第6話 それぞれの処遇。

 それは巨大な柱だった。

 大きさは東京タワー並で、銀色一色で鈍い光を放ち、後方のノズルから吹き出すジェット噴射によって、宇宙船のように航行しているのであった。

 柱の頂上部にはロレッド、アッサム、バウンドの三人が立っていた。

 「あれが調査隊の報告にあった弱き者が群がる星か。続報によればその手前にある小さな衛星にも弱き者が群がっているそうだな」

 バウンドが、遥か彼方にある月と地球を見ながら言う。

 「その調査隊は黒き強者によって全滅させられたがな」

 アッサムは、不快そうに返事をした。

 「調査隊の記録映像にあった黒き強者か。ロレッド様、わたしに先陣を切らせてください。黒き強者がどれほどの強さなのか早く確かめたいのです」

 「いいだろう」

 ロレッドは、考えていないかのように即答で許可を出した。

 三人は、宇宙空間に居るにもかかわらず、軍服姿のままなんの支障もなく会話をしているのだった。

 「それでは、行かせていただきます」

 バウンドが、柱の表面を蹴って前方へ飛び出し、そのタイミングで分離してブロック状に変形した柱の一部に乗って月へ向かった。

 「アッサム、お前も行け」

 ロレッドが、アッサムにも出撃を命じる。

 「監視ですか? 共闘ですか?」

 「二番手だ」

 「分かりました」

 アッサムは、バウンドと同じ要領で柱から飛び出し、ブロックに乗って月へと向かった。


 朝食を食べ終えた健は、小銃型の注射器を右手で持って、首筋に当てがい引き金を引いた。

 襲われた日から正常な精神を保つことができなくなったので、精神科医の診察を受けた結果、投薬治療を行うことになり、食後に薬を投与するよう指示されているのだ。

 健自身、頭がおかしなまま生きていくのは嫌だったので、指示に通りにしているのである。

 薬の効き目は絶大で、投与した後は信じられないくらいに気分を落ち着かせることができるのだった。

 空になった注射器と使い捨て用の食器をゴミ箱に捨てた後、ベッドに横になった。

 今居る部屋に窓は無いが、六畳ほどの広さで、ユニットバスにエアコン、ベッドなど生活に必要な物は最低限揃っているので不満は無かった。

 「上風健、お前の処遇を伝える」

 コールも無しにドアが開いて、防衛隊の制服を着用した男が用件を言いながら入ってきた。

 「あんたの声、どこかで聞いたことあるな」

 「ハカイオーから降りるように呼び掛けていたのはわたしだからだ。名前はトロワ・ナバージだ」

 「真っ赤なパワードスーツの隊長さんか、道理でいい体しているわけだ」

 健の言葉通り、トロワは防衛隊の制服を盛り上げるほど屈強な体格をしているのだ。

 「階級は大佐だ。気分はどうだ?」

 「薬のお陰でかなりいいよ」

 ゴミ箱に捨ててある注射器を指差しながら返事をする。

 「それで俺はどうなるんだ? トロワ大佐殿」

 皮肉とも嫌味とも取れる言い方で、トロワを階級付けで呼ぶ。

 「宇宙連合月面防衛隊に配属されることになった」

 「俺、防衛隊に入れられるのかよ」

 「そういうことだ。だから現段階では新兵扱いということになる」

 「新兵? ハカイオーに乗るんだぜ。特別隊員とかじゃないのかよ」

 「乗機は特別だが、君自身は新しく入隊するわけだから新兵扱いになるのは当然だろ」 

 「なるほど、だから地下施設から防衛隊本部に移送されたわけか。念の為に聞くけど、俺に選ぶ権利はあるのか?」

 「悪いが選択権はない。それに公務員資格を与えることで戦闘への無断介入や巨大ロボットの無許可での所持と使用といった不法行為を不問にする処置も含まれているんだ。受け入れられない場合、国家反逆罪の疑いの元に刑務所行きとなる。それでもいいかね」

