第4話 丁稚として

二十日を過ぎると請求書が事務所から作成

されてきた。この日から月末まで、お金にかかわる仕事で会社全体が忙しくなる。本間重太郎商店では、ほとんどのお得意先への請求は二十日で締めていた。月末締めや毎日(ごとび)で締めるお得意様もあった。請求書は、伝票と同じように路線ごとに分けられ、配達のときに配られる。

社員全員に親方がきつく言った。

「月末にお得意様から集金をしなければな

らない。そのお金は問屋への支払い、経費

、給料の支払いをしなければならないお金

だ。

非常に大事な仕事だから確実に請求書を早

く届けてくれ。請求書がお得意様の手に渡

らないと、入金が遅れる。遅れると支払い

が遅れ取引先に迷惑がかかるからだ。

自分たちの仕事だけをすればいいのではな

く、事務所の人たちの仕事がはかどるよう

、相手の身になって仕事をしてほしい。会

社がうまくまわるよう意識してくれ。」

松太郎は少しずつだが、自分の今やっている仕事は、他の部門の人たちの仕事につながっていて、影響しているのだと感じるようになっていた。

 「問屋は販売、配達、事務の三つが調和してこそ、うまく回るのだ。」

 親方が同時にそう言った言葉が心に沁みこ

んできた。

 月末には配達をしながら海老名と集金でお

得意様へ同行した。松太郎が商品を納品して

いるとき、海老名がカバンをもってお得意様

からお金をもらっていた。予め手帳に請求金

額が店ごとに書かれており、請求金額と支払

い金額と合わせていた。そして領収書を書い

てお得意様へ渡していた。何件かの集金で海

老名のカバンはお金でいっぱいになっていた。

 会社に戻るとすぐにお金の集計がはじまる。

海老名の他に集金してきたものが、大きな机

にお金を全部、カバンからだした。お札、硬

貨、小切手が山盛りになっていた。ここから

社員総出で、お金を数える。事務員の高野が

集金してきた総額を計算する。その額と実際

に数えた額が合っているかの確認作業だった。松太郎は、月末の今日だけは学校を休ませ

てもらい、集計を手伝った。下働きの須郷、

宮田、仲山と硬貨を数えるよう指示があった。数え方は、硬貨の種類ごとに十枚ずつの山

をつくって数える。百円玉、五十円玉、十円

玉、五円玉、一円玉を十枚ずつの山を作って

いった。松太郎の目の前には見たことのない

お金の山があり、その山に手をいれ、金種ご

とに分けて、十枚数え、山をつくっていった

。ジャラジャラと心地いい響きが事務所に鳴

り響いてた。みんな黙々と数えていた。海老

名や先輩社員は、お札を数えていた。一万円

札、五千円札、千円札、五百円札を十枚の束

にしていた。よく見ると、指の間にお札をは

さみ、もう片方の指でお札をはじいて十枚数

えていた。お札をはじく音がしている。十枚

になったお札は、さらに上下反対にして数え

なおしていた。海老名に聞いてみると、お札

は数えているとき、二つに折れたお札がまぎ

れて数えていることがある。十枚にしたつも

りでも、中に二つ折りになっていると一枚余

計に数えてしまっている。上下反対に二回数

えるのは、二つに折れているお札を見つけや

すく間違いを防ぐためだった。二回数えた、

十枚になったお札は、一枚のお札にはさんで

十枚の束として積まれていた。

 集計がすすみ、金種ごとに十枚単位になっ

て数えやすくなっていた。小切手お数えてい

る事務員だけが集計にてこずっているようだ

った。小切手は銀行が発行し、発行した支店

で換金できる。支払う者は小切手に金額、署

名と捺印、日付を書いて請求者に渡す。小切

手を受け取ったら、記載の銀行の支店で換金

できる。自動的に記載された金額が小切手の

発行者の当座口座から引かれる仕組みだ。注

意しなければならないのは、日付だった。こ

の日付けが当日だったらすぐに換金できるが

、先付け小切手、つまり、日付が数日後だっ

たら、その日付の日でしかお金に換えられな

い。現金に替えられないと支払いに影響する

ので、先付小切手の分を除いて支払い計画を

立てなければならなかった。集金して頭が痛

いのは先付小切手をもってくることだった。

支払いの悪いお得意先の中には、分割で半年

先にやっと当月の請求分が回収できる小切手

もあった。内部では、通称“飛行機”と呼ば

れていた。いつ落ちるかわからない。あてに

できないことからきていた。そばで親方が先

付小切手への愚痴をいっていた。領収すると

きは、日付を見て、極端な先付になってない

か、確認をしろ。日付を確認しないで安易に

領収書を書くな。そんな注意が事務所内にひ

びいていた。集計が終わったのは夜の八時。

銀行がこんな時間に来社し、集計した現金を

もっていった。

 次の日、松太郎はいつものように港から荷

物をもってきて倉庫に搬入しているときに、

高野から銀行への用事の依頼をされた。昨日

