第6話 新しい展開へ

春が訪れようとする二月の半ば。本間重太

郎商店にある製薬メーカーが訪ねてきた。柳

沢製薬だった。柳沢製薬は、この春から主要

飲料ポリナミンEを全国販売する。それにあ

たって販路拡大のお願いの訪問だった。ポリ

ナミンEは、今までは製薬ルートを使って薬

局、薬店で販売されていた。有名俳優をラジ

オや新聞広告に使い、知名度は抜群の商品だ

った。本間重太郎と海老名が対応した。海老

名はお得意様から何件もポリナミンEを売っ

てみたい。何とかならないのか?そんな要望

を頂いていた。その知名度、お得意様の期待

の大きさを実感していた。本間重太郎商店は

日用品が主な取扱品目だったが、お菓子や飲

料など他分野の取り扱いを考えていた。これ

は鬼が島商事との価格競争が激しくなり、お

得意様への品揃え、商品提案力の強化のため

だった。

商品分野の垣根の問題はあったが、人口の

少ない島の世界なので各メーカーは大目に見ていた。

本間重太郎は、お得意様にとって売れる商

品を多く紹介したかった。柳沢製薬の地区担当所長の宮川は、もってきたポリナミンEのサンプルを事務所全員に試飲させた。

 「社長さん、来月からポリナミンEの取扱いをお願いできませんか?ご存じのとおり

 有名俳優を使って広告をいれてるんで消費者も知っている商品です。飲んでおわかりのとおり、炭酸がはいって爽快感があります。数種類のビタミンもはいっていて、おいしく健康によい、元気がでる飲み物です。御社にとって悪い話ではないと思います。ポリナミンEは薬局、薬店で一番売れている商品で回転はすごくいいと思います。こわい商品ではないので是非検討してもらえないでしょうか?」

 「ところで、宮川さん、このポリナミンEの案内は、島内では、あとどこにするんですか?島には何件も問屋があるのはご存知でしょうが・・・。」

 「鬼が島商事さんをはじめ、登録してある

 二次問屋さん全てに案内をさせていただく

 つもりです。」

 「宮川さん、それだとお得意様がかぶって

 しまう。価格競争がおき、値段が崩れます

なぁ。今、うちと鬼が島商事とは日用品で激しい価格競争をやってるんです。こちらが正当な値段をだしても、必ず下をくぐってくる。ひどい営業になると『本間重太郎商店より一円安く納めるので、うちに注文をくれ』といって、うちにきていた注文を強引にもっていくのがいるんです。商品の売れ行きや付近の情勢、仕入原価、経費を考えて値段をだすのが普通ないのに、そんなことを考えず安易に値段をだして価格を崩してくるんだ。もし、こんなことが起きたなら、どう対応してもらえるんですか?

「社長さん、もし、こういう値段を崩すこ

とがあったら報告してください。卸店様に

は当社製品の販売にあたって指定の価格を

守ってもらいます。この価格表のとおりの

原価、卸価格、売価でお願いします。」

宮川は本間重太郎に価格表を指しだした。

ポリナミンEは、標準小売価格百円、小売店卸価格七十八円、指定卸店納価格七十一円と

記載してあった。

「もし、一円でも価格を崩した卸店さんがいたら、即、出荷停止にします。」

「そのかわり、商品拡販のための企画が年

に何回かあります。何ケースか数量をまと

めたら景品がつく企画や新規取扱小売店を

増やしていただき、販促金を払う企画もあ

ります。これは一件につき、いくらかの値

引きをする企画です。企画専用の紙を用意

しますので、注文数量など必要事項を書い

てもらって必ず店印を押してもらってくだ

さい。当社へこの紙を提出してください。

値引き分の精算は、当社の小切手でお支払

いします。」

 「厳しいメーカーさんですな。わかりまし

た。うちのほうもお得意様からポリナミンEの取扱の要望があるんです。メーカーさんが強く値段を厳しく管理してくれるのでしたら、取扱いを検討しましょう。」

「ありがとうございます。商品の供給は四葉屋さんと御社は取引があるので、しばらくは四葉屋さんからの配達となります。物流が多くなりましたら直送できる体制は、

社内でつくっていますのでお待ちください。」

メーカーの値引きの方法はいろいろある。

販売価格の維持こそがメーカーの収益を安定させ、次の新製品開発や設備投資などにまわされる。対取引先には、高い原価を印象付けさせ、値引き交渉が難しいことを認知させる。