 「おいおい、巨大ロボットの軍団がいつ襲って来るのか分からないのに刑務所もくそもあるのかよ」

 「連合政府が存在している限り君を法律の元で裁くのは当然の処置というものだ。それに昨日の戦闘で刑務所にも被害は出ているが、軽微で何人かの罪人が逃亡した程度だから君を収監するスペースは残っているさ。それでも拒否するかね」

 事務的な口調だったので、脅している感じはしなかった。

 「分かった。言う通り入隊するよ」

 健は、降参とばかりに両手を上げてみせた。

 「それでいい。これが大臣からの通知書だ」

 トロワが、差し出した紙を受け取って読んでみると防衛隊に入隊する旨が書かれていて、最後には衛星大臣の判が押されていた。

 「それで、俺は新兵として何をするんだ?」

 「ハカイオーの運用の詳細が決定していないので、とりあえずは新兵として基礎訓練を行ってもらう」

 説明を終えたトロワが、左手に持っている制服一式を差し出してくる。

 「俺はハカイオーの操縦ができればいいんだから訓練なんかやらなくてもいいんじゃないか」

 「他の隊員は救助や復興活動に追われているが、君自身は表に出すと混乱を招く怖れがあるし、かといって部屋でじっとさせているわけにもいかないから基礎訓練だけもさせようという上層部の判断だ。それに何事にも体力は必要だぞ」

 「なるほど、それで場所はどこだ? 防衛隊本部の中がどうなっているのかまだ全然知らないんだ」

 「左手を出せ」

 健が言われた通りにすると、トロワは右ポケットから出した判子のような機械を手の甲に軽く押し付けた。

 それから機械を離すと押し当てられた部分には、マルチリングのホーム画面に似たマークが刻まれていた。

 「なんだよ。これ?」

 「MT《マルチタトゥー》、刺青式通信機で、通信からネットにGPS機能も備えた優れものだ。着替えが済んだらそれを使って場所を確認しろ。右側のマークを押せば、使い方が表示される」

 トロワは、必要事項を伝えると部屋から出ていった。

 「まったく、いきなり国家公務員かよ」

 健は、ボヤきながら右側のマークを押して、ちゃんと表示されるか確認して使い方を読んで、訓練所の場所を確認すると訓練着に着替え始めた。


 「大臣、トロワ大佐から上風健に入隊の通知書を渡したと連絡が入りました」

 「これでハカイオーは、正式に月面防衛隊の所有兵器になったわけね」

 ラビニアは、事後処理をしながら満足そうに秘書官であるカガーリン・ユーロからの報告を受けていた。

 連合会議での激論の末に勝ち取ったハカイオーの所有権が、現実のものとなったからである。

 「しかし、ほんとにあの少年をパイロットにして良かったのですか? なんの訓練も受けていない子供なのですよ」

 カガーリンが、不満の声を口にしてくる。

 「仕方ないでしょ。ハカイオーのコアユニットであるブレインポッドは、他の人間では作動できず、下手にいじれば機能を損う恐れがあるのだから今のところ彼に任せるしかないわ」

 「精神に障害を抱えている人間に月の防衛を任せるのは正直言って不安です」

 カガーリンが、自分の意見をはっきりと口にしていく。

 「その点に関してはドクター・オオツキに任せるしかないわ。記憶操作せず薬物投与だけで直してみせると豪語していたのだから月面最高精神科医の腕を信じるしかないでしょ。それで地球からの支援はどうなっているの?」