受け取った小切手の換金だった。本間重太郎

商店の近くに五件の銀行があり、そこへいっ

て、換金してくる仕事だった。松太郎は銀行

というところにいくのは初めてだった。やや

緊張して入ると、多くの人が椅子に座って順

番を待っていた。カウンターで仕切られた中

に、綺麗な女性がお金を数えていたり、接客

をしていた。奥には、紺の背広で固められた

無表情な男性行員が書類に目を通していたり

、お金の出し入れ、算盤をはじいていた。ど

こか冷たい雰囲気だった。予め高野から小切

手換金のやり方を教わっていた。

 「本間繁太郎商店です。小切手の換金をお願いします。」

 松太郎はぎこちない仕種で小切手を取出し

カウンターの女子行員の前に立った。女性行

員に圧倒され、顔を見ることができなかった

。女子行員に小切手を渡すとすぐにうしろの

長椅子に座った。銀行の様子や多くの人が利

用している様子を見入っていた。十分くらい

すると会社名が呼ばれ、現金と硬貨小皿にの

せられカウンターに用意されていた。金額の

確認をして受け取った。

 松太郎はいつもと違う仕事の内容にとまど

った。かえって青空の下で体を動かしていた

ほうが自分の性にあっていた。

 三件目の銀行での換金で問題が起こった。

女性行員が小切手を指し出し、これは横線小

切手なので換金できないと説明してきた。

 「横線小切手って?」

 松太郎の顔に冷や汗が流れ混乱した。はじ

めて聞くことなので、どう対処していいかわ

からなかった。

 横線小切手とは、盗難防止のための小切手

で、小切手の端に二本線が斜めに引かれてい

る小切手だ。銀行は、この小切手をすぐに現

金化してくれない。現金化するには、裏に署

名捺印が必要である。お金は、その銀行支店

の受取者の口座へ入金される仕組みのものだ

。カバンに大金をもっていると盗難にあうこ

とがあるので、その防止をしたいため横線小

切手を発行するお得意様がある。しかし、小

切手発行の銀行に口座がない場合、お得意様

へ事情を話し、普通の小切手で再発行しても

らうなど手間がかかるものである。

 松太郎の困っている姿に気づいた行員は、

機転をきかせ、会社に電話し対応してくれた

。松太郎にとって、ひとつ勉強になった一日

であった。

 一方、高校では同級生とも学生生活を満喫

していた。松太郎は大学進学という目標があった。人一倍努力をしていた。それは無理して高校へいかせてくれた鳥越の両親への感謝の気持ちが大きかった。帰宅してすぐに予習

復習をし、仕事中でも空いた時間には英語の

単語帳を見ながら暗記をしていた。成績は一

番になっていた。しかし、真面目一辺倒では

なく、先生、同級生とも楽しく授業にのぞん

でいた。仕事の疲れで授業中に居眠りしまう

ことも少なくなかった。いたずら好きの同級

生が、松太郎の顔に墨でらくがきをした。彼

の昼間の仕事はペンキ職人。日頃の腕を試し

ていた。それに気づかず寝ている松太郎。ら

くがきは髭だけだったものが、みるみる顔全

体に広がってゆく。しまいには見事なくまど

りができていた。教室全体に注目が集まり笑

いが起きていた。運悪く先生に指され、起立

し真面目な顔をして教科書を読む松太郎。最

初は見て見ぬふりをしていた先生だったが、

さすがに歌舞伎役者風な顔で教科書を真剣に

読まれると笑いを我慢できなかった。腹を抱

え、息ができないくらいの笑いよう。ほかの

生徒もつられて声をあげて笑った。教室全体

が笑いの渦となっていた。


 入社して一か月、松太郎は仕事にも慣れ、

海老名と一緒に配達にでることもあったが、

会社近くのお得意様への配達も任せてもらえ

るようになっていた。若い松太郎が苦学しな

がら働いている姿はお得意様からも好感をも

たれていた。注文を頂いたり、帰りにサイダ

ーをもらったりもしていた。会社で親方や海

老名からお得意様から何か頂いたら必ず報告

するようにいわれていた。本間重太郎商店で

は規則のようになっていた。松太郎は、いわ

れた通り、今日はお得様から何をもらったか

を報告していた。あとで親方や海老名がお礼

をする姿を見たことがあった。

 「この前はうちの左近にごちそうしていただいてありがとうございました。いつも、

 左近を可愛がって下さりありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。」

 きちんと上司がどんな些細なことでも、礼

儀をつくすことは、お得意様からしたら、こ

の会社の社員教育が徹底し、礼儀の躾がしっ

かりした取引先だと印象づけた。今後の商売

への信用が上がるものだった。しかし、あえ

て、下働きの社員に施しを行い、礼節を尽く

せる会社かどうか試す、お得意様も中にはあ

った。


 集金、支払いが終わると、毎月十五日は給

料日だった。前日、事務の高野が銀行から袋