これを堅持することでメーカーのブランド、商品のブランドがつき、価値が上がることになる。メーカーによる価格支配の仕組みは独特のものがある。対問屋へは『建値』という価格で請求書上に記載される金額がある。これは問屋にとって原価なのだが、柳沢製菓のように企画の販売奨励金や特売の値引き金額を後日、支払う形式をとる。精算方法は、この当時は小切手、現在だと銀行振込が一般的である。

他には返品伝票通称赤伝を起こし請求書上で即、値引きされる場合や、十ケースの注文につき一ケース無償の現物対応で原価を下げる方法がある。

通称リベートと呼ばれる販促金の支払い方法は、財務的には問屋を苦しくさせている。商品は小売店へ通常より安く納品されるが、利益は原価に数円上乗せか、原価を下回って納品される。問屋の利益はリベートが入金してはじめて利益が確定し相殺されることになる。しかし、リベートの入金は、数か月あとになる。リベートの入金まで問屋はほとんど利益なしで走らなければならない。資金繰りに頭を悩ませる問屋は少なくない。リベートもメーカーによって様々な名称で細分化されている。基本リベート、販促奨励金、特売値引き、早期引き取りなど、様々な名目のリベートが各メーカーの価格表の中で作られている。問屋の取引額に応じてリベートの料率や新しい名称のリベートがでてきて建値から値引かれる。

また、リベートの支払いはメーカーが計算して算出するやり方、問屋側が仕入数量や特定小売店への販売したときには、問屋からメーカーへ請求書を作成しなければ支払わないメーカーもある。

いつのまにか商品を供給し、お金をもらう立場のものが、お金を支払う立場になっている。請求書は間違っていれば支払われない。建値制はメーカーを偉くさせ、条件をだすよう頭を下げてくる問屋へ何層もの複雑なリベート体系を確立し商品価格の維持、ブランド化をはかっている。メーカーの価格支配が強固になってゆく。


この春、いっせいにポリナミンEが鬼が島の小売店頭に並んだ。広告の力は大きく、この商品は売れに売れた。本間重太郎商店では、

一か月、一箱五十本入のポリナミンEは、十ケース売れればいいと予測していた。しかし、

それは見事にはずれ、予想の二倍は超え、三倍に近づこうとしていた。小売店は売れると

わかったら、すぐに問屋へ値引き交渉をはじめてきた。問屋は、柳沢製薬の宮川から値引き禁止の釘をさされていた。値引きがばれたときの取引停止がこわかったからだ。柳沢製薬は値引きには応じないメーカーだとわかると、小売店はしばらくは交渉は行わなくなっていた。


この当時のメーカーの力は強かった。価格を強制的に守らせるメーカーは多く、柳沢製薬のように取引停止をいってくるメーカーも多くあった。問屋としては、出荷停止は自社の売上減だけでなく信用失墜につながり恐ろしいものがあった。しかしメーカー指定の価格で安心して卸せるメリットはあった。メーカーが指定している価格ですと強く発言することができた。適正価格で卸せることは、利潤が安定してとれ、堅実な経営基盤ができる要因になった。現在は、メーカーから小売店などの販売店に価格を強制させると公正取引委員会に罰せられる。


ポリナミンEが店頭に立ち並んで数か月、柳沢製菓の宮川は、鬼が島の全小売店を巡回した。予め問屋から提出されたリストをもとにポリナミンEの店頭陳列の推進と価格調査の目的だった。ポリナミンEが少なくなっていたら小売店へ再注文を促し、注文を忘れているようだったら、納品した問屋を聞き、連絡して納品させていた。店頭価格も極端な値引きをして販売していないか厳しくチェックをしていた。小売店は、売れる商品で集客につながる商品は、『目玉商品』としてチラシに掲載した。通常の半額程度の破格値で販売されていた。目玉商品は集客には抜群の効果を発揮した。目玉商品だけでは小売店は明らかに納価を下回って販売するので損をしている。目玉商品で引きつけて来店してもらい、他の商品を買ってもらって利益をあげる仕組みになっている。柳沢製薬はポリナミンEが『目玉商品』になるのを恐れた。