 「はい、昨日地球から発進した救援物資と救助隊を乗せた輸送船団が間もなく到着します。それと同行する形でハカイオーと鋼鉄兵団の研究チームも来るとのことです」

 「共同研究を条件にハカイオーの所有権を承諾させたのだから当然ね」

 「それもよろしいのですか?」

 「いいのよ。この二十四時間の間にデータは十分取れたし、その分だけ地球よりも研究を先に進められるのだから、これ以上の収穫はないわ」

 ラビニアは、ハカイオーの研究において地球に先手を打てたことで大いに満足していた。


 健は、ナビに従い訓練所に来ていた。

 訓練所といっても広さは学校の体育館の半分もなく、設備らしい物が一つも無い、ただの空き部屋といった感じだった。

 「来たな。中々似合っているじゃないか」

 健の訓練着姿を見たトロワが、感想を口にした。

 「どうも。それにしてもここは訓練所って割りには狭くて何も無いな」

 見たままの感想を口にする。

 「電力を病院などの医療施設に優先的に回しているから本来の訓練所は閉鎖中なんだ。それとここからは君の上官に任せる。入って来い」

 トロワが声をかけると、別の入り口から訓練着を着たショートヘアで切れ長の目をした少女が入ってきた。

 「君の訓練を担当する十六夜珠樹いざよいたまきだ」

 珠樹は、自己紹介しながら敬礼した。

 「この女が、俺の教官?」

 健は、驚きの声を上げた。防衛隊に明海と同い年くらいの女の子が居るとは思もわなかったからである。

 「驚くのも無理は無いが、防衛隊は十五歳から入隊を受け付けているから彼女は正式な隊員で、階級は上等兵だ」

 「そういうことだからよろしく。上風健三等兵」

 「俺、三等兵なのかよ。それって階級としては一番下じゃないか」

 「新兵なのだから階級が一番下なのは当たり前だろ。俺は任務に戻るから後は頼んだぞ」

 「お任せ下さい」

 トロワは、珠樹と敬礼を交わすと訓練所から出ていった。

 「それで何から始めるんですか? 上等兵殿」

 トロワの初対面の時と同じく珠樹を階級付けで呼ぶ。

 「まずはランニングからだよ。僕のペースに合わせて走って」

 「僕?」

 予想外の言葉を耳にして、思わず声に出してしまった。

 「変?」

 「俺の回りで僕っていう女は居なかったからな」

 「女の子って思われるのが嫌だったから入隊してからはずっと僕にしているんだ。”今時、僕っ子ですか?”なんて言う奴も居たけどね」

 「言った奴等はどうしたんだ?」

 「黙らせた」

 言いながら殴る蹴るのポーズを取っていく。

 「なるほど」

 「それじゃあ、始めるよ」

 「まったく公務員初日にこんな高校の体育もどきのことをやらされるとは思わなかったぜ」

 健は、気づいた時には殴り倒されていて、目の前には右拳を振り切った姿勢の珠樹が立っていた。

 「いきなり、何しやがる!」

 健は、唇から出ている血を吹きながら怒鳴った。

 「上官への侮辱罪だよ」

 珠樹は、感情を一切感じさせない冷たい視線を向けながら低い声で言い返してきた。

 「いったい、なにが侮辱だっていうんだよ」

 「僕のやろうとしたことを体育もどきと言っただろ」

 「そうじゃないか。こんなこと無駄もいいとこだぜ」

 「そういう考えは嫌いだな。無駄なことなら初めからやろうなんて言わないよ。ランニングがお気に召さないのなら格闘の訓練に切り替えようか」

 珠樹が、左手を動かして挑発してくる。

 「いいぜ。俺もちょっとむしゃくしゃしていたところだ」

 健は、立ち上がって構えた。

 「女だからって手加減したら許さないよ」

 「そんなつもりないから心配いらないぜ」

 二人は、合図もなくぶつかり合った。


 明海は、自分の両手を見ていた。

 包丁で斬り付けられた手には、しっかりと包帯が巻かれていた。 

 本来であれば、クローニングによる部分再生治療を行うところなのだが、重症患者に使われている為、縫合という前時代の治療になったのである。

 訪問者を知らせるコールが鳴った後、目の前に扉の前で立っている眼鏡をかけた黒髪黒髭の男を映したHSが表示された。

 「お父様だわ」

 明海が、赤いボタンのマークを押してドアを開ると父親が入ってきた。

 「お父様」

 「明海」

 二人は、呼び合いながら寄り添った。

 「大変だったね」

 明海の顔を見て安心したのか、表情が柔らかくなっていく。

 「いえ、この通り無事ですから。それでお母様はどうされていますか?」

 「コロニーが破壊されたと聞いた時はショックで倒れたけど、生きていると知ってすぐに元気を取り戻したよ」

 「そうですか、良かった。お父様の方はお変わりありませんか?」

 「政府から事情聴取を受けたよ。今回の事態にロボットが深く関わっているという理由でね」

 「それで大丈夫だったのですか?」

 「大丈夫だからここに来られたんじゃないか。もっとも一刻も早く月へ行く為にハカイオーと鋼鉄兵団の研究チームに加わることになったけどね」

 「そうでしたか」

 「明美、そのケガに付いて聞かせてくれないか、宇宙船の中で見た証言映像ではそんなケガはしていなかっただろ」

 さっきまでの柔らかな表情が一変して、不安な顔になる。

 「分かりました」

 明海は、昨日あったことを話して聞かせた。

 「なるほど、それは災難だったね。それで今後のことだが、これから到着する避難民受け入れの宇宙船に乗れる手続きは済ませてあるから出向の準備が整い次第、その船に乗って地球へ帰るんだ」

