ張っても動こうとしない。

 

「どうした? マミ?」


 トイレにでも行きたいのだろうか? マミは固まったままで、表情も強張っているじゃあねえか。

 

「さ、先に行ってくれていいわよ……」


「泳がないのか?」


 俺は不思議に思い、マミに聞いてみるが、彼女はかたくなに首を振る。

 

「……健太郎……マミは泳げないんじゃないでしょうか……」


 ラティアがマミの様子を見やり、ボソリと呟く。

 明日から海底にあるお宝を探索するというのに、泳げないってことはねえだろう? しかし、マミの様子を見ていると……ラティアの言うことも正しいかもしれないぞ……

 

「マ、マミ……泳げないのか?」


「……悪い?」


 マミは顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。

 ヘーイ! 泳げないとなると海底のお宝探索はできねえぜ。

 

「いいや、可愛いレディにはできないってこともチャームポイントだぜ」


「ほんと! そうなの……泳げないのよ……」


「マミが見つけたお宝だけど、お前さんも後方支援でもいいか?」


「ごめんなさい……言い出せなくて……」


「なあに! いいってことよ。見つけたお宝はお前さんのもんだからな! 心配するな横取りはしねえさ」


「健太郎が探しに行くのに、それはちょっと……」


「俺もブラザーもお宝を見つける行程が楽しいんだ。お宝が欲しいってわけじゃねえよ。一緒に行くって言った時だって、分け前を欲しいって言わなかっただろ?」


「たしかに……」


 マミは納得したように頷くと、俺から手を離す。

 不意に彼女は俺に肉迫したかと思うと、俺の口にキスをして俺に背を向ける。

 

「仕方ないけど、その女と楽しんできなさい。今のキスで我慢するから!」


 顔はこちらから見えないが、尻尾がピンと張って彼女が恥ずかしがっているんだろうなと俺には予想がつく。

 マミが俺にキスをした時に、俺の手をギュっと握りしめたラティアも意外そうにマミを見ていた。

 

「ありがとう! マミ。遊んでくるぜ!」


 俺とラティアはマミに手を振ると、さらに奥へと進む。

 足が着かないところまで来ると、ゆっくりと泳いだり、海中に潜ってどんな生き物がいるか観察したりして海を満喫する。

 浜辺付近に関して言えば、地球の生物とあまり変わったところは見えなかったなあ。これが地球の南国ビーチだと言われても納得してしまうほどだ。

 色とりどりの魚はもちろんいたけど、鯖のような地味な色の魚も多かったな。

 

 しばらく泳いでいると、水着に着替えたブラザーと白いスクール水着がまぶしいウーがものすごいスピードで泳いできた! ウーの手には手にもりが……

 ブラザーは触手型イソギニア異星人だけに、海は大の得意なんだぜ。人間とは比べ物にならないほどの速度で泳げるし、潜水時間も人間の十倍はある!

 

「ヘーイ! ブラザー。ウーがもりを持ってるけど魚を捕まえるのか?」


「ウー君が魚を捕まえて遊びたいと言うのでね。ここまで泳いできたというわけだよ」


「ブラザーはもりを持ってねえじゃねえか」


「ああ。私は手で捕まえるとも」


 ブラザーは右手の擬態をとき、色鮮やかな青い触手を俺に見える。触手が目に入ったウーの顔が恍惚こうこつとしたものに変わる……切れ長の目がトロンとなる様は煽情的だぜ。


「……教授。その触手で捕まえるんですか?」


 ラティアが若干顔が引きつりながらもブラザーに尋ねると、彼は触手を海中に突っ込むと、すぐに数匹の魚が触手に絡まって出て来た。

 

「……とまあこんなところだね」


「……すごいです!」


 ラティアは感動したように感嘆の声を漏らす。た、確かにとんでもねえが……あまり見ていて気持ちのいいもんじゃねえな。

 ブラザー達が魚を捕らえて遊ぶのを見ていると、俺とラティアも同じ事をしたくなってきたので、一度ビーチサイドに戻り、もりとアクアラングを装着して俺達も海に潜ることにした。

 こういう時にアクアラングは便利だ。シュノーケルと違って息継ぎはいらないし、古くから愛用されていたアクアボンベと違って酸素を背負う必要もない。

 口にアクアラングを咥えて、普通に呼吸するだけだからな。便利なもんだぜ。

 

 ラティアは初めて使うアクアラングに戸惑った様子だったけど、使い始めるとすぐにこいつの便利さに感動していたぜ。アクアラングはシュノーケルのような咥える口が付いていて、その左右にシュノーケルのような筒がついている。

 先端から海水を吸い込むと、海水が空気に変換されて筒を通るって仕組みだ。

 

 昼になる頃には魚もそれなりに採れたから、マミを余り待たせるのもあれだと思い、俺達は一旦ビーチサイドに戻る。

 昼からはビーチサイドでマミとラティアと一緒にビーチボールやフリスビーで遊んだんだぜ。

 

 夜は海で採れた魚とブラザーとウーが取って来たタコやイカ……貝類も一緒にバーベキューにして楽しんだ。いやあ。充実した一日だったね!

 明日からはいよいよ宝探しだぜえ!

 

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