第27話 水の惑星ブルーオーシャン

 ブラザーに宇宙座標を伝えると彼はすぐ該当惑星の資料を俺によこしてくれた。過去にリゾート惑星として開発しようとした惑星みたいで、人間が快適に生存できる環境に改造されているみたいだ。

 宇宙服が必要ないのはありがてえな。

 

 惑星の名前はブルーオーシャン。リゾート惑星っぽい名前だが、開発の手はほとんど入っていないようだぜ。惑星の環境構築テラフォーミングだって馬鹿にならない金がかかるのにもったいないことだよ。

 きっと惑星の環境構築テラフォーミングをしたはいいが、思ったより旅行客が見込めなかったんだろうなあ。移住者も余りでなかったに違いない。

 

「ブラザー。ブルーオーシャンだったか……サイズは地球くらいだな」


 俺は大きなスクリーンにブルーオーシャンの様子を投影してくれているブラザーに聞いてみる。惑星サイズが画面の右下に記載されているが、直径が地球とほとんど変わらない。

 

「うむ。この惑星は地球と重力が二パーセントしか変わらないのだよ。重力の心配をする必要はなさそうだね」


 画面を動かしながらブラザーは地球との比較図を投影してくれる。おお。ブラザーの言う通り、重力の項目はほとんど地球と変わらないな。気になるのは……惑星の名前のとおり陸地は極端に少ないな。

 オーシャンプラネットという惑星種別に比べるとまだましだが、惑星の陸地面積の合計はオーストラリア大陸ほどしかない。赤道付近に陸地のほとんどを占める大陸があり、その周辺にいくつかの島。離れたところに極小さな島がいくつかってところか。

 それ以外は全て海だ。宝が示した座標は、宝の地図に表示されていたのと同じで周辺に島はなく、海の真ん中のようだなあ。

 

「そういやブラザー。ウーはどうしたんだ?」


「ウー君は既に就寝しているよ。ラティアとブラウンシュガー君と同じでね」


 ウーも寝ているのか。ラティアとマミは水中で必要な道具の話をしているうちに眠くなってきたようで、マミは部屋に戻り、ラティアは床で寝てしまったから俺がベッドまで運んだ。


「ウーは今後ブラザーの助手でもやるのか?」


「ウー君は元々一匹狼らしくてね。組織に所属しているわけではないから、私の手伝いをしたいと申し出てくれているよ」


「ほう。ウーに寝首をかかれる心配はなさそうだな?」


「そうだね。ウー君は何でも依頼を受けてくれるとのこだよ。金は要らないそうだ」


 ブラザーは肩を竦め、片眼鏡モノクルの位置を手で調整する。

 金の変わりに可愛がって欲しいとかそんなところなのか? ブラザーも隅におけねえな!

 

「ヘーイ! よほどブラザーのことが気に入ったみたいだな!」


「余り大所帯になるのは好ましくはないのだがね……ラティアとウー君が加わると四人になる」


「そうだな。これから宝探しを行う間はマミも一緒になるよなあ」


「宝探し……私も非常に興味があるのだが、チームを分けようじゃないか」


 ブラザーは民俗学だか言語学だかの教授をやっていて、宝探しとか過去の秘密を探ることがとても好きなんだ。未開地惑星の古文書も嬉々として読んでいたしなあ。

 俺とブラザーはこういった面白そうな物の噂を聞くと調査してきたんだぜ。俺が実行役でブラザーが後方支援になることが多い。

 

「ブラザーとウー、ラティアが後方待機かなあ? 俺とマミで宝さがしに向かう」


「うむ。それで良いと思う。現地には全員で向かおう。ラティアの説得は君に任せたよ」


「あいよお」


 本音では俺単独で行きたいところなんだよな。お宝さがしはマミが持っている地図に便乗する形だから、彼女を優先させるのは当然だ。一緒に行くからにはもちろん彼女を全力で俺が守る。