いっぱいに現金をもってきていた。計理士が

きて経費の計算や試算表(月ごとの貸借対照

表、損益計算書)を作成していた。親方の何

やら話していた。厳しい顔だったり、笑顔だ

ったりと変わっていた。先月の勤務表をとり

だし、給与計算がはじまった。計算書に書か

れた金額が封筒に入れられていた。手際よく

お札と硬貨がいれられ、みるみると、分厚い

封筒がいくつもできていた。

 翌日の朝礼で給与が渡された。ひとりひと

り呼ばれて、親方が給料を指し出す。

 「ご苦労さん、またよろしく頼むよ。」

 指しだされる給与袋を深々と頭を下げ受け取る社員たち。ねぎらいの言葉の次に、親

方が、先月の社員ひとりひとりに励ましの言

葉をかける。

 営業には「今月の数字はどうだ?先月は厳しかったな。それでもお前のおかげで洗剤があんなに販売してくれて助かった。今月もよろしくな。」

 事務には「いつも電話の応対、ありがとう

。あのお得意様はいつも急ぎでの注文をしてきて困るよな。落ち着いた対応をしてくれたおかげで、ずいぶんと営業は助かってるんだ。会社の顔は事務の人たちなんだ。

顔もきれいに、心もきれいに頑張ろう。」

配達には「雨の日も風の日も配達しなきゃ

いけないお前たちには頭が下がる。車がいけない北部の店は重い荷物を背負って山を

登るのは大変だよな。来週は大きな納品が

あるから一丸となって頑張ってくれ。ちゃんと伝票と商品をあわせて間違いのないよ

うにな!頼んだぞ!」

親方はひとりひとりの仕事ぶりをちゃんと

見てくれていることには驚いた。

 「左近松太郎君。はじめての給料だな。体

 は慣れたか?疲れてないか?仕事は覚えた

 か?お得意様への礼儀はしっかりな!夜学

 に通いながら仕事は、つらいが頑張れ!必

 ず、お前の将来にとっていい経験になる!

 今月も頑張ってくれ!わからないことや不

安に思ったことがあったら遠慮なくいうん

だぞ!ご苦労さん。」

指しだされた給料をやや緊張しながら受け取った。朝礼が終わり、松太郎は柱に隠れて

給与袋をあけた。一万五千円入っていた。これが俺が働いて稼いだお金だ!金額は少なかったが、一か月働いた成果に誇らしい気持ちになっていた。学費や下宿代などで消えてしまうが、残ったお金で両親や兄弟に何を買ってあげるか考えていた・・・。松太郎にとって忘れられない一日になった。


 お得意様と下働きのものとの信頼関係がで

きてくると、海老名から注文をとってくるよ

う指示があった。

 「松、今度配達にいったら注文をとってこい」

 「え!俺にはまだ無理です。まだ商品知識もないですし、値段のことなどわかりません。海老名さんの価格交渉をそばで見ていると、営業というのは難しいものだと思っているんです・・・。」

 「松、難しく考えるな。値段のことを聞かれたら、『わかりません』で通して俺に報告しろ。まずやることは、納品が終わったら、『何かお急ぎの品はありませんか?』

 このひとことだけをお得意様へ投げかけろ

 。大丈夫だ。自信をもってやってみろ!お前ならできる!」


 問屋の営業は、すでに取引のあるお得意様

へ商品を案内し注文をとってくることである

。路線や地域のお得意様をまわり、自社の取

扱品を案内する。ルートセールスの手法は、

その地域のお得意様の考え方、お店の雰囲気

が把握でき、注文の内容でこの地域の消費者

のお好みや購買層、価格帯がわかるようにな

る。案内すべき商品も想像でき、メーカーと

お得意様の間に立って商品のコーディネイト

ができる。新規の飛び込み営業はあまり行わ

ない。新規のお得意様の開拓は、あっても年

に数件するくらいである。信用を第一に考え

ており、たとえ新規にお得意様と取引しても

支払いが悪いと経営が成り立たない。新規は

現金取引が基本である。商品と金が円滑に回

せるところに重きをおいている。

 営業の一日は、数点の商品見本やパンフレ

ットをもち、その日にいく路線のお得意様へ

伺い案内をする。お得意様によって微妙に案

内する商品を変える。この商品は、このお得

意様は販売していないから別の商品を案内し

よう。これは以前に案内したが全く売れなか

ったので案内はしない。など考える。それを

念頭に新規入荷商品の受注と定番商品(円滑

に商品が売れていて定期的に繰り返し注文を

もらえる商品)の受注である。新規受注も大

切だが定番商品を確実に受注してくるかが問

屋の経営に大きくかかわってくる。定番商品

をより多く持てることは在庫をもてる。在庫

をもつことは大量に仕入れられることで安く

仕入らる。そして利益も安定し、経営が成り

立つのである。

商品を定番化するには、大きな努力が必要

ある。商品の育成することでもあるのだが、お得意様へ商品の説明、納得させ、陳列しお客様から買ってもらわなければならない。一回売り切って次の注文するべきかどうかの判断難しいところで、一回でやめるか、まだい