 「そのことですが、ここに残りたいです」

 重い口調で、拒否の言葉を口にする。

 「どうしてだね?」

 娘の予想外の言葉に父親は、目をぱちくりさせてた。

 「健が闘うことになるのに、自分だけが安全な場所に居るのが嫌なんです。だから、月に居たいんです!」

 リードに託された言葉を思い出しながら自身の決意を声に出していく。

 「気持ちは分かるが、今は早く帰って美喜を安心させてやってくれ。月へ行く際に絶対に地球へ帰すようにきつく言われてきたんだ」

 美喜とは、明海の母の名前である。

 「・・・・分かりました」

 明海は、不本意ながら承諾するしかなかった。あまり体の強くない母に負担を掛けたくなかったからである。

 それから両手を光らせて手の傷を治した。

 「迂闊にその力を使うんじゃない」

 父親が、厳しい声で咎める。

 「いいんです。お母様にあんな傷を見せたらますます心配されてしまいますから」

 包帯を取った明海は、すっかり元通りになった手の平を見せながら言った。


 健は、激しく息を切らし、全身汗まみれになりながら壁に背中を預け、床に腰を降ろしていた。

 「素人にしてはやるね」

 反対に息一つ乱していない珠樹が、褒めるとも皮肉とも取れる言葉を掛けてくる。

 「毎日の喧嘩で鍛えられたんでね」

 「道理で動きが荒っぽいわけだね」

 「その分、やられっぱなしじゃなかっただろ」

 両者の合意の元で行われた格闘訓練において、健は一方的にやられていただけではなかったのだ。

 「ここに居たのか」

 明海の父親が、訓練室に入ってきた。

 「おじさん」

 「誰?」

 珠樹が、健に問い掛けてくる。

 「南雲京介なぐもきょうすけ博士、日本のロボット工学の権威だよ」

 健は、珠樹に京介を紹介した。

 「これは失礼いたしました。宇宙連合防衛隊月面支部所属十六夜珠樹上等兵であります」

 姿勢を正した珠樹が、自分の非礼を詫びなから敬礼する。

 「いや、こちらが無理を言って入ってきたんだから気にしなくていいよ。彼と二人にしてくれるかな?」

 「今は訓練中でありますので、上官の許可を取らせていただきます」

 「分かった」

 恭介の許可を得た珠樹が、MTの通信機能を使って本部と連絡を取った。

 「自分が同席するのなら許可するとのことです」

 珠樹が、上司からの返答を告げる。

 「それなら仕方ない。健君、大変な目に合ったね」

 「ごめん、おじさん。明海をあんな危険な目に合わせちまって」

 立って姿勢を正した健は、頭を下げて謝罪した。

 「いや、あの危険な情況の中でよく明海を守ってくれた。妻も感謝しているよ。心から礼を言わせてくれ。ありがとう」

 京介は、礼を言いながら頭を下げた。

 「やめてくれよ。いつもおじさん達には迷惑かけっぱなしなんだからさ。それで明海はどうするんだ?」

 「避難民用の輸送船に乗るよう手配したよ」

 「それがいい。ここに居るのは危険だからな」

 健が、ほっとした顔を浮かべ、それに連られて京介が微笑み、訓練所の空気が若干緩み始めたところで警報が鳴った。

 「どうしたんだ?」

 「レーダーが敵の接近を感知して防衛隊の宇宙航空部隊が緊急発進して迎撃に向かったよ。僕も戦闘準備しての待機が命じられた。南雲博士も至急避難してください」

 「俺はどうするんだ?」

 「別命があるまでここで待機、博士はこちらに」

 「健君、また後でな」

 京介は、珠樹に連れられて訓練所から出ていき、健は一人だけ取り残されることになった。