 陸地の極端に少ない惑星ってのは、海の水深がとんでもなく深いんだよ。巨大な海になると、巨大生物が潜んでいることが多く、俺もマミも海の生物じゃあないから水中だと戦闘力がダウンする。

 ここにウーやブラザーがついてくるなら話は変わるが、戦闘力が全くないラティアを連れて行くわけにはいかないんだよなあ。

 彼女は行きたいと言うだろうけど、ちゃんと危険性を説明し待機してもらう。マミにも一応、待機するかどうか聞くだけ聞いてみるけど……難しいだろうなあ。

 

 

◇◇◇◇◇



 そんなわけでやってきたぜえ。ブループラネットに。宇宙船ハニースマイル号はブループラネットの孤島に着陸し、ここを拠点にすることにした。孤島は三日月型で、長い部分が最大で約五キロ、短い部分は二キロくらいになる。

 周辺に島はなく、絶海の孤島ってやつだ。気候は地球で言う亜熱帯性気候で、季節は夏を過ぎた頃だから泳ぐに丁度いい。

 

 わざわざ泳ぐことに適した島を探したんだぜえ。三日月型の内側に当たる部分は大きなビーチになっていて、ビーチサイドの奥に簡易的なログハウスを建てることにしたんだよ。宝探しも楽しみだが、どうせ楽しむなら南国ビーチも楽しもうぜと俺が提案したらウー以外の全員が乗って来たから、ログハウスセットまで持ってきたってわけだ。

 着いた日はログハウスをブラザーと俺の二人で工作ロボットを使って組み上げ、マミとラティアには備品チェックをしてもらった後、トイレや水道の設置を頼んだ。ウーはサバイバルに慣れているとブラザーから聞いていたから、島の探索にいってもらう。

 

 ウーに食べれそうなものがあればとって来てもらい、成分調査をしてみて問題なければ食べるつもりでいる。半日ほどでログハウスが組みあがったから、海水から真水を作る一抱えほどある大型のろ過装置を運び込んで水道につなぎ、海水をくみ上げるポンプを海に投げ入れる。

 トイレ用の浄化装置はブラザーに設置してもらって、マミ達が置いてくれたトイレに繋ぐ。これでさしあたっての準備は完了だぜえ!

 

 一通り終わる頃には日が暮れて、ウーも戻って来たので、食事にすることにした。残念ながら味気ない簡易食料を準備してログハウスのキッチンで温めて食べることにする。ウーはいくつかの果物を持って帰ってきてくれたから、ブラザーに頼んで成分調査中だ。

 明日になれば分かるとブラザーが言っていたから明日が楽しみだ。

 

 翌日は二手に分かれ、俺とラティア、マミは釣りに向かい、ブラザーとウーは植物と生物の調査に向かった。食べれそうなものがあれば持って来ると言っていたが、ブラザーが行くとなると……観察がメインになるんだろうなあ。

 未知の植物や動物を見て興奮する様が容易に想像できるぜ。

 

 俺達は浜辺から投げ釣りを行う。マミが釣りをやったことがないみたいだったから、彼女に釣りを教えながらになったけどラティアは釣りが得意みたいでさばのような魚を数匹釣り上げていた。

 午後になるとマミも慣れてきて、俺も本格的に釣りを始めると、釣れる釣れる。魚が全く警戒心がなくて餌にすぐ喰いついて来るから入れ食い状態だったぜ!

 

 夕方まで釣りを楽しんだ後、夜はキャンプファイアーにする予定だから、俺はログハウスからビーチと反対側……島の内側へと向かい丸太と蒔を集める。

 

 夜には現地で採れた果物と魚でバーベキューをしながらキャンプファイアーを楽しんだ。いやあ。こういうのも良いよな。大人の休日って感じだ。

 次の日は海で泳いで、明後日からお宝探索に向かう予定なんだぜ。


※誤字修正漏れてました。結城さんありがとう!

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