第25話 ブラザーのオハナシ
ブラザーが捕えているウーは、どこぞのストリップ劇場のようだぜ。彼女の胴体からお尻にかけて触手が絡みつき、手足首はだらんと垂れ下がっている。
ブラザーの配慮なのか、見えたらダメな部分は隠れているが、かえって扇情的に見えるぞ。これで気絶? しておらず笑顔で手でも振ってたら、ご機嫌な夜の店になっちまうぞ。
しかし女だったんだなあ、裸ではないが触手に捕らわれたウーの姿を見るとスレンダーな体型の二十代後半くらいのカワイ子ちゃんだ。
あのとき殴れなくて良かったぜ……俺は別の意味で胸を撫で下ろす。
てなことを考えているうちにホテルへ到着し、ブラザー達とホテルの部屋へ向かう。
……観客席じゃあ目立って仕方ないからな。
ブラザーがホテルのベッドに裸体のウーを横たわらせると、ラティアがキッと俺を睨んで彼女にシーツをかける。
ヘーイ! その態度はねえだろお。見てない見てないって。
俺は首を振し、両手で「見てません!」と否定の動作をとるが、ラティアは聞いちゃいねえ。
「……見たらダメです」
ご不満な様子で頰を膨らませ、ウサギ耳をピンと立てるラティア。
「見てねえよ。そんな顔してたら可愛い顔が台無しだぜ?」
「……もう……」
ラティアは真っ赤になって、ウサギ耳を頭につけると顔を伏せる。
彼女は反応が初々しくていいな!
「健太郎、トミーウー君に尋問をするのかね?」
ブラザーが片眼鏡をいじりながら、ウーを見やる。キラっと片眼鏡が輝いた気がした。ブラザーに尋問を任せたら……地獄を見るぜ! ウーがすぐ全て喋れば問題ないが。
「起きたら、雇い主と目的を聞こうじゃねえか。プリンスから聞いた以上の事は知らなさそうだけどなあ」
俺が答えるとブラザーは「ふむ」とつぶやき、窓際の椅子に腰掛ける。
プリンスはウーを雇ってマミのブローチを奪い取り、自身がレースに勝つ事で賞品のブローチを奪取する。
マミが言うには、虎と龍のブローチを揃えるとお宝の位置が分かるとかなんとか。
「健太郎!」
マミは俺にブローチ掲げると、そのまま抱きついて口付けしてきた。ヘーイ! 舌はダメだぜえ。大人の時間は二人きりでってな。
俺はマミを引き離すと、彼女の長い赤い髪の毛を撫でる。
おおっと。後ろから殺気が。
「……健太郎……」
腹の底から響くような低い声でラティアは声が漏れる。
「あら? お子様はお呼びじゃないのよ?」
マミはラティアへと向きを変えて、両腕を胸の前に組み胸を揺らす。
おおい! 挑発するなって。
「私だって……すぐ成長するんだから!」
ラティアは涙目になって扉から出て行ってしまった。
「マミ……やり過ぎだぜ。ラティアは胸を気にしてたんだな……」
「……ふん!」
俺が窘めてもマミは不機嫌そうに顎を振る。
やれやれだぜ。
「健太郎。トミーウー君が目覚めたようだよ」
ブラザーの言葉通り、ウーは切れ長の目を開き、まだぼんやりとしている様子だ。
俺は彼女が寝かされているベッドの脇に座り込み、彼女の顔を覗き込む。
「よお。レースでは世話になったな」
「……」
俺が声をかけてもウーは口を開こうとはしない。俺は気にした様子をおくびにも出さずに、彼女へさらに問いかける。
「プリンスからの依頼について教えてくれないか? お前さんがプリンスからマミのブローチを奪うように依頼を受けたってのは聞いているんだがね」
「……」
んー。ダンマリかあ? 珍しくブラザーが乗り気だから任してしまってもいいんだが……彼に任せると下手したら廃人になっちまうぞ。
「ウー。悪い事は言わねえ。しゃべっちまった方がいいと思うぜ……」
俺はブラザーに目をやると、彼は察してくれたのか右肩から先を鮮やかな青色の触手に変化させる。
触手が目に入ったウーは一瞬ビクっと体を震わせたが、すぐに無表情に戻る。切れ長の目をした
「健太郎、私が尋問しようじゃないか。彼女の体なら申し分ない」
何が申し分ないんだか……聞きたくねえよ。きっと修練に修練を重ねたウーの筋肉やら関節やらに興味があるんだろうが……
「仕方ねえ。ブラザー! 任せたぜ」
俺はブラザーの左肩をポンと叩くと、マミの手を引き部屋を出ようとする。突然部屋を出ようとした俺にマミは面くらったようにたずねてくる。
「ちょ、ちょっと。健太郎! 監視していなくていいの?」
「いや、俺は……ブラザーの尋問を余り見たくねえんだよ。マミは見て行ってもいいぜ」
「そ、そう。私を襲った女だから見て行くわよ」
俺はマミの手を離し、彼女にヒラヒラと手を振ると部屋の扉を開ける。マミ……後悔するなよ……
扉を開けると外の通路にラティアが体育座りしていた。
「よお、ラティア。ご飯でも食べに行くか」
俺が声をかけると、ラティアは俺の足にしがみつき、立ち上がる。
「……はい!」
ラティアは満面の笑みで答えるがその時……
――部屋の中から嬌声が聞こえて来る……ブラザーの奴、さっそく始めやがったな。
声が聞こえ始めたところで、扉が開きマミが疲れた顔で出て来る。だから見るなって言ったのによお。
「触手が……あんなところに……あああ」
マミは顔を真っ赤に染めて、両手で頭を抱え込み、その場に座り込んでしまった。一体中で何をやっているのか想像もしたくねえ……ウーのものであろう嬌声はまだ聞こえて来る……廃人になる前に吐いてくれよ。
「ラティア、食べたいものはあるか?」
「……屋台のたこ焼きとゲソのから揚げを食べたいです……」
「渋い選択じゃねえか。今晩は久しぶりにヒレ酒といこうかねえ」
日本系の屋台を昨日見つけていたんだよな。ラティアがものすごく興味を惹かれていたけど、昨日は迷った末に違う食べ物にしたんだった。
「タコやイカはもうやめて……」
マミが項垂れたまま、この世の終わりのような声で俺達に苦言を呈した。トラウマになってるじゃねえかよ。
俺はマミを抱え上げてホテルのロビーのソファーに降ろし、ラティアと共に外へと繰り出した。さすがのラティアも
屋台でたこ焼きとイカ焼きを買った俺達は公園のベンチに腰掛ける。俺はラティアに少し待ってもらってヒレ酒を買ってくる。アツアツのやつだぜ。
「……健太郎……さっきの声って……」
イカ焼きをかじりながらラティアは少し頬を赤らめながら俺に目をやる。
「まあ、そんなところだ。ブラザーの触手による快楽に耐えれる人間はいねえ……」
「……快楽……」
「ラティアにはまだ早いからな! 大人になってからだ。そういうことは」
ブツブツと「……快楽」と呟くラティアは割に不気味だ……それはもういいから食べろよ……
俺達が食べ終わる頃にブラザーから
だから、言わんこっちゃねえぜ……
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