けるか、ずっと継続して注文できるか商品のライフサイクルにも関わってくる。この繰り返しを何回も何年も行い、確固とした売上の基盤をつくるのである。メーカーも自社製品のライフサイクルを永くしたい。消費者の生活の利便性や快適さを求め商品を開発している。発売し再注文をもらえない商品は製造を中止し、次の工場のラインの問題もあり次の開発に着手する。再注文をもらえた商品は、さらに売れるように新規取扱店の開拓と販売促進(特売や広告、景品があたるキャンペーン)を行う。数年以上売れ続けているロングセラーは、定期的に広告、キャンペーンを企画、デザインを変更し新鮮さをアピールする。中身の内容や味付けを微妙に変え、新しい世代への継承を行う。

 

 注文をとる仕事は松太郎の能力を伸ばすだ

けでなく、営業フォローをすることで細やか

な顧客対応ができることで本間重太郎商店に

とってもありがたいことだった。営業はお得

意様から注文をとってくるが、必ず注文にも“抜け”がある。それは新製品の案内に集

中するあまり、定番商品の受注漏れや以前に

納めた商品のフォローを忘れることがある。お得意様も、店内の他の仕事を優先してい

るときが多く、商品の在庫管理まで手が回ら

ず、注文をし忘れていることがある。松太郎

のような下働きのものからひとことの問いか

けで注文を思いだすことがけっこうある。か

えってありがたい、フォローなのである。ま

た、急ぎの注文がはいったとき、迅速な対応

をしてくれるのは、松太郎のような下働きの

ものだ。

「お急ぎでしたら。よろこんでもってきます。何時までに必要ですか?」

そんな足取りの軽い対応は重宝されるものだった。また、お得意様も少々無理をいったお願いに対応してくれたことを恩義に感じ、また注文をしてくれる、よい循環ができあがる。