極端な値引き販売は商品のブランドを低下させ、問屋、小売店から強硬な値引き要請がくるのを知っていた。より高い価格で販売し、多く回転させることが柳沢製薬、宮川の目的だった。南部方面の店をまわっていたときに、安くポリナミンEを販売している小売店を発見した。宮川は店主に販売価格を守るようお願いした。ポリナミンEはどこから仕入れたのか、さらに宮川は問屋筋全部に、この店への納品したのはどこか追及していった。柳沢製薬の犯人捜しがはじまった。宮川の顔に鬼気迫るものがあり、会社側の強い強制力を感じた。犯人は本間重太郎商店と漬物問屋に絞られた。各問屋へ聞き込み、納品書までの提示を求めた。本間重太郎商店では、南部方面へはポリナミンEの案内はしていなかった。漬物問屋はいい逃れをしているらしく、本間重太郎商店が納品したと嘘をいっているようだった。結局、小売店への納品書、元帳が決め手となって、漬物問屋へのポリナミンEの供給は停止となった。メーカーの恐ろしさを実感した事件だった。

 

 もうすぐ松太郎は入社して一年が経とうと

していた。仕事にも慣れ、流れもわかり配達も難なくこなし注文もいただけるようになっていた。この時期は新年度の品ぞろえを兼ね、

各メーカーが新製品を続々と発表してくる。新製品は一次問屋からの紹介、小包でサンプルと見積書が送られ、新規導入の判断が問われる時期だ。

一次問屋は新製品の説明を省くために、展示会を開催する。通称、見本市と呼ばれ、有名メーカーから地域メーカー、新しく参入メーカーが多数集まり、新製品の紹介と安売りの条件交渉が活発に行われる。開催する一次問屋からすれば、取引拡大と地域の影響力を誇示の場であり、多くの取引先が“お客様”として招待され、メーカーへの強力な発言力と値引き交渉力をつける絶好の機会だ。通常はメーカーが多数集まれる大きな場所を使って催される。イベントホール、宴会場、ホテルの大広間などで開催される。開催にあたってメーカーの展示スペース、通称、小間が必要になってくる。メーカーの規模によって力をいれたい商品、新製品の案内の数と種類によって小間の大きさが変わってくる。自社の商品をどれだけ多く展示したいか、小間代として、お金を徴収する。一次問屋は小間代と展示会での売上の手数料で大きな利益が上がる。招待される“お客様”は、この時代は二次問屋が中心だ。取引のある小売店は少ないが、時代が動き、取引が大きくなるにつれ、小売店の招待の割合は大きくなってゆく。招待される二次問屋、小売店にとって見本市は仕入れの意味合いもあるが、日頃の取引への接待という意味合いもある。展示会には交通費や飲食がつき、気に入ったメーカーのサンプルももらえた。展示会によっては趣向をこらし、飲食の屋台、アルコールが用意され、注文を促す雰囲気をつくっているところがある。さらに帰りには、空くじなしの抽選があり楽しませる。玄関をでる直前に、そっと『車代』と書かれた封筒をしのばせる。封筒の中には現金が入っている。通称、裏金が担当者へ渡されるのである。これは、今後の取引への心付けと競合する一次問屋の売上をこちらへほしい意味合いがある。いわゆる帳合変更を促すため、担当者へ裏金を渡すのである

。この裏金は、取引拡大と帳合変更の大きさによって複数枚渡されることがある。 

社員をかかえる二次問屋、小売店にとって

展示会は商品知識や業界の仕組みを学べ、人材育成の絶好の場である。社員への日頃の仕事への感謝や福利厚生の意味合いも強い。


本間重太郎商店に展示会の招待状が届いた。

展示会は三社からの招待があった。親方は新規商品の開拓と人事育成をかねて、海老名と

下働きの四名を振り分けることにした。松太郎は菓子問屋のファミリー商事の展示会に海老名と同行することになった。場所は本土にわたってすぐのホテルの大広間で開催された

 展示会の当日、二人は朝一番の船に乗る。海老名は背広姿。松太郎は背広を作れる年齢ではないので、作業服でいくことにした。本土に着くと改札でファミリー商事の担当営業の中野が待っていた。本間重太郎商店はまだ菓子の扱いに慣れてなく、商品知識の蓄積を主眼に置いていた。中野が運転する車に乗り数分でホテルに着いた。会場はホテルの大広間で開催されていた。受付には大勢の招待客が並んでいた。海老名は見回すと鬼が島の数社の問屋、最近売り上げを伸ばしている小売店の大倉商店の菓子担当者がきていた。松太郎は初めて展示会にきて、やや緊張していた。