 月に接近しつつあるバウンドの前方に、アルテミスシティから発進した宇宙用戦闘機が接近してきた。

 「あれは映像には無ったな。どんなものか試させてもらおうか。行け」

 バウンドの指示の元、ブロックから分離した十個の欠片がロボットに変形して、戦闘機に向かっていく。

 接近してくるロボットに対して、白鳥のようなシルエットの戦闘機は、編隊を組んでビームとミサイルによる一斉攻撃を行ってきた。

 ロボットは、攻撃をものともせず、左手からレーザーを撃って前方の戦闘機を撃破し、回避行動を取る機体に追い付くと右手の光刃で切り裂いていく。

 その一方的な展開は、とても交戦と呼べるものではなく、宇宙を狩場とする狩人が、目の前の獲物を易々と狩っているようにしか見えなかった。

 「弱い。なんて弱い。抵抗にすらなっていないぞ」

 バウンドは、落胆の言葉を口にしながらブロックの表面を蹴って前方に飛び出し、一機の戦闘機に急接近しながら右拳を打ち出して、驚くパイロットもろともコックピットをぶち抜いて破壊したのだった。

 「まったく無駄もいいところだ。行くぞ」

 自身の肩からジェット噴射のような噴煙を出して、ブロックに戻ったバウンドは、残っている戦闘機をロボット達に任せて、月へ急行した。


 「鋼鉄兵団の動きは?」

 「宇宙航空部隊を突破して、アルテミスシティに接近しているとのことです。隊長機以外は無人機だったので、戦死者が一人なのが幸いですね」

 「そんなことよりアルテミス砲の準備は?」

 「使用するには、まだ時間が掛かるとのことです」

 「いったいどうなっているの? 稼働に必要な電力は供給しているでしょ」

 「電力の供給は十分ですが、本体の調整にまだ手間取っているとのことです」

 「それならハカイオーを出撃させなさい。アルテミスシティに入れる前に破壊させるのよ」

 「出撃は待ってもらおう」

 ゾマホ首相が、会話に割り込んでくる。

 「ゾマホ首相、今のはどういう意味?」

 ラビニアは、怒りを押し殺した低い声で言葉の真意を尋ねた。

 「言葉通りだ。出撃は待ってもらおう」

 「ハカイオーの所有権は月にあるのよ。地球側に止める権利は無いわ」

 「確かに所有権は認めたが、運用に関しては連合代表全員の承認を得てからとさせてもらう」

 「それを無視して出撃させたら?」

 「支援と避難民の受け入れを打ち切る」

 「そんなことをすれば全世界から非難されるわよ」

 「言い訳は後でいくらでも考えればいい。承認も半分済んでいる。後数分間待ちたまえ」

 ゾマホ首相は、言い終えると一方的に通信を切った。

 「よろしいのですか?」

 カガーリンが、不満に満ちた顔をしながら問い掛けてくる。

 「今、支援を打ち切られてしまってはアルテミスシティは終わりよ」

 「しかし、時間が経てばこちらの損害が増えるだけですよ」

 「今は、承認完了を待つしかないわ」

 「それで大臣、待つ間はどうされますか?」

 「防衛隊の全勢力を出撃させなさい」

 ラビニアは、奥歯をおもいっきり噛みながら指示を出した。


 その頃、健は命令通り訓練所に居た。

 命令通りにしていれば、何も考える必要が無く気が楽という逃避的な気持ちでいたからである。

 「そんなところで何をしているの?」

 声を掛けてきたのは、工場が爆発した際に居なくなったと思ったリード・イザナミだった。

 

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