お得意様や本間繁太郎商店の売上と信用に貢献するものであった。

 松太郎は、海老名いわれたとおり、配送が

終わったあと、問いかえるようにした。最初

は、ぎこちなく、うまく言葉がでなかったが、

お得意様への一生懸命さが伝わり、少ないな

がらも注文をもらえた。注文をもらえた松太

郎はうれしかった。自分でもお得意様や会社

の役に立っていることが実感できて一人前に

なった気分だった。親方や海老名からも褒め

れるとまた、やってやろうという気持ちにな

った。

 しかし、全部のお得意様から注文をいただ

けているわけではなかった。松太郎にも苦手

なお得意様があった。

 「毎度ありがとうございます。本間重太郎

商店です。ご注文をお届けに参りました。ど

ちらへ置いたらよろしいでしょうか?」

 「ご苦労さん」

と優しくいってくれるお得意様もあれば、

「おい!ここだ!ここに置いておけ!」

と乱暴にいうお得意様もいた。やはり乱暴に

いわれると何か自分が悪いことでもしている

ような気分だった。また、このようなお得意

様にかぎって無理な返品の要請をしてくる。

松太郎は、怪しい雰囲気を察知したら、商品

を置いたらサッサと次の店に向かった。

お得意様から優しく丁寧に応対してもらう

と、うれしい気分だった。自然と荷物を置くときもお得意様が陳列しやすいよう順番通り丁寧に納品をしていた。営業フォローしても

、新製品や他の地域で売れている商品の案内も自然と行っていた。松太郎は、特に綺麗な女性がいるお得意様へはより丁寧さが増していた。

 注文をもらうこと以外にも連絡、伝言、苦

情も承った。苦情を聞くのはつらいが、本間

重太郎商店がよくなるためにいってくださっ

てると思い聞いていた。苦情には返品対応も

あった。返品にはいろいろある。品違い、破

損、ヘコミ、営業の強引な押し売り注文があ

る。松郎は、どんな返品であれ、受けとると

気持ちが落ち込んだ。せっかく空になった自

転車やリヤカーに返品をもって帰るのがつら

かった。親方から大目玉をくらうこともあっ

た。

 配達と営業フォローが終わって会社に帰る

と、松太郎は、まわってきたお得意様からの

注文、返品、伝言などを整理する。あらかじ

め、これらは豆伝に書いてあり、それを担当

営業に渡す。返品は豆伝と現物があっている

かを事務員に確認をとってから、返品伝票が

作成される。


返品にも暗黙のルールがある。開封した

り、一旦納品して売れなかったら返すのはご法度である。返品が受け入れられる商品は

、保管、配送途中で生じた破損、注文してい

ない商品、誤配送商品などである。メーカー

製造途中での異物混入や標記ミスの返品や回

収は、この当時は通信手段は電話だけで頼れ

るのは、問屋の伝達機能だった。異物混入や

標記ミスが発見されると、メーカー→一次問

屋→二次問屋のルートを通じ、いち早く全国

に連絡が行き渡る。予め、商品の販売情報か

ら、どこへ卸したかの情報が二次問屋までは

明らかになる。次に二次問屋へは『回収要請

』の依頼がくる。いつのまにか問屋の役割の

中に、不良品の回収がはいるようになってい

た。メーカーの立場では回収や返送のコスト

を考えたら、問屋を使ったほうが安く回収で

き確実だ。また、地元に根付いているので人

間関係もできあがっている。小売店、消費者

のクレームを和らげ、スムースに回収ができ

る緩衝材のような役割もある。

 現在もこの機能は生かされている。さらに

通信手段もテレビ、インターネットなどで周

知がより速くでき、消費者心理まで考えた細

かな対応ができるようになっている。


メーカーの珍しい製造ミスに松太郎はでく

わしたことがあった。商品は段ボールに決められた数が入っている。荷物を運搬しているときに、ひとつの荷物が、同じ商品なのに異様に軽く感じられた。中からカタカタと商品がぶつかりあう音が聞こえてきた。普通なら段ボールの中にぎっしりと商品が詰められて

、ぶつかる音はしない。ふたを開けて見てみると、商品がひとつ抜けていた。このミスはメーカーにとって珍しいミスらしく後日、メーカーの担当者と工場の責任者が本間重太郎商店を訪問し商品の詰め合わせの状況を確認したくらいだった。


売れ残りの返品の引き取り処理は基本的に

はできない。しかし、商品の仕入実績や今後の取引を考えて返品を受け入れることある。

これに味をしめ、返品は頼めばやってくれると勘違いし、再度返品の引き取りを要請する困ったお得意様もいる。また、大口の小売店となると、売れない商品の返品をしてもらいたいばかりに、わざと破損させて返してくるところもある。

 返品された商品はどう処理されるのか?返

品の分類で違ってくる。

 メーカー責任による異物混入、表示ミス

これは、メーカーに返送される。

 運搬途中での破損。問屋側にある場合

問屋の責任で処理される。社内で安く販売さ

れることが多い。

 運搬途中での破損。運送会社によるもの

問屋倉庫に入庫前の商品が破損していたとき

は、運んだ運送会社や管理している倉庫会社

が買い上げる。本間重太郎商店の場合は、港

止め荷物のトラック積み込み前に発見した破

損がそれにあたる。

 注文の勘違い、強引な売込みの返品

問屋内で再販売される。

 小売店売れ残りの返品

返品の量にもよる。あまりにも大量の場合は

メーカー、問屋は引き取りを拒否する。売ろ

うと努力しての返品は引き取り、対応してく

れることが多い。メーカも製造した責任があ

ると判断するからだ。しかし、やみくもに仕

入、商品管理もできてない場合は引き取りを

拒否することが多い。


 お得意様の店主は、松太郎のようなもので

も大切に扱う人は多かった。理由は本間重太

郎商店は鬼が島の日用品を扱う一、二を争う

問屋だからだった。もちろん、日頃、汗水を

たらし、商品を店先まで運んでくれる下働き

のものへの感謝はあったが、商品の円滑な流

通と値段、新しい商品情報は明日の小売店の

繁栄を左右するものがあった。それをもって

いる問屋のひとつが本間重太郎商店だったか

らである。そこのところを取り違え失敗する

ものは多かった。松太郎と同期の須藤良夫は

取り違えていた。須藤は店主からの施しを誤

解し、それを当然のようにとらえ天狗になっ

ていた。須藤は家が商売おしていて、知識や

慣れがあったこと、本間重太郎商店と取引が

あり、まわりが遠慮して注意ができなかった。

謙虚さを失っていた。

 「この店は俺がいなければダメになる。」

こんな言葉が何回も聞こえてきた。

 「親方は俺のいうことは絶対にきく。本間重太郎商店は俺でもっている。」

 などととんでもないことをお得意様へ言っ

ていた。しだいにお得意様への信用もなくな

り、注文もとれなくなっていた。

 海老名から“謙虚に対応しろ”と注意があ

ったが須藤の頭には入らなかった。注文がと

れないのは松太郎たちのせいにまでしていた。

 「あの商品は左近が港からもってきた。あいつはいつも商品を乱暴に扱うから商品がダメになって売れないのだ。」

 こんな話がついに親方の耳に入ってしまっ

た。

 「須藤!お前、お得意様に何をいっているんだ!」

 「親方、何のことでしょう」

 「何をとぼけたことをいてやがる。『本間重太郎商店は俺で持っている。俺がいなければだめだ』そんなことをお得意様へいっているという話じゃないか、そんな話が俺の耳に何件もはいっている。しまいには自分の不手際を松のせいにしてるっていう話じゃないか!」