 「おい、松。これから会場へ入るがお前がいいと思った商品があったら、遠慮なく俺に言え。若いお前の感性がうちのお菓子の品ぞろえに影響するんだ。俺はなにせ日用品が永いから、菓子については把握しきれてない。頼んだぞ。」

 松太郎は海老名から期待されてやる気がで

てきた。会場に入ると圧倒された。会場は学

校の体育館くらいの大きさだった。その中で

多くのメーカーが小間で仕切られた場所で自

社製品を広げていた。小間が百件以上は並び

、商品分類ごとに数件のメーカーが集まって

いた。広告をだしている大手のメーカーの場

所は広く、大きな看板が高々と掲げられ目立

っていた。会場の真ん中には机が多数並べら

れ、招待客が商品サンプルの入った大きな紙

袋を置いて煙草を吸っている。合向かいに赤

のファミリー商事のジャンパーを着た営業マ

ンが必ず寄り添い注文を伝票に書いていた。

アルコールをすすめ、酔わせて、その勢いで

注文をとっているように見えた。

会場の隅を囲むように屋台がたち並んでい

る。そば、アルコール、お茶、ジュースの屋台が並んですべて無料だ。考えたもので、おつまみの屋台があった。そこは各おつまみメーカーの新製品が試食と比較ができるよう、

数種類がセットになってだされていた。アルコールといっしょに商談ができ絶好の商品アピールの場だった。

 松太郎はまるでお菓子の国にきたように思えた。こんなに多くのお菓子に囲まれ、サンプルももらえる。このときだけは問屋で働いてよかったと思った。一番端のメーカーから見学が始まった。海老名といっしょに順路通りに歩き、商品を手に取って見てゆく。ずらりと並べられた商品の山、せんべい、饅頭、チョコレート、クッキー、ガム、飴、おつまみ、ギフトいろいろあった。松太郎はこの世にこんなに多くの商品があると驚いた。何から手をつけたらいいのかわからなかった。小間のなかには、試食も用意されているところもあった。海老名が試食をとり味見をする。松太郎もならった。海老名と松太郎は船の中で、展示会でどの商品を仕入れるべきか話していた。まずは本間重太郎商店は日用品の取扱いなので菓子への知識は圧倒的に不足していた。日用品ルートのお得意様へ、お菓子を

すすめることになるのだが、既存の菓子の仕入問屋と競争になるのは明らかであった。鬼が島商事との日用品の価格競争は互いの利益を削り、互いの落ち度を罵り合うものだった

。菓子を取り扱うのにあたり、価格競争は避けたかった。島内の菓子事情を調べてると、

菓子の島内の扱いは日の輪屋が多いことがわかった。日の輪屋の担当者もファミリー商事の展示会にきていた。日の輪屋が取り扱っていないお菓子を調べることにした。お菓子の取扱は初年度は無理に広げす、取り扱いに慣れること、本間重太郎商店の特色をいかせるお菓子を、十品くらい探すことが親方の方針だった。お菓子は子供から大人、お年寄りまで幅広い年齢層が食する分野である。松太郎を連れてきたのは、若者の視点でどの商品を仕入れたほうがよいかの意見がほしかったkらだ。それと松太郎には兄、姉、弟、妹がいて、兄弟から意見をもらえれば、流行や好みがわかり、それを基に商品の仕入に反映できる可能性があった。ただ松太郎はまだ高校生。

そんな会社の事情は頭に入ってはいたが、この大きな会場でお菓子を見て食べることに夢中になっていた。有名人を起用したお菓子、

漫画にでてくるキャラクター製品、野球選手や相撲の景品がついた商品にはすぐに目がいった。今見ている商品はこれから発売される商品なんだな。まだお店には並んでない。いち早く見て、食べることができる。そんな優越感に満ちた気持ちで、小間から小間と夢中に見学をしていた。松太郎には、お年寄りが食べるお菓子は目に入らなかった。家でせんべいや饅頭は食べるが、どんなお菓子がお年寄りが好むのか想像ができなかった。