 「親方、そんなことは」

 「いいか、須藤!俺たちの商売はお得意様も仕入先も両方大事にしなければならないんだ。お前が客の立場になってお前のような態度をとったらお得意様は注文をくれるか?お得意様がお前たち下働きをするもの

 に施すのは、うちが商品の案内をしなかったり、値段をださなかったり、最悪は取引をやめてしまったら、お得意様の店に商品や売れ筋の商品がいかない。売上は下がり

 経営自体ができなくなっちまう。お前たちに施すのは、商品の案内や値段をもっともらえるようにするためもあるんだ。

 逆のことも考えてみろ!うちにくる仕入れ先の問屋やメーカーが、お前のような態度をとったら、お前はどう思う?お前たちが汗水たらして売ってきた商品をあたかも俺が本間重太郎商店を助けてるんだという横柄な態度をとったら、どう思う?事実はそうかもしれねえが、感謝と謙虚さがねえだろ!それより、丁寧に対応してくれ、親身になってくれるところへ注文するだろう?商売ってのはそんなもんで、厳しいんだ。お前の横柄な態度を注意してくれたお得意様はあったか?ないはずだ。さっさと、うちにきていた注文を他の問屋へふっているはずだ。はっきりと注意してくれるお得意様のほうが、お前の将来を思ってくれてありがてえこともあるんだ。

 いいか、俺たちの商売は、お得意様はもちろん大切にしなければならない。そして仕入れ先も大切にしなければならない。慣れてくると商品を供給してやっているんだという考えがでて、感謝と謙虚さなくなっちまう。これが一番こわい。これでだめになった人間を何人も見てきた。感謝と謙虚さが大切だ。さぁ魂を入れ替えて明日から一生懸命働いてくれ!」

 「親方、ありがとうございます。俺が間違っていました。許してください。明日から

 初心にかえって頑張ります。」

 須藤は涙ながらに反省していた。松太郎は

柱の陰で聞いていた。自分にもあてはまるこ

とがあった。すべての取引先を大切にしなけ

ればならないことを痛感していた。島という

狭いところで商いをするには、本間重太郎は

まずに商品の仕入れを第一に考えていた。仕

入れ先がなければ、商品の仕入はもちろん、

商品の流行や売れ筋、条件(販促などで安く

仕入れられる商品)がわからない。それをも

っているのは仕入れ担当者。仕入れ先を大切

に扱えば仕入れ先も新製品の情報や条件をだ

してくれやすい。お得意様へは低姿勢でのぞ

み、その地域にあった商品を適正価格で提供

し、いっときでも早くお届けする。それが本

間重太郎の考えだった。

 次の日から須藤は生まれ変わったように働

いた。親方も若気の至りととらえ、むしろ成

長のいい機会ととらえていた。下働き同士、

互いに競うように仕事に励んでいた。


 この日は偶然、一人の社員の家族に不幸が

あり、運転手が不足していた。荷物の引き取

りはなんとかなった。配達もみんなで手分け

したが、どうしても一軒のお得意様だけが路

線からはずれ、配達はどうしようかと困って

いた。また、その日は、このお得意様の集金

日だった。事務員がいたが、電話応対や事務

作業があり会社を空けるわけにもいかない。

そこで近所の配達をしていた松太郎がかわり

に配達と集金を任せたほうがいいのではない

かということになった。

松太郎は事情を聞き、いくことにした。運

転免許がないのでリヤカーで配達することに

した。距離はリヤカーをひっぱって一時間は

かかった。この距離は実家の鳥越からよく歩

いていたので苦にならなかった。場所は地図

を書いてもらい、場所はわかった。しかし集金は初めてだった。普段は営業が行っている

作業なので下働きの松太郎には荷が重かった

。海老名が集金のやり方を教えてくれた。

 「おまえがいく中田屋さんの集金について教える。領収は判取を使う。納品が終わったら、『集金をおねがいできませんか』と言え。中田屋さんも毎月は集金日だとわかっている。お金を渡されたら、その場でお金を数え、間違いがないかを確認しろ。確認ができたら普通は会社の領収書を使うんだが、中田屋さんの場合は判取だ。必ず中田屋さんは『ここに領収をしてくれ』と判取り帳をだすと思う。判取帳を開くと、うち以外に取引のある問屋の支払いの明細が書いてある。日付順に書かれてあるから、一番最後に記載してある取引先の次の空欄に金額を記入しろ。記入するにはきまりがある。すべて漢字で書かなければだめだ。松、数字の漢字を書いてみろ!」