松太郎は展示会全部を夢中に見て回った。みるみると商品見本をいれた袋はいっぱいになっていた。一時間以上は歩いていた。気がついたら海老名は疲れて商談席に座っていた

。ファミリー商事の中野とお茶を飲んでいた。

 「海老名さん本日は展示会にきて下さりあ

りがとうございます。どうですか?いい商

品は見つかりましたか?わからないところ

があったらなんなりとおっしゃってくださ

い。」

「中野さん、なかなかお菓子の分野は難し

いね。どこから手をつけたらいいか、わか

らない。あなただったら、どこから手をつ

ける?おたくは日の輪屋さんとも取引があ

るんでしょ?こちらとしては価格競争はし

たくない。何も知らずに日の輪屋が扱って

いる商品を紹介して向こうを怒らせて喧嘩

になっちゃたら嫌だよね。日用品にもメー

カーの大手、準大手、地方大手、中小があ

って、大手となると建値で縛ってきて儲か

らないんだよね。お菓子はどうなの?」

「お菓子は嗜好品ですから、回転が速いで

すよ!日用品とはちょっと勝手が違うと思 

います。まずお菓子の大手、明治、森永、

ロッテ、グリコの力が強いです。建値の掛

け率は高く儲かりません。でも広告や商品

はいい商品がありますね。若い聖代や女性

に人気があって、“なし”ではおけません

。このメーカーどれもチョコレートが強い

商品がありますね。ロッテのガムは独占状

態です。クールミントガム、グリーンガム

はいい商品ですよ。おせんべいなどの米菓

は亀田、三幸、岩塚が代表で、どれも米ど

ころ新潟のメーカーです。そこに浪花屋、

栗山、越後など新潟県だけでも十社近くあ

りますね。子供さん向けで、忘れてならな

いのが、かっぱえびせんのカルビー。ほか

にも東鳩、シスコ、カバヤ。飴だったら春

日井、扇雀、ノーベルいろいろです。」

すらすらとお菓子メーカーの勢力図を説明する中野の話に、海老名はついていけなかった。

「あと、日の輪屋さんとはですはね。いい

取引をさせてもらってます。今いったメー

カーは全部押さえていますね。定期的にメ

ーカーと同行販売を行ってるみたいなんで

、鬼が島において影響力はおおきですね。うちとしては、本間重太郎さんの日用品の販売ルートのお客様のお菓子の売上を伸ば

してもらえたらいいですよね。」

「日の輪屋がいってないところか・・・。

あそこはいいお得意さんを押さえてるから

な。日の輪屋がいってないところでお菓子

が売れそうなところは少ないな・・・。ど

っちにしろ、うちも日の輪屋と取引のある

お得意様があるからお菓子では競合しそう

だな。中野さん、いろいろと教えてくれ」

「わかりました。そちらでまだ扱ってない

メーカーがありましたら案内します。とこ

ろでもひとりの若手社員の左近君ですか、

精力的に動いてますね。よっぽど興味があ

るんでしょう。海老名さん、若い人の感性

は参考になりますよ。うちの若手でもいい

商品をひっぱってきますからね。彼らは消

費者目線で商品を見れますからね。特に若

者向けの商品の評価は、会社にとっていい

意見をいいますよ。」

海老名は中野のアドバイスを参考に商品を組み立てていた。

「松、初めての展示会、疲れてないか?一

時間以上も歩いていろいろ見学してて何か

きづいたことはあったか?」

「海老名さん、俺にとって夢の世界です。

こんなにお菓子の新製品があって、試食も

できて商品見本ももらえるなんて勉強にな

りました。」

「お前の視線で会社が取り扱ったらいいと

思った商品はあったか?」

「海老名さん、俺は営業のことはわからな

いですけど、子供向けのお菓子はどうかな

って思っているんです。駄菓子なんか、子

供はおこづかいが少ないんで買いやすい価

格の商品をいくつか揃えてもらえたらいい

かなって思ってるんです。あとは、お得感

がある商品がいっぱいあったらいいと思い

ます。」

「そうか、駄菓子か。ここらへんは日の輪

屋も力をいれてないから、いいかもしれな

いな。お得感・・・。これはうちの持ち味

になるかもしれないな。いろいろ考えてみ

る。松、そのときはお前もいっしょになっ

て考えてくれ。最初から全部が全部できる

わけではないから、どれを優先して組み立

ててゆくかが課題だな。参考になった。あ

りがとう。お前に意見を親方や営業と話し

てみるよ。」

松太郎にとってファミリー商事の展示会は

夢のような場所だった。帰りの船の中でもらった商品見本やパンフレットを見て夢中になっていた。

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