 松太郎は海老名のいったことを手帳に書き

ながら、頭にいれていた。学校で習った漢字

を書けばいいんだと思った。

 「海老名さん、これでいいですよね?『一、二、三、四・・・十』」

 「松、これを書いたらだめだ。領収するときの漢字はな、『一』は『壱』、『二』は『弐』、『三』は『参』、『十』は、『拾』と書く。それ以外はお前が書いた漢字の数字でいい。これはどういうことかというと、金額の訂正ができないようにするためなんだ。『一』に横棒をつければ『二』にも『三』にもできるだろう。悪い取引先には、これをあとで書き直して、多く金を払ったとをいってきて、商品を多くもっていく取引先があるんだ。領収した金額をあとで変えられないよう、数字の漢字はこれを使う。そして領収金額の上に『一金』、下に『也』をつけて前後から数字が書き加えられないようにする。まずは練習だ。中田屋さんの請求金額はわかっているから、練習をして覚えろ。あとあと、お前にとって身につけなければいけないことだ。これをいい機会と思ってくれ」

 判取り帳は、主に酒屋関係が多く用いた領

収方法で、印紙代の節約も兼ねていた。当時

は三万円以上の領収につき二百円の収入印紙

を貼ることが法律で定められていた。取引額

が多くなると、印紙代だけでもばかにならな

い。そこでお金の領収を一冊にまとめ、所定

の印紙を貼った判取り帳を使用した。酒類は

税金の徴収が厳しいこともあり、履歴を残す

意味合いも大きい。現在は振り込みが一般的

になり、印紙の添付は不要だが、領収書を発

行する場合は、五万四千円以上の領収から二

百円の印紙添付となってくる。(消費税八%

換算)

 松太郎は、リヤカーに荷物を乗せ、中田屋

商店を目指した。道路は舗装がされておらず、

凸凹の道を引っ張った。これが体力的にきつ

かったときおり、車が松太郎を抜き去る。車

に轢かれないよう、商品を落とさないよう注

意した。普段はトラックを使っていて荷物を

運ぶのは店の前から店内へ納めるときだけだ

った。会社からお得意様まで重い荷物を乗せ

リヤカーをひっぱるのは思ったより重労働だ

った。親方が若いときは、車もなく、リヤカ

ーを引っ張り島内をくまなくまわったという

話を思いだした。親方はこんなに苦労して配

達していたんだ・・・。汗水を流し、一時間、

やっとの思いで中田屋商店に着いた。普段通

りのあいさつと納品をすませた。集金も海老

名にいわれた通り判取帳に書いて無事に仕事

を終わらせることができた。幸いに中田屋商

店の店主は、やさしいお婆さんだった。納品

、集金に丁寧に接してくれた。遠くからリヤ

カーをひっぱってきた松太郎の労をねぎらい

、アイスクリームをくれた。礼を言い、帰り

道、松太郎は、アイスクリームを食べながら

、遠くを見ると海が見えた。夕日に赤く輝く

海は、きれいだった。船は汽笛をあげながら

、港をでていて丸くなった水平線に消えてゆ

こうとしていた。


 ここのところ松太郎に気の緩みがでていた。

仕事に慣れすぎていて入社したころの緊張が

なくなっていた。自ずと間違いも多くなって

いた。近所の十件ばかりの配達が今日の仕事

だった。最後の一件で注文品を降ろしていた

とき、石鹸が一ダースあまっていることに気

づいた。

 「しまった!降ろし忘れだ!」

 松太郎は最後の店の納品が終わると、一件

一件、再確認で立ち寄った。納品書を見せて

もらい、納品し忘れていないかを再確認した

。店主から嫌な顔をされた。恥ずかしかった。

三件目で納品し忘れていたことがわかりホっ

とした。慎重に緊張感をもって入社したとき

に教わった。商品、数量、荷物の総個数をあ

わせる大切さを痛感した。

 次の日、お得意様から苦情がはいった。伝

票に書いてある商品がない。ということだ。

配達したのは松太郎だった。ここのところ、

ご配送が重なっていた。原因は、お得意様の

勘違いから違うお得意様に納品していた。お

得意様の名称も同じ名前のお得意様が何件か

あった。例えば「西野屋」という店名は、本

間重太郎商店の取引先に三件あった。過去に

も配送に間違いがあり社内でも問題になって

いた。そこでお得意様名の伝票の表記を変え

、間違いをなくそうとしていた。「西野屋」

でも漢字で書く店、ひらがなで書く店、漢字

とひらがな両方で書く店で区別した。さらに

地域名を書いて二重に確認できるよう会社内

できまりをつくっていた。この間違いは幸い

、海老名が担当のお得意様で自分が受注した

商品が納品されていないことに気づいて対応

してくれていた。どんな理由があるにせよ松

太郎の間違いに違いない。海老名からこっぴ

どく叱られた。連日の失態に松太郎は落ち込

んでいた。どうしてこうも失敗が続くのか?

迷惑をかけたお得意様、会社の人たちへ申し

訳ない気持ちでいっぱいだった。学校へ行っ

ても悩み考え込んでいた。

 松太郎は一晩考えた。一番気をつけなけれ

ばならないことは、自分の仕事への慣れから

くる心の緩みだった。慣れ、仕事が乱暴にな

ていたのは確かだった。そこに社内の決まり

ごとを忘れていたことが失敗を招いたのかも

しれない。しかし、どんなに注意しても失態

は起きた。今度は商品の積み忘れだった。納

品で商品と伝票を合わせていたとき、商品が

足りなかった。積み込みのときに確認をした

つもりが別の用事を頼まれ、積み忘れたのか

もしれない。松太郎はどう対処しようか焦っ

た。納品はしなければならないが、商品が足

りないので納められない。ここは、正直に事

情を話し、あとで必ず商品をもってくること

を約束した。豆伝票にそのことを書き、お得

意様へ渡した。豆伝票は二枚一組になってい

て、間にカーボン紙をはさんで複写できるよ

うになっている。下一枚はお得意様へ控えと

して渡し、上一枚は、会社の控えとして営業

、事務にまわり処理されるようになっている

。お得意様も日頃の松太郎の仕事ぶりを信用

していた。必ず不足品をもってくるよう確認

して許してくれた。松太郎は自分が招いた失

敗は自分で解決しなければならないことを痛

感していた。間違いは正直に話したほうが、

お得意様もわかってくれるものだ。会社に帰

ると海老名に失敗を謝り、正直に話した。責任をもって再配達することを報告した。

 「松、間違いは誰でもあるんだ。ここのところ仕事に慣れたせいか、緊張感がないことはわかっていた。気合をいれて仕事に集中してくれ。それと今回の対応は、念のため、高野さんにも報告しておいたほうがいいぞ」

 松太郎は、海老名に注意されたことを心に

刻んだ。しかし、なぜ事務のほうに報告をい

れなければならないのか、理解できなかった。松太郎は考えながら事務所の高野のところ

へいった。

 「松太郎君、最近、間違いが多いね。大丈夫?わざと失敗したんではないことはわかっているの。間違わないよう、細心の注意をしなければならないけど、間違いはおこるものなの。私だって納品書の記入漏れや

 計算ミスなんかがあって、海老名さんや下働きのあなたたちに迷惑をかけていることがあると思うの。間違いをしたなら、その後の行動がかえって信用を高めることがあることは頭に入れといて。親方がいつもいっていることがあるよね。

 『うちの会社は営業、事務、配達の連携がとれてこそ機能するんだ。互いの領域の理解と、自分の失敗が他の分野の人の仕事にも影響してくる。仕事をするときは他の人が汗を流し支えてくれていることを頭にいれ仕事をしてくれ』

 ここのところのあなたの失敗は、自分だけでなく、営業の海老名さんに迷惑がかかっていることはわかってると思うの。それと私たち事務にも迷惑がかかっているのよ。お得意様からの苦情は最初にうけるのは私たち。納品し忘れの伝票や元帳の修正は、

 事務の仕事。あなたたちがその報告がないと間違った請求書を作成することになって、

 会社全体に迷惑がかかることにつながっているの。私が心掛けていることは、間違わないように今の仕事に集中することと、私のやっている仕事は、海老名さんたち営業が注文をとってくれなきゃできないし、あなたがた配達の人が納品をしてくれなきゃ請求書がつくれない。請求書がつくれないことは、会社にお金が入ってこない。入金がないことは、お給料にもつながっている

 。こう思って仕事をしてると、意識が高くなって失敗も少なくなってくるの。あなたも自分の仕事がど のようにつながっているか考えてみて。今日の積み忘れの豆伝処理は了解しました。

 必ずお得意様へ納品してください。うまく

 豆伝を使って、再納品するときに活用するといいわ。」

 松太郎は、その夜、布団の中で考えた。

 「朝の仕事は港へ行って荷物取りだ。これは海老名さんたち営業が注文をとってきて

 くれないと仕入れができない。仕入れは、きちんと代金が払えないと商品がこない。高野さんたちが元帳を作成し計算してくれるからこそ仕入れ先へ支払うことができる。配達にでられるのも、海老名さんたちが注文をとってきてくれるからだ。お得意様でも相性のいいお得意様もいれば、いやなお得意様もいる。時間通りいって注文をいただけるお得意様もあれば、取り込んでいて待たされることもあるだろう。

 そんな中で苦労して注文をとってきているんだ。事務のほうは電話応対でいろんな取引先との応対をしてくれている。締日後にすぐ請求書をつくってくれることで会社の売上や運営に貢献しているんだ。今の俺の仕事は俺だけの仕事ではない。海老名さんや高野さんたちの力があってこそ成り立っているんだ。そして、こんな働ける環境をつくってくれたのは親方だ。親方が汗水たらしてお得意様や仕入れ先と取引ができる礎をつくってくれたんだ。あれだけの在庫の山、事務所の設備、トラック・・・。こんな働きやすい環境をつくってくれた親方や海老名さん、高野さんのことを考えて仕事をしなければならない。よし!明日から心を入れ替えて仕事をしよう!」

 松太郎は多くの人の支えられて仕事ができ

ている喜びと感謝で胸がいっぱいになってい

た。

